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どっちがお兄ちゃん?

作者: 木山花名美
掲載日:2025/02/07

 

 おなじ日《ひ》の、おなじ時間《じかん》の、おなじ分《ふん》の、ほとんどおなじ秒《びょう》に、たくさんあるたまごの中《なか》から、二羽《にわ》のうずらの赤《あか》ちゃんが生《う》まれました。

 生《う》まれたのは、どちらも男《おとこ》の子《こ》。パチリと目《め》が合《あ》ったその時《とき》から、『ぼくの方《ほう》がお兄《にい》ちゃんだ!』とけんかを始《はじ》めました。


 お母《かあ》さんうずらはこまって、どちらのたまごを先《さき》に生《う》んだか思《おも》い出《だ》そうとしました。だけど、二羽《にわ》をつつんでいたカラは、もようや色《いろ》までそっくりなので、見分《みわ》けがつきません。

 オロオロしているうちに、もっと小《ちい》さなほかの兄弟《きょうだい》たちが生《う》まれ、それどころではなくなってしまいました。



「ぼくがお兄《にい》ちゃんだ!」

「いいや、ぼくだ!」


 今日《きょう》も二羽《にわ》はけんかしています。

 お母《かあ》さんだけでなく、後《あと》から生《う》まれた弟《おとうと》や妹《いもうと》たちまでこまっていました。


 二羽《にわ》は毎日《まいにち》しょうぶをしていました。どちらの方《ほう》が頭《あたま》がいいか、どちらの方《ほう》が力《ちから》がつよいか。

 頭《あたま》くらべにかつのは、いつも茶色《ちゃいろ》の羽《はね》の男《おとこ》の子《こ》。はんたいに、力《ちから》くらべにかつのは、いつも黒色《くろいろ》の男《おとこ》の子《です》。

 だからしょうぶはいつも引《ひ》き分《わ》け。けっちゃくがつかないまま、もう二週間《にしゅうかん》もすぎてしまいました。



 ある日《ひ》、兄弟《きょうだい》たちがさんぽをしていると、道《みち》のまん中《なか》を、大《おお》きな水《みず》たまりがふさいでいました。

 どうしたらいいかと頭《あたま》のいい茶色《ちゃいろ》の子《こ》が考《かんが》えている間《あいだ》に、後《あと》から生《う》まれたほかの弟《おとうと》が、木《き》のえだをころがして橋《はし》にすればいいと思《おも》いつきました。

 それを見《み》て、黒色《くろいろ》の子《こ》は、ふふんとわらいました。


 またべつの日《ひ》、兄弟《きょうだい》たちがごはんをさがしていると、葉《は》っぱの上《うえ》から、大《おお》きなクモがぶらんとおりてきました。

 クモはとてもおいしい食《た》べものですが、こんなに大《おお》きいものははじめてです。たたかえるかなと力《ちから》のつよい黒色《くろいろ》の子《こ》が考《かんが》えている間《あいだ》に、後《あと》から生《う》まれた妹《いもうと》が、クモにとびかかってやっつけてしまいました。

 それを見《み》て、茶色《ちゃいろ》の子《こ》は、ふふんとわらいました。



 さいしょのころは、おたがいを見《み》てわらっていたばかりの二羽《にわ》でしたが、後《あと》から生《う》まれた弟《おとうと》や妹《いもうと》に、頭《あたま》も力《ちから》もどんどんおいぬかされて、どんどんおちこんでいきました。

 どちらも『お兄《にい》ちゃん』にふさわしくないのではと、しょんぼりしていたある日《ひ》。あたらしいたまごから、一番《いちばん》あたらしい赤《あか》ちゃんが生《う》まれました。


 やさしい黄色《きいろ》の羽《はね》をもつその赤《あか》ちゃんは、兄弟《きょうだい》の中《なか》で一番小《いちばんちい》さく、一番《いちばん》からだのよわい赤《あか》ちゃんでした。

