プロローグ
前に出した短編小説を大幅に変えた物語です!
_袋小路の路地裏に入ってしまったのは、ふわっとした長い黒髪に黒い瞳の可憐な女性だ。
「たく、手間取らせやがって…。
テメェだろ?最近勢力付けてる鬼の番ってのは」
その後ろから来た凶器を持った異形の男達が女性を囲う。大方、逃げられぬようにするためだろう。
「ひっ…!だ、誰なんですか!?」
女性は身構える。
怖いのだろう。足が震えている。
「名乗るほどの物じゃあないが…死にたくないなら大人しく付いてくるんだな」
ナイフを持った男達は、女性ににじり寄る。
_その時…!
「あの」
凛とした声が路地裏に響き渡る。
「な…!だ、誰だ!?」
異形の男達のリーダーらしき人は勢い良く後ろを振り返る。
「申し遅れました。
本日よりこちらの女性の護衛に拝命された、銀狐玉藻と申します」
紺と白の袴を着た、臙脂色の長い髪を垂らし、爛々と光る黒い瞳の女性。ここまでは普通でもあり得そうだが、頭には狐の耳が、お尻にはフッサフサの尻尾があり、腰には刀が差されていた。
「綺麗なねーちゃんじゃねぇか!
俺はこう言うのがタイプなんだよ!」
それらを気にもせず、リーダーらしき男はズンズンと玉藻に近付く。
「護衛なんて色気がねぇーもんやってねぇでよ、俺等と楽しいことしねぇか?」
ニヤニヤと口元に笑みを浮かべ、馴れ馴れしく玉藻と肩を組む。
「お断りします。私の任務はこのお方、花咲麗様をお守りすること。よって、害を与えようとした貴方方を排除します」
淡々とする口調は、まさにロボットだ。
断られるとは思っていなかったリーダーらしき男は額に青筋を浮かべる。
「俺が折角お誘いしたのに、それを棒に振る悪い子はお仕置きだッ!!」
腕に回した手と反対の手でナイフを握り、そのまま玉藻の胸を刺そうとする。
「止めて!!」
その声でピタリと男の手が止まった。
声を張り上げたのは、麗だ。
「わ、私、付いて行きます!
だ、だから、その子に手出ししないで…!」
震えながらも訴えるその姿は誰が見ても心打たれるものだろう。
だが、玉藻は無表情のままだった。
「そうかそうか。なら、俺は手出ししねぇ」
途端に機嫌が良くなったリーダーらしき男は含みのある言い方をした。
「野郎共!『遊んでいいぞ』」
男が発したその言葉で周りの男達は一斉に玉藻に襲い掛かる。
「正当防衛、でよろしかったでしょうか?」
一瞬。本当に一瞬で襲い掛かった男達が全員地に伏していた。
手には鞘のままの刀。抜いた様子はなく、鞘のまま戦ったのだろう。
「は…?お、起きろ!!起きて戦えよ!!!」
男は半狂乱になり叫ぶ。
「無駄です。思い切り殴ったので」
スタスタと男に近付く。
「ひっ…!来るな!!」
青ざめた男の頭、鞘に入ったままの刀を振るう。
ゴンッと鈍い音がして、男は地に伏した。
「ご無事ですか?」
手を差し伸べはせず、冷たい声で問う。
「え…は、はい!」
その返事を聞いて良かったとも何とも言わず、クルリと踵を返す。
そのまま、歩き始めた。
「え…あ、…えっと…」
どうすれば良いか分からず手をワタワタとさせる麗。
「帰りますよ」
振り向かず、足を止めてただ一言だけ漏らした。
「っ…!はい!」
_この物語は、いきなり鬼の番になった麗のシンデレラストーリー…ではなく、その護衛、銀狐玉藻の物語である
《新☆連☆載!!!》
毎日投稿する予定です!
ちょっと最近忙しいので、たまに無断で休む時があるかも…です