クロムグリーン公爵家とクロケムリ
現在、忍は今日来るはずの剥製師を待っているのだがこれがなかなかこない。
昨日の反省もふまえて、狼の影分身をつけたネイルが道まで出向き、来客を待っていた。
「千影。」
『来客はありません。約束の時間はとうに過ぎております。』
何度目かの確認をしてため息をつく。
ジャハドの反応を思い出す。もしかしたら逃げ出してしまったのかもしれない。
「ネイルさんに戻ってもらって。スパイス園の方を進めよう。」
『仰せのままに。』
本物の剥製は一旦諦めて、もう一つ考えていたことを実行することにした。
こちらはシーラに手伝ってもらわねばならない。
ニカたちが港に着くとすぐに狩人に声をかけられた。
昨日助けた若い貴族様の案内をしていた人だ。
「ニカさん。昨日はありがとうございました。こちらの手紙を店主様にお渡しください。」
「ありがとうございます。おかげんはいかがですか?」
「快方に向かっているようですが意識がまだ戻っていないようです。私も雇われなのでそれ以上は…すみません。」
「昨日も言ったけどスパイクシードは厄介で長引くんだ。魔術で回復してもらえるんじゃないなら、まだしばらく意識は戻らないさ。ニカ、手が止まってるよ。」
鬼謀が従魔車の中から顔だけ出して声をかけた。
ニカが鬼謀の剣呑な空気を察して慌てて机の設置を再開する。
「これは魔術師様。お忙しいところ失礼しました。」
「いや、時間を取らせてすまない。店主にはよく言っておくから名前を教えてくれないか?」
「いえ、私はただの狩人なので、これで失礼します。」
狩人はそそくさと雑踏の中に消えていった。
鬼謀が無表情で舌打ちをする。
「きぼうさん、どうしたの?きげんわるい?」
「少し離れたらあいつも舌打ちしてるよ、表面が完璧でも裏側はわかりゃしない。チッ、誰がクソガキだ。」
鬼謀がまた舌打ちをして更に不機嫌になった。
まだなにかあの男が言っているようだ。
「ニカ、魔術師を外見で判断しちゃ駄目だよ。」
「うん。きぼうさんもしのぶさんもすごいもんね。」
「そういうこと。」
山吹がニカの前で自分を指さしている。
「やまぶきさんはみためもつよそうだよ。」
嬉しいらしく小さくガッツポーズをしている山吹を鬼謀は冷めた目で、ニカは温かい目で見つめていた。
しかし次の瞬間、鬼謀が叫んだ。
「営業中止!先生、旦那様に至急相談がある!」
ニカが営業札を裏返そうとしていた手を慌てて止める。
「今日は営業なし!」
待っていたお客たちがざわつくが、尋常ではない様子にニカと山吹は急いで片付けをはじめる。
そうしてニカたちは忍ハウスにとんぼ返りをすることになった。
スパイス園は順調に出来上がっていた。
ネイルは道の端の一角に出来上がった穴の中を見て顔をしかめる。
「ご主人様、この穴なんでしょうかコン。魔術に必要とかでしょうかコン。」
穴の中には解体されたカブトウシの血と臓物や土、枯れ葉や雑草、野菜くずなどが乱雑に放り込まれていた。
かなり深いがすごい匂いがしている。
「それ、来年には肥料になるんだ。うまくいけばだけど。」
「あ、肥溜めですかコン。でも、生ゴミが入っているのははじめてみましたコン。」
「げ、本当は入れないものなのかな?」
忍はうろ覚えの知識でなんとかしようとしているので、正解を確信してこれをやっているわけではない。
腐葉土と肥と骨粉と油かすが混ざっている方が良いんじゃないかというくらいの雑な考えでこの穴をほっていた。
ちなみに油かすは植物から油を搾った残りであり、動物の肉ではないということを忍は知る由もない。
「たぶん大丈夫ですコン。もう少し土を上に敷いて踏み固めておきますコン。」
「踏み固める必要があるのか。」
「乾いたら水をかけますコン。かなり深いですけど、こんなにいっぱいになるのですかコン?」
「解体していない獲物がまだいっぱいあるんだ。ネイルさんも汚れる仕事だから、お風呂は好きに使っていいからね。」
「お気遣いありがとうございますコン。」
忍は少し離れたところに香草の種を撒いていた。
土にまいて水を与えておく、これで明日には芽が出ているだろう。
木に育つものも早めに植えておけばそれだけ成長してくれるはずだ。
楽しみにしながら今まで手に入れた種を一つ一つ植えているところに、千影が話しかけてくる。
『ニカたちが帰ってきました。ずいぶんと慌てているようです。』
「ネイルさん、すぐ屋敷へ!」
忍はそういうが早いかずんずんと歩いていってしまう、ネイルは小走りでその後を追うのだった。
本邸の食堂に忍ハウスに住んでいる全員が集まった。
緊急招集だったため作業の途中だったネイルは作業用の汚れ着だし、ファロさんに至っては寝巻きに上着を羽織っただけである。
メイドの三人は交代で寝ているため、ちょうど休んでいるタイミングだったのだろう、追加の人員を考えたほうが良いかもしれない。
全員が席につくと鬼謀が手紙を取り出して、この緊急招集の理由を話しはじめた。
「この手紙、昨日助けた貴族の案内人にもらったんだけど、罠なんだ。中身は明日の晩餐への招待状。」
鬼謀の持っている手紙は封が空いていない。
封蝋にはどこかの家の家紋らしきものが押してあり、表には丸天屋台様としたためられている。
差出人はクロムグリーン公爵家とある。
「疑問が色々ありますが、君が焦ってる理由はなんですか?貴族とお近づきになるというのは作戦通りでしょう?」
忍の口調が馬鹿みたいに丁寧になる。
そのくらい真剣なのだという空気が場を支配した。
「この晩餐で僕の助けた長男が暗殺される。その罪を僕らにかぶせる気なのさ。」
「鬼謀、それをどうやって知りましたか?」
「この手紙を持ってきた狩人が少し離れた路地で喋ってた。そのあと、たぶん死んだよ。僕の耳が良いのは知ってるでしょ?」
鬼謀の耳はかなりの距離でも効くのは知っている。
しかし雑踏の中で人の声を聞き分けられるのだろうか。
「信じられない?旦那様が先生の顔を踏みしだいて椅子にしてたってひってりゅっ!!」
鬼謀の後ろに回り込んだ山吹がほっぺたを引っ張っていた。
「ちぎりとって鍋にしてやろうか、弟子よ。」
「ほうりょくふぁんたひ!」
忍にははそちらの仲裁をする余裕がなかった。
代わりにニカが二人の間に入っている。
「シーラさん、クロムグリーン公爵家ってどんな家ですか?」
「由緒ある王族の家柄ですウオ。ご当主様とお二人のお子さんがいらっしゃいますウオ。」
シーラによると奥方に先立たれた当主と長男長女の三人家族、当主のグレックは野心家で王子と長女レイアの婚姻を強引にすすめていたが、王をいきなり王女の夫が継いだことで事態が一変、今度は長女を現在の王の側室に送り込もうとしているという。
「貴族のドロドロですか、ちょっと整理させてくださいね。前の王様は子供が何人いるんですか?」
「第一夫人の子は王子と王女の二人だけですウオ。本来はミハエル王子がレイア・クロムグリーンと結婚して王位を継ぐところが、アビゲイル王女と結婚したユージ様が王座を継いでしまったのですウオ。」
「それで面白くないグレック公爵は、今度はレイアさんをユージ王の側室に入れようとしているわけですね。」
「はい、しかしミハエル王子も婚約破棄など受け入れられるはずもなく、現在も揉めているようですウオ。」
忍の理解は概ねあっているようだ。
しかしこれでは辻褄が合わない。
「それでなぜ、長男が狙われているのでしょう?」
忍の感じた疑問を山吹が質問してくれた。
今のところの相関図にクロムグリーン家の長男は入ってきていない。
まだ、王子や公爵、レイアさんが狙われているという方が話としてはわかりやすい。
考えるうえで名前がないとやりづらいな。
「クロムグリーン公爵家の長男の名前を教えて下さい。」
「バレット様ですウオ。活発で狩りが得意な方だと聞いておりますウオ。」
「バレット様が死んだ時、この図はどうなるのでしょう。」
少し考えた後、シーラが話し出す。
「まず、レイア様がクロムグリーン家の次期当主または当主の妻となりますので、グレック公爵は利がありませんウオ。仮に王との婚約発表後でもクロムグリーン家がなくなってしまいますウオ。レイア様もミハエル王子も王も利があるとは思えませんウオ。対抗派閥も当主様を狙うならまだわかるのですが、バレット様となるとよくわかりませんウオ。」