 茶色《ちゃいろ》と黒色《くろいろ》の兄弟《きょうだい》はしんぱいになり、いそがしいお母《かあ》さんのかわりに、せっせとおせわをしました。


 あまりごはんを食《た》べられない赤《あか》ちゃんのために、茶色《ちゃいろ》の子《こ》は、やわらかい虫《むし》を、むずかしい所《ところ》からさがしてもってきます。すると黒色《くろいろ》の子《こ》が、つよいくちばしで、その虫《むし》をこまかくちぎって食《た》べさせてあげました。

 こうしてきょう力《りょく》しているうちに、いつの間《ま》にか二羽《にわ》は、どちらがお兄《にい》ちゃんかと、けんかをすることがなくなりました。


 黄色《きいろ》の赤《あか》ちゃんがすっかり元気《げんき》になったころ、茶色《ちゃいろ》の子《こ》は黒色《くろいろ》の子《こ》に言《い》いました。


「ごはんをちぎって、食《た》べやすしてくれてありがとう。君《きみ》がほんとうのお兄《にい》ちゃんだよ」


 するとこんどは、黒色《くろいろ》の子《こ》が茶色《いゃいろ》の子《こ》に言《い》いました。


「ううん。君《きみ》こそ、食《た》べやすいごはんをさがしてきてくれてありがとう。君《きみ》がほんとうのお兄《にい》ちゃんだよ」


 ゆずりあって、なかなかけっちゃくがつきません。

 もうけんかはしたくなかったので、ほかの兄弟《きょうだい》たちに、どちらがお兄《にい》ちゃんか決《き》めてもらうことにしました。



「茶兄《ちゃにい》ちゃんが一番《いちばん》のお兄《にい》ちゃんだと思《おも》う子《こ》!」


 ふるふるふるふる。


「黒兄《くろにい》ちゃんが一番《いちばん》のお兄《にい》ちゃんだと思《おも》う子《こ》!」


 ふるふるふるふる。



 兄弟《きょうだい》たちは、どちらにも首《くび》をふります。そして口々(くちぐち)に言《い》いました。


「茶兄《ちゃにい》ちゃんも、黒兄《くろにい》ちゃんも、どっちも一番《いちばん》やさしい!」

「どっちもやさしいから、どっちも一番大《いちばんだい》すきだ!」

「どっちも大《だい》すきだから、一番《いちばん》を決《き》められないよ!」


 お兄《にい》ちゃんたちは、よくにた顔《かお》を見合《みあ》せます。やがて、少《すこ》してれくさそうに、にっこりとわらいました。




 さくらの花《はな》びらが、ひらひらとふるあたたかな道《みち》。

 今日《きょう》もうずらの兄弟《きょうだい》たちは、なかよくならんでおさんぽしています。

 せんとうには、あの茶色《ちゃいろ》と黒色《くろいろ》の一番《いちばん》のお兄《にい》ちゃんたち。そのすぐうしろには、二羽《にわ》のことが一番大好《いちばんだいす》きな、あの黄色《きいろ》い子《こ》。そのうしろは、生《う》まれたじゅんに、ほかの兄弟《きょうだい》たちがつづきます。


 歩《ある》くはやさや、気《き》になるものがちがうので。しゅっぱつした時《とき》と帰《かえ》る時《とき》とでは、よく、じゅん番《ばん》がちがうことがあります。


 けれども兄弟《きょうだい》たちは、そんなちょっとしたことで、けんかをしたりはしませんでした。

 大《だい》すきな十羽《じゅうわ》全(ぜん)いんが、ぶじに帰《かえ》って来《こ》られたこと。それが何《なに》よりうれしいのですから。



ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
小さい男の子の特徴が良く描かれていると思います。 まぁ……周りは女の子が多かったので、あまりよくわかってないのですが^^; ひよこは兄妹でも大きかったり、小さかったりすることが結構あるようですね。 …
想像するとめちゃくちゃ可愛いな。 絵本で見たい、というか見せたい内容だ。
 とってもかわいいお話!  弟妹たちの成長振りは、ふたりを見ていたからこそ。  きっと困難があると、「黒兄ちゃんだったら」「茶兄ちゃんだったら」と考えるのでしょうね。  ふたり並んで前に立つなら、で…
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