パーティー2
「ステファン、久しぶりだな。」
「ENA以来だな。」
旦那がENAに通ってた時代の旧友のフランソワだ。
「政治家になりたがってた君がまさかの銀行の総裁になるなんて思ってもいなかったな。」
「そっちこそ、起業家目指してたお前が急に政治家目指して財務大臣になるとはな。人生分からないもんだな。」
「奥さんとはどうしたんだ?浮気がバレたって言ってたけど。」
「あいつならとっくに出てったさ。まあ俺は女と金に困ることはねえ。」
「パパ何話してるの?」
サロメとセリーヌが来た。
「ついに俺も子供を迎えたんだ。見ろ。可愛いだろ?長女のセリーヌと次女のサロメだ。」
「サロメ素敵な名前だな。」
旦那の会社の部下もやって来た。
「サロメって良い名前だな。」
「そうよ。孫の名前は素敵なのよ。」
セリーヌは私の義母ニコルが現れたのですぐ逃げた。
「お姉ちゃん、本当に変だわ。」
「無邪気で明るくて可愛くて自慢の孫よ!」
ニコルはサロメを抱きしめた。
「サロメって、ヘブライ語由来で平和って意味なんだ。」
部下のティエリーが言った。
「よくそんなの知ってるな。」
「サロメはリヒャルト・シュトラウス作曲のオペラの主人公だな。」
「おい、ティエリー!うちの娘をあんな残酷な女と一緒にするんじゃない。」
旦那はサロメ7つのヴェールの踊りの内容を知っていた。客人の子供たちもサロメの方にやって来る。
「君なんて言うの?」
「私はサロメよ。」
「僕はガエタン!」
サロメはガエタンと仲良くなった。他にも男の達や女子達から人気だった。オペラのサロメのように将来は美貌で人を魅了する人物になるのだろうか。正反対にセリーヌは一人で孤独に立っていた。
「ベルナール、一つポスカードくれない?」
私以外の大人、ベルナールには心を開いていた。小さいながらも彼の芸術に興味津々だった。
「これ一枚プレゼントするよ。」
「ありがとう。」
川と思われる絵に蝶や蜘蛛や鳥が隠されている不思議な絵だった。
「ママ、ベルナールから貰ったの!」
「やったじゃない。私はこの絵を買いたいわ。」
ベルナールの絵を買った。
「ママはこれどこに置くの?」
「私の衣装部屋よ。」
ベルナールとセリーヌと私。ついに揃った理想の家族だ。この時間が一生続いて欲しい。愛してる旦那ベルナールと娘のセリーヌ。いっそのこと法律上の旦那を消しゴムで消してしまって誰も知らない存在にしたい。私は2人さえいればどうでも良い。
「そうだ。私はやることがあったんだわ。」
私はレコードがある場所まで移動した。既にクラッシックの音楽が流れていたが私には気に入らない。私はレコード外して、違うレコードにした。
「盛り上げるにはこれよ。」
しばらくすると旦那が私のもとに来た。
「何だこの音楽は?」
「サビーヌ・パチュレルの曲よ。素敵でしょ。」
「そうじゃなくて、早くレコードを変えてくれ!こんな音楽みっともない!」
サロメや来ていた子供達は曲を聞いて笑っていた。
「分かった。約束通り曲を変えるわ。」
私は音楽を止めて、新たな曲のレコードを取り付けた。ティエリー・パストールだ。彼の曲はクラブで踊るようなダンスミュージックだ。
「一緒に踊りましょ!」
私はステファンの旧友フランソワと踊った。
「こう言う音楽も私は好きなんですよ。」
「音楽の趣味が私と合うようね。」
2人で踊りを楽しむ。まるでクラブハウスにいるような感じだった。周りは私とフランソワを見て笑っていた。
「皆も踊って良いのよ!」
他の招待曲もダンスミュージックに合わせて踊る。
「もう何なんだよ!オディールめ!」
「ステファン、早くオディールを止めろ!」
義父アランもクラシック以外は聞きたくなかった。
「私はちょっとトイレに行くわ。」
ニコルはトイレには行かず自分の衣装部屋に行った。
「踊るのって楽しいでしょ!」
世間では新聞やテレビの画面越しでしか見ないエリート達がクラブにいるかのように踊り狂う。
「オディール、君は最高だよ。」
フランソワは私にキスをした。
「そこまでよ。」
フランソワは一緒に踊るだけの男。ルイのような関係にはなれない。
「オディール、これはどういうこと?あんなにクラシック好きなあなたが他の男とキスして踊り狂うなんて信じられないわ。」
「こんな娘を持って恥ずかしい。」
私の母親アデルと父親ジョルジュがやって来た。
「今までのクラシック好きなあなたはどこに行ったの?」
私は数秒間無言だった。
「クラシックなんて好きじゃない。」
「何てことを言うの!クラシック好きじゃない娘なんてうちの娘じゃないわ。」
「それに他の男と舌を絡ませるなんて、すぐ股を開くつもりだったのか?そんな淫乱な売女にお前を育てたつもりはない。」
「これは私の人生よ。それにキスしたのはあの男の方よ。」
「それなら何故拒否しなかったの。」
「自然の流れよ。私は結局人間なんだから。これで満足?」
「オディール、待ちなさい。」
「ジョルジュ、レコードを消して。」
「分かった。アデル。」
私は母に手をつかまれた。
「離して!何するの!」
「今日はパーティーでしょ。あなたの才能を皆にお披露目する日よ。あなたの大事なステファンもあなたの魅力で頭いっぱいになるわ。」
「まさか。」
「皆さん、注目!」
母はスプーンでワイングラスを叩いて鳴らした。そして全員が母と私の方を向く。
