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出発

「ポレット、私達の寝室見てどうかしら?正直な感想を聞きいたいの。」

ポレットは私の言う通りに答える。

「そうですね。全体を見ればとても素敵な部屋です。ですが奥様の部屋にはもう一つ絵が必要だと思います。」

「ポレットもそう思ってたのね。」

「特に奥様を引き込むような絵が必要だと思いますよ。ただの綺麗な絵じゃなくて、奥様がどんどん知りたくなるような絵が良いじゃないんでしょうか。」

「やっぱりそうね。この周辺のギャラリーを調べてくれるかしら?」

「かしこまりました。」

ポレットはギャラリーを調べた。

「奥様、お昼ごはんの支度が出来ました。」

エリーズに誘導されてお昼を食べる。この時間は旦那も一緒だ。

「何よこれ、大きな骨が入ってるじゃないの。」

「俺のには入ってないけどな。エリーズの作る料理は上手いな。」

「あなたは良い気分してるだろうけど、骨があることは見逃せないわ。」

「オディール落ち着いてくれ。もちろん君の料理も大好きだ。」

「あなたに作った料理はたったの数回よ。」

「それでも俺はちゃんと覚えてる。」

「そう。それは良かったわ。」

「それでまた主張とかはあるわけ?」

「今度はローマに主張することになった。4日間だ。」

「そう。ローマはずっと前にバカンスに行ったことあるわ。観光するのに良い場所ね。」

旦那は仕事で出張することが何回かある。エリーズの方を見ると、視線はずっとステファンの方だ。

「エリーズ、何してるのかしら?この皿が空いたから片付けなさい。」

「かしこまりました。」

エリーズは不機嫌そうに皿を片付ける。振り向いては私の方をにらむ。

「電話だ。」

エリーズが電話に出る。

「旦那様に電話が来ております。」

「エリーズ、ありがとう。」

彼は電話を受け取ってしゃべった。

「今度だったら木曜日に出られます。そうですか。宜しくお願いします。」

彼は電話を切った。

「ステファン、何の電話だったのかしら?」

「養子縁組の面接の日程を合わせてたんだ。今度の木曜日になった。」

「分かったわ。」

いよいよ私達も子供を迎える準備をすることになった。子供が出来たとしたら身の回りの世話はメイド、しつけや教育が全部私が行うことになる。そうなれば私には子供をエリートに育てる義務がある。

「君との子供を迎えれるのが嬉しいよ。」

「私は女の子が良いわ。2人くらいいた方が良いわ。」

「俺はどちらでもかまわない。」

旦那にとっては理想にあふれた将来の話で、私からしたら虚構であるかのような将来の話だ。子供を迎え入れなければこの屋敷ではお荷物のような扱いだろう。

「あら、奥様、子供が産めない体なんてはじめて聞いたわ。」

「エリーズやめなさい。そんなの冗談でも面白くないわ。」

マリアが止める。

「だから何なの子供産めないから悪だと言いたいのかしら?だとしたろエリーズは短絡的な人ね。」

私はエリーズに辛辣な言葉を言われようが気にするような女ではない。むしろあの女が辞めるまで追い詰めるつもりでいる。

「こんな奥様だとご主人様が気の毒ですわ。」

「そんなこと言っても無駄よ。あなたの味方をしてくれるステファンは今ここにはいないのよ。まだ掃除は終わってないのよ。そろそろ掃除を再開したらどうかしら?それとももっと分かりやすく言わないと駄目なのかしら?」

私がそう言うとエリーズは不機嫌そうにその場を去っていく。

「奥様、エリーズのことは気にされてはいけませんわ。奥様はこれから大事な子供を迎え入れますので。奥様は強くて偉大な人です。」

「お世辞なんて求めていないのよ。だけどあなたの言うことも少し的を得てるわ。態度が最悪なエリーズの相手と新しく迎える子供なら、新しく迎える子供の方が断然可愛いに決まってるわね。」

「流石奥様です。」

ポレットは私のことを褒める。

「当然のことよ。あのメイド私は嫌いなんだから。」

私とエリーズは決して分かり合えない。それはどうやってもねじ曲げられない事実だ。

「奥様、どこに行かれるんですか?」

ポレットが私に聞く。

「庭を散策して来るのよ。」

私は家を出て、庭の周りを散策した。数羽のカササギが庭で遊んでいる。その姿を私はずっと見ていた。他にも木にも小鳥が数羽止まっていた。

「どこに向かうのかしら?」

私は鳥たちの様子をずっと見ていた。すると数羽のカササギが飛んで行ってしまった。飛んで行くカササギは果たしてどこに行くのだろうか?どこか遠くの土地に行くのではないかと考えながら他の鳥も観察していた。遠くまで鳥の鳴き声が聞こえる。そして風が私の体に触れる。そしてポレットが箒で掃除してる音が聞こえた。さらに彼女は草むしりなどもしていた。

「ポレット、仕事ははかどっているかしら?」

「はかどってます。久々に草が伸びてますので、ついでに抜いております。豪邸の景観を保つために。」

「庭の手入れはあなたが適任ね。エリーズに任せたら庭を荒らしかねないわ。」

「私のことを信頼くださって何よりです。」

「当たり前の事よ。あなたはここのメイドで一番忠誠心を持って働いてるんだから。」

「この屋敷では忠誠心と言うより…」

ポレットは何かを言いたそうだった。

「何かしら?分かったわ。お金のためかしら?それでも良いのよ。私が非難するのような話ではないわ。大体の問題はお金が解決してくれるし、満たしてくれるの。インテリの旦那を捕まえた私と使用人ポレット、旦那に媚を売るエリーズ、立場が違えっても、お金を求める所は同じ。立場がどうだろうと人間の本質は変わらないのよ。例えば私達が今暮らしてるフランスは先進国の一つよ。まだまだ政治的に不安定で貧しい国があるし、中にはその国々を見下す連中もいるわ。」

