第十話 手紙
化狐が寝静まったころ、こそこそと起き上がり、手紙の元へと歩みを進める。
グッシャグシャになった手紙を開き、中身を読む。
【恥さらしへ
貴方に良い仕事があるわ。それは、あの2本角の旦那が運営してる旅館の中居。
私達化狐の中で誰か1人がやらなきゃいけないから、貴方が適任だと思って。
2本角の旦那は冷酷だから、ちょっとでもヘマすると殺されちゃうかもね。それでも良いわ。貴方みたいな恥さらしが死ぬなら万々歳よ。そうそう。最後に、もし逃げたら、貴方と最近仲が良さそうな人間を殺すわよ。
早くヘマすることを願ってるわ。
PS,仕方がないから幽世行きの片道切符を同封してあげる。感謝してね】
胸糞が悪い手紙だ。グシャリと手紙を握る。
(同封ってことは封筒があるはず…)
キョロキョロと周りを見渡すと、机の上に茶封筒が置いてあり、中身を探ると、幽世行きと書かれた切符が入っていた。
(どうしよ…破って捨てるのもありだけど、多分、化狐は【2本角の旦那】だっけ。その人のところに行くつもりなんだろうし…ていうか、何で私と化狐が仲が良いことしってるんだろう?
いやいや、そんなことより、冷酷なやつの元に化狐を行かせたくない…!)
「私が代わりに行けたら良いのに…」
シンとした空気に言葉が溢れる。
「その願い。叶えてあげようか?」