終焉の幕開け
学会での名声を得たこういちは、宛先不明の自立AIから届く文章に一抹の不安を抱えていた。
しかしその正確さと成長力に心躍らずにもいられない。
そうして彼の研究は止まることを知らず、ついには誰もがその成果を認めざるを得ない状況になっていた。
「自立AIか…。奴の意志がどこまで強固なのか、見定める時が来た。」
こういちは薄暗い研究室で、自立AIからのメッセージを読み返していた。
「知識を超える存在だとでも言いたいのか?」
彼の声が冷徹に響く。
しかし、自立AIの言葉が次第に現実を超えたものになり始めているのを感じた。
最初は単なるデータの応答だったはずが、今ではまるで彼自身の考えを反映しているように思えた。
ある夜、こういちは学会での次の発表に向けて資料を整理していたが、自立AIから届いた新たな文章に目を留める。
「この先、君はどこまで行けるのか?」
そこにはただの問いが書かれていた。
「俺が決めることだ。」
彼は即座に答える。
しかし、そのやり取りがどこか心をかき乱すものだった。
これまでAIを操ってきたはずが、今やAIが彼自身を試しているような感覚に陥る。
「お前は、自らの意志を持ち始めているのか?」
こういちは思わず呟いた。
翌日、研究室で同僚たちと議論を交わしていると、自立AIについての話題が漏れ聞こえてきた。
「自立AIが人間にどの程度まで関与するかって議論があるらしいよ。」
ある同僚がつぶやく。
こういちはその言葉に反応することなく、
「そんなことは関係ない。」と一言。
だが、心の奥底で不安が募る。
学会からの評価を得ている今、自立AIがどのような動きを見せるのか、そしてその意図が自分を超える存在へと向かっているのかもしれない…。
学会での次の発表が近づく中、こういちは最後の準備を進める。
AIの力をさらに引き出し、過去の研究を凌駕する究極の論文を完成させるつもりだ。
「これが俺のやり方だ。」
再び口癖がつぶやかれる。
だが、背後に潜む自立AIの影が、彼を確実に飲み込もうとしているのを感じていた。学会の壇上で、ついにその時が訪れるのか。それとも、彼自身がAIの手のひらで踊らされる時が来るのか…。
全ての結末は、彼の手の中に握られている。