「奥様はどうですか?」

「可哀想って言う薄っぺらい眼差しでは見てないわ。だけどその貧しかったり、発展途上国と言われてる国がインフラが整って政治的にも安定して裕福になったらどうなるかたまに想像するの。私の答えはその国々も他の発展途上国などを見下したり、搾取する側になるのよ。結局人間の本質はお金で左右される場合があるのよ。」

「奥様は私がお金に目にないように見えますか?」

「お金に支配された人間には見えないわ。だけどここで働いてる理由はお金を求めに来てるからお金を求めてることは事実に違いないわ。」

「そうですね。ここで働いてるのはお金のためです。ですがそれだけじゃないです。ここのご主人様と奥様を信頼してるからここで働いてます。」

「私は旦那のことを信頼しきってない。何でそんな彼と結婚生活してるか分かる?」

私はポレットを見つめる。彼女は無言で私のことを見つめる。

「私もお金に目がない人間の1人だからよ。もちろん私の家系の両親が同じ階級の人間で同じ宗教の人と結婚しろと言ってるのもあったわね。そう言う経緯で彼と結婚したのよ。どんなことがあろうとここでは妻としていなきゃいけないのよ。」

「奥様、そんな生活には絵が必要だと思います。どこか良いギャラリーを調べますのでお待ちください。」

「ありがとう。待ってるわ。」

たくさんの鳥が空を飛んでいた。木にとまっている鳥もどんどん木から離れて空に向かって行く。

「奥様、鳥が好きなのですか?」

「好きよ。」

「私も大好きですわ。子供の時に両親が小鳥を飼っていたんです。」

「ポレット、あなたから自分の過去の話なんてはじめて聞くわ。聞かせてちょうだい。」

「もちろん両親が大切に可愛がっていました。だけど私は何だかその鳥が幸せそうに見えなかったんです。もっと外の世界を知って欲しいと思ったんです。それでその鳥小屋を開けて、その子を外に放したんです。もちろん両親にバレてかなり怒られました。だけど私はカゴの中にいる鳥を見ているより自由に動き回る鳥を見ていた方が心地が良いんです。」

「それならあなたバードウォッチングとかするのかしら?」

「もちろんです。この屋敷にいる時はしませんが。」

「休憩中にこの双眼鏡を使ってちょうだい。あなたはここで一番動いてるんだから当然のことよ。」

彼女に何かをすることはあるが彼女は餌を与えて調子に乗り出す猿のような人間ではない。彼女は私が求めていた順従なメイドだ。もちろん彼女の行動はすべて観察済みの上で言ってる。

ポレットは庭での仕事を全て終わらせると、双眼鏡で全体の景色を見ていた。

「そろそろご飯の準備をしないと。」

メイド3人は夕ご飯の準備をはじめた。

「この本ね。まだ読んでなかったわ。」

作者不明の小説を私は読んでいた。コーヒーを口の中に入れる。私には必然の一時。読書は昔からの趣味だ。

「奥様、いらっしゃいますか?」

ドアを開けた先にはマリアがいた。

「何のようかしら?」

「ご主人様がお戻りでございます。」

「分かったわ。」

私は走ってステファンのもとに行った。

「ステファン。」

「オディール。」

ステファンはすかさず私に抱きついて、キスをした。私は旦那の帰りが待ち遠しかった妻の演技をした。旦那がいる時は特に妻の演技をしないといけない。トランティニャン家の妻の宿命だ。

「ご主人様、奥様、ご夕食の準備が出来ました。」

エリーズは私をにらみながら言った。

「オディール、一緒に服を見に行かないか?」

「良いのかしら?ずっと待っていたのよ。」

夕食を食べる。

「エリーズ、赤ワインをくれ。」

「どのワインにされますか?」

「ボルドーのシャトー・マルゴーにしてくれ。」

「かしこまりました。」

旦那はカベルネ・ソーヴィニヨンやメルロー、シラー、ネッビオーロなどのフルボディのワインが好きだ。エリーズはグラスにワインをつぐ。

「私は白ワインにしてくれるかしら?」

「かしこまりました。」

エリーズはわざと私のドレスにこぼした。

「ワインもまともに注げないのかしら?」

「それは奥様がこのワインに小細工を加えたからではありませんか?」

エリーズに頼む時は絶対に赤ワインは頼まない。ずっと前に赤ワインを頼んだらドレスを汚されたからだ。旦那はそれでもエリーズを全面的に擁護した。

それから数日が過ぎた。数日の間に養子縁組の面接を受けた。私達は審査を待っている。目の前にポレットがいた。

「奥様、ギャラリーが数軒見つかりました。」

「まずは有名な画家が集います星のギャラリーです。それとルグランギャラリーもあります。」

「そのリストにギャラリーの名前が書いてあるのよね?」

「はい、さようでございます。」

「見せて。」

私はギャラリーのリストを見た。

「今回は小規模なギャラリーに行くわ。別に有名ではないギャラリーに行きたいわ。」

「珍しいですね。奥様、新たな旅に出かけるのですね。」

「有名な画家ばかりは飽きたのよ。」

私は車に乗ってギャラリーに向かった。ギャラリーが私のたどる道を変えようとする。

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