パーティー
パーティーの日の朝、旦那と一緒に寝ていた。いつものように求められるがままに夫婦の儀式が行なわれた。旦那の欲望全てを受け止めないといけない。かすかにドアが空いていた。よく見ると義母ニコルがのぞいていた。何故私達のしてるところを見ているのかは私は見当がつく。
「オディール、良いよ。愛してる。」
私とニコルが目が合うと彼女はすかさず逃げた。ニコルの姿はなくなった。
朝ご飯の時間が来た。全員揃ってご飯を食べる。
「エリーズ、今日も私のご飯味見してちょうだい。」
「私が虫とかいれるとでも思ってるんですか?」
「よくよく考えたの。あなたはここの料理番よ。だからあなたのことをもっと信用しようと思ったのよ。」
エリーズは納得言ってなかった。あのスープ以来私のご飯だけエリーズが皆の前で味見することを命じた。
「かしこまりました。」
そして味見をした。
「よく出来るじゃん、エリーズ。あなたはよく出来るメイドね。」
エリーズはいつものように不機嫌そうだった。
「お皿をお下げします。」
朝食の時間は終わる。
「今日はパーティーの準備よ。あなた達3人じゃ大変だから私も協力する。」
「奥様、ありがとう。」
私はポレットと話した。
「そう言えば最近不思議なことが起きるのよ。私の気に入ってたスカーフが突然と消えたのよ。」
「どこにあるか探しましょうか?」
「旦那に新しいものを買ってもらうわ。それともしかしたら旦那が不倫相手にあげた可能性もあるかもしれないわ。」
彼女は黙って私の話を聞く。
「それと今日ギャラリーで出会った画家のベルナールを招待するの。」
「運送の手配などは完璧です。」
「流石ポレットだわ。新たにお願いがあるから聞いて。」
「奥様のお願いは何でも答えます。」
「ベルナールの素姓を調べてくれないかしら?急ぎの案件ではないからゆっくりで良いのよ。」
「かしこまりました。」
ポレットが作業に戻った。ベルナールと会えるのがとても楽しみだ。彼が来るのが楽しみだ。私は彼を求めている。ルイはベルナールの代理、本物の愛はベルナールにある。
「あ母さん。」
セリーヌが私のことを引っ張った。
「学校に行きたくない。」
「ここじゃあおじいちゃんやおばあちゃんが来るからセリーヌの部屋で話そう。」
私達は移動した。
「それでどうしてなの?」
「ママは怒ってるの?」
「怒ってなんかないわ。理由を聞いてるの。」
「学校楽しくないの。友達もいないし、授業も何だか楽しいと思えないし。」
「勉強は楽しくないものよ。」
「だけどお父さんみたいにエリートになりたいわけじゃないの。」
「気持ちは分かるわ。だけどとにかく今は学校に行かないと。興味は学校でも見つけられるのよ。」
「でも今日はどうしても行きたくない。」
「分かったわ。今日だけ特別に休みにしてあげる。だけど今度は学校に行くって約束出来る?」
「うん。」
「今日は綺麗なお花を見ようね。外に出るよ。」
「うん。分かった。」
はじめてセリーヌが笑った姿を見た。その後学校に連絡を入れた。
「素敵な笑顔よ。愛してる。自慢の娘よ。」
私は彼女を抱きしめた。スノーが近づいて来た。
「触っても良い?」
「もちろんよ。スノーもあなたも大事な家族でしょ。」
スノーはセリーヌに興味津々だった。
「可愛い。」
いつもサロメばかりがスノーを触っているので珍しい光景だった。そしてマリアがやって来た。
「サロメ、いつもあなたが手入れしてくれるから綺麗な毛並みね。」
「私は猫が好きですから。他の人にスノーの世話を頼みたくないですわ。」
「あなた以外には頼まないわ。あなたしか適任がいないわ。」
「奥様、ありがとうございます。」
「これから私とセリーヌで外出するから、戻ったらパーティーの準備をするわ。」
ポレットもエリーズもやって来た。
「行ってらっしゃいませ。奥様、お嬢様。」
車で花がたくさん咲いてる野原に行った。
「この花は何?」
「これはサザンカよ。私も好きな植物なのよ。」
「菊がたくさん咲いてる。お母さんも見て!」
「ちょっと待って。」
セリーヌの近くにベルナールが立ってる。私達は家族なんだ。彼とセリーヌが求めていた家族。私は2人に近づく。
「お母さん?」
「ベルナール!セリーヌ!」
「お母さん、ここには私しかいないよ。」
幻想でも登場させたい。どこへでもベルナールを登場させたい。野原でも山でも海でもゴミ捨て場でもベルナールを登場させたい。彼が欲しい。彼が欲しい。
「お母さん、大丈夫?」
「私は平気よ。」
「お母さん、お父さんと何かあったの?何だか考えごとしてるような気がする。」
「セリーヌは本当に優しい子ね。」
「だってこんなに私に寄り添ってくれる人はじめてなんだもん。血がつながってなくてもお母さんはお母さんだよ。」
彼女のトラウマはかなり強いものだ。
「何か今まで酷いことされたの?」
「私を産んでくれたお母さんが毎日私のことを打ってたし、お父さんも一緒になってぶってた。」
彼女はまた泣き出した。
「2人が喧嘩する怒鳴り声を毎日聞いてた。」
「私は何があっても怒鳴ったりしない。セリーヌの味方よ。分かった?」
セリーヌは愛を知らないまま育った。
「お母さん、他にも花を見よう。」
「良いよ。これからはお母さんと楽しいことを考えましょ。」
「うん。」
彼女の笑顔は素敵だ。正直私はサロメより好き。
「少し花が咲いてる植物があるわ。葉っぱは落ちないの?」
「植物には葉っぱの色を変えて落ち葉を残す植物と一年中葉っぱを落とさない植物があるの。難しい言葉で言うと落葉樹と常緑樹ね。」
「何で花が少ししかないの?」
「もう花を咲かせる時期が終わるからよ。10月になれば全部緑よ。セリーヌは植物が好きなのね。」
「大好きだよ。ママも?」
「生きてるもの皆好きよ。虫とかも平気よ。」
「虫は少し怖い。あとネズミも怖い。」
今まで暮らしてた所にはネズミがいて、そのトラウマがまだある。
「それよりあの木は夾竹桃って言うのよ。」
「はじめて聞く名前だ。」
「綺麗な見た目とは裏腹に恐ろしい植物よ。」
「私達を食べたりするの?」
「セリーヌ、おばけじゃないのよ。動けない夾竹桃は植物なのよ。夾竹桃の根、茎、葉っぱ、花、枝全てに毒があるのよ。しかもそれを燃やすと有毒ガスが発生するのよ。毒って言ってもただの毒じゃないの。人が死ぬレベルの毒よ。」
「夾竹桃怖いね。」
「私ね夾竹桃を料理に混ぜて食べさせたい人が過去にいたの。すごい私を精神的に追い詰める人で。だけど料理を食べさせる前に引っ越しちゃったのよ。残念だわ。」
「お母さんがそんなことするの?」
「びっくりした?今のは冗談よ。とにかく夾竹桃は絶対に口に入れたりしちゃ駄目よ。大事なセリーヌが夾竹桃で死ぬなんて私は辛いから。」
私は涙を流した。
「お母さんがいる限り私はそんなことしないよ。」
セリーヌはずっと夾竹桃を見つめていた。
「セリーヌ、どうしたの?今度は花屋に行くよ。」
「分かった。」
2人で花屋に入った。
「こんにちは。」
「こんにちは。」
私達は店員に挨拶をした。
「たくさんお花がある。花瓶の花はいつも私が選んでるの。でも今日はセリーヌに選んでもらおうかしら?」
「良いの?」
「もちろんよ。」
「やったー!」
彼女は切り花をどんどん取って行く。
「すみません、これ取ってくれますか?」
セリーヌが店員に聞いた。
「良いよ。お嬢さん、グリーンも好きなんだね。」
「植物なら何でも好きです。」
店員からユーカリの切り花を受け取った。
「あとセリーヌの部屋に鉢植えも買っても良いよ。」
「これ何ですか?」
「アガベよ。」
本当に何でもあるお花屋だ。
「それじゃあこれでお願いします。」
私はお金を払って、店員が包み終わるのを待った。
「こちらです。」
「ありがとうございます。」
車に植物を乗せて私達は家まで帰る。
「おかえりなさいませ。」
ポレットがドアを開けてくれた。
「まずは花瓶を選ぶよ。どの花瓶が良いかしら?」
「この透明な花瓶が良い。」
子供ながらセンスが良い。買った花はバラ、リアトリス、モカラ、千日紅、ユーカリだ。
「モカラは枝が短いから小さい花瓶にして。」
「赤の透明のにする。」
黄色のモカラにぴったりだ。それ以外のものは大きな花瓶に生けた。
「お嬢様、素晴らしいですね。」
ポレットとマリアが絶賛した。エリーズはセリーヌが私と仲良くしてるのを気に食わない様子だった。しばらくメイド3人とセリーヌで簡単なセッティングをした。
「高価なアクセサリールイは必ずしまうのよ。色んな人が来るから。」
「かしこまりました。」
着々と準備が進む。
「おかえりなさいませ。お嬢様。」
ニコルとサロメが帰って来た。
「サロメは誰かと比べて可愛いわ。」
「お義母さん、お義母さんの衣装部屋に入っても良いですか?」
「何よ。突然。」
「私、パーティーで着るドレスやアクセサリー選びに困ってますの。お義母さんはドレスやアクセサリー選びのセンスに長けてますので、お義母さんの衣装部屋にお邪魔したいんですが、良いですよね?」
「は?あんたなんて入れるわけないでしょ!そうやっておだててアクセサリーの数々を盗む気なんでしょ?違う?」
ニコルの怒鳴り声が響き、セリーヌが怖がっていた。サロメは平気そうだった。
「もしくは私のドレスを破ったりするんじゃないかしら?うちの息子も恐ろしい嫁と結婚したもんね。」
ニコルの衣装部屋には入ることは出来なかった。そして夕方の時間になった。
「ベルナール、来てくれたのね!」
私はベルナールとビズをした。
「君がどうしてもって言うから。そうだ。紹介するわ。こっちが長女のセリーヌで、こっちが次女のサロメよ。」
「ママ、この人誰?」
サロメが聞いた。
「この人は素晴らしい絵を描く画家よ。」
サロメにポストカードを数枚見せた。
「何これ?どれも気持ち悪い!」
「サロメはお子ちゃまね。私はこのポストカードどれも好きよ。どの世界観に良い物語があるよ。」
セリーヌがサロメに言った。
「お姉ちゃんは大人ぶってるだけでしょ!」
2人は喧嘩になった。
「僕の絵が必ずしも大衆にうけるわけではないですから。僕は大衆受けたいから絵を描いてるわけではないです。僕はきっとこの絵を描くために生まれたんですよ。」
「そうね。あなたは必然よ。この世の中にあなたのような絵を描く人がいなくなったら世界の終わりよ。無と変わりない。ベルナールのような画家が消えたら、私達は表面だけを取り繕うとする大量生産型のロボットになってるに違いないわ。」
屋敷に旦那の知り合いと私の家族や知り合いもたくさん入って来た。