「これから私の娘であり、ステファン・トランティニャンの嫁がピアノとヴァイオリンを演奏をするわ。」
全員私に向けて拍手をした。セリーヌも笑顔だったのでしょうがなく弾くしかなかった。ピアノに座り手を当てる。私が弾いてるのはショパンの幻想即興曲だ。とても速いテンポで暗い短調の曲だ。自分の意思に反して手が勝手に動く。
「すごい上手だわ。」
「ママ、すごい!」
「最高だ。」
ピアノの上に母親の生首が乗っていた。後ろには熊の毛皮を着て誰のか分からない心臓を振り回す父親がいた。
「あれくらい私も弾けるわ。」
エリーズとニコルは嫉妬していた。ポレットはずっと見つめていた。ベルナールの姿がどこにも見当たらない。気がつくと曲が終わった。
「オディール、もう一曲よ。」
次にピアノソナタ月光第1楽章を弾いた。この曲もとても暗い曲だ。意志と反してまた手が動く。ずっと誰かに見られている気分だ。ピアノ上に立つ母親の生首がずっと笑っている。熊の毛皮を着た父親がとても生臭い。獣の臭いだ。誰かの大腸を持っている。失敗したら何をされるか分からない。私は完璧な音楽を引かなければ鳴らない。
「聞いててうっとりするわ。」
「良い妻を持ったものだ。」
私の演奏は終わった。ピアノから離れると母親の生首は鳥になって消えた。
「素晴らしい演奏だわ。次は何を演奏するか分かってるよね?」
母親がやって来てヴァイオリンを渡された。ヴァイオリンなんて見たくない。私にとって呪縛のような爆弾だ。
「次は娘がヴァイオリンを演奏します。」
母親がピアノに座る。母親が伴奏することになる。
「オディール、はじめて。」
「分かった。」
私はヴァイオリンに弓を当てた。弾いてる曲はラヴェルのツィガーヌだ。ヴァイオリン奏者なら高確率で弾く曲だ。ヴァイオリン弾いてるときは手が止まらない。まるで誰かにコントロールされているかのように本当はヴァイオリンもピアノも弾きたくない。細かいフレーズが多いのに手が勝手に動く。弾いていくうちに母親がやって来る。ピアノ椅子に母親がいるのに。母親の分身だ。そして父親もやって来る。2人とも私を囲んで踊り出す。
「オディールはヴァイオリンも上手い。」
「こんな妻がいてお前は羨ましいな。」
フランソワは言った。
「お前には絶対渡さないからな。」
私の名前を歌詞にしながら歌って彼らは踊る。しまいには2人ともヴァイオリンを持ち始めて歌い出す。
「うちのママは凄いわ。羨ましいでしょ?」
サロメが自慢げに他の子に言った。
「本当にすごいよ。」
演奏はまだ続く。まだ父と母は私の周りをヴァイオリンを持って踊る。そしてステファン、ポレット、マリア、ニコル、アラン、エリーズ、サロメもヴァイオリンを持って踊り出す。そして他の客も全員ヴァイオリンを持って踊り出す。早くヴァイオリンから離れたい。どこもかしくもヴァイオリンの音が聞こえる。私の頭がヴァイオリンになった。パーティーに参加してる人頭が全員ヴァイオリンに鳴っている。セリーヌだけは違う。ベルナールはどこにもいない。助けて!ベルナール!ヴァイオリンの音が止まらない。愛猫のスノーもヴァイオリン柄の毛になった。シャンデリア何もかもヴァイオリンになって行く。ピアノ椅子の方を見ると弓を持ってピアノ鍵盤当てる母がいた。曲はクライマックスに近づいた。セリーヌがヴァイオリンに追いかけられている姿が目に見えた。
「セリーヌ!」
私の声までヴァイオリンになった。ついに演奏が終わった。するとヴァイオリンは私の手に持つ一つだけになった。
「ママ、これ返す。二度とヴァイオリンなんて持って来ないで。」
「オディール、全てあなたのためよ!あなたは神童よ。凡人なんかになっちゃいけないの。」
「そうだ。こんな素晴らしい娘いない。」
「今すぐ出てって!」
私はポレットとマリアに母と父を追い出させた。
「ママ、大丈夫?」
セリーヌが心配そうにやって来た。
「平気よ。」
ベルナールが何も無かったかのように入って来た。彼は私の方を向かず絵の方に行った。
「君の作品は素晴らしい。買い取りたい。」
招待客の数人が彼の絵を買った。さらにまとめ買いする客もいた。
「これじゃあ話しかけられないわ。」
すると一人の男性が通りかかった。どこかで見覚えのある男性だ。
「先程は演奏良かったですよ。私はパトリックです。」
旦那の不倫相手の1人だ。
「ちょうど良かった。この前良い写真を見つけたんです。芸術的な作品を。待っててくださいね。」
私はポレットから写真の場所を聞き、一枚持ち出した。他の写真も手に取った。
「この写真素晴らしいですね。奇跡の一枚ですね。」
パトリックは動揺した。旦那とパトリックがホテルの窓際で裸でキスをし合う写真だからだ。
「このことは誰にも言わないでくれ!頼む!」
「あなたがゲイなのはどうでも良いの。それよりあなたに渡したいものがあるの。これはそうね。1カ月以上開けて見て。約束よ。もし約束を破ったらあなたがゲイだってことをバラすわ。良い?専属のスパイが私にはいるから。」
「分かった。」
パトリックは私のもとを離れた。一方ベルナールの作品は1日にして全部売れてしまった。
「ベルナール、あなた凄いわ。これから有名な画家ね。」
私の理想がどんどん出来上がって行く。夜寝室に入ると旦那がいつも以上に強く私を抱きしめた。全然離してくれない。私はセクシードールだ。寝室中にピアノとヴァイオリンと父と母の歌声が響いた。