「他のところになにかあるか、本人たちの気持ちの問題というところですか。」
「旦那様、犯人探しもいいけど、現実の問題は暗殺者にされそうってとこだよ。背後関係じゃなくて明日をどうやり過ごすかのほうが相談したいんだ。」
鬼謀の発言にハッとする。
たしかにそのとおりだ。
「すみません。まずは手紙を開けてみましょうか。」
手紙の内容は晩餐への招待、店主殿と魔術師殿にお礼を述べたいということだった。
非公式なものなので気楽に来てほしいとも書かれている。
つまり、呼ばれているのは忍と鬼謀の二人だ。
「こういった場合、随伴者は使用人が一人、御者が一人くらいが一般的ですウオ。武器の持ち込みはできませんウオ。」
「日を改めたり断ることはできますか?」
「難しいですウオ。」
「では、随伴は山吹とシーラにお願いします。御者は外で待つことになりますが、なにかあったときに山吹がいてくれるのは心強いですね。」
「お任せください、主殿。」
「お任せくださいウオ。」
即答はするもののシーラの顔がこわばる。
当然だ、かなり危ない立ち位置になるはずなのだから。
「シーラさん、どうしても貴族のマナーやしきたり、事情に詳しい君にお願いしたい。」
「承知しておりますウオ。精一杯努めさせていただきますウオ。」
メイドの三人で別れを惜しんでいる。
いや、スケープゴートとかじゃないからね。
「暗殺の方法も罪を着せる方法も見当がつかないので出たとこ勝負になりそうですが、屋敷についたら最初にバレット様に【ヒール】をかけてしまうというのはどうでしょうか?」
「ああ、それならすぐに意識を取り戻すだろうね。」
バレットが攻撃を受けたのはスパイクシード、魔物ではないがトラバサミのように踏みつけられたことに反応して噛みつき、毒と呪いの混ざったものを獲物に送り込む。
倒れた獲物を栄養にして増殖していく植物だ。
毒消しのみでも呪いの対応だけでも影響が消えないため非常に厄介、二種類の薬草をすりつぶして傷に塗ると対応できる、死ぬほど痛いらしいが。
「みんな知らないようだったから、ここらじゃ珍しい植物だったんじゃないかな。」
「……バレット様は狩りになれていらっしゃるんですよね。その狩人から話が聞きたいところですね。」
「たぶん無理、死体になってそうなやり取りだったからね。女に刺されたか切られたかしてたし、その後は静かだったから。」
鬼謀がそこで放置してきたことにちょっとモヤッとするが、戦闘やら襲われたりしなかったことが幸運だったと思い直す。
まだ前の世界での感覚が抜けていない、この世界はうずくまった人に声をかけたことで強盗にあうくらいのことは起こりうるのだ。
しかし、これは狩人がバレットの暗殺に失敗して消されたという可能性が浮上してきた。
対応策が浸透していないパルクーリアで仕掛けたスパイクシードのところにバレットを案内、後は右往左往していればいい。
「千影。」
「いや、それは駄目だと思う。」
「我もおすすめしません。」
千影に探ってもらおうと声を掛けると鬼謀、山吹両名からストップがかかった。
「ビリジアンには精霊を対策できる魔術師がおります、当然それなりの対策がされているゆえ、千影殿が安易に単独行動をするのは我よりも危険です。」
「僕だって一時的に封じるだけなら千影を止められる。それに精霊に対応するには精霊がいたほうが有利なんだ。」
『忍様、ご命令いただければこの身にかえましても。』
「却下ですね。千影の身のほうが大事です。」
というか千影だけでなく全員大事だ、最初に死ぬのは忍がいい。
「シーラさん、精霊は随伴者に含まれるのでしょうか?」
「わかりませんウオ。喋る精霊を連れているなどという話は後にも先にも聞いたことがありませんウオ。」
語尾、やめてくれないかな。
シーラさんよく考えたら水の民でモリビトじゃないのに。
だめだ、集中力が切れてきた。
これ以上は考えてもいい案が出てこないだろう、明日は無事に帰ってくることを目標としよう。
「では、私と千影、山吹、鬼謀、シーラさんで晩餐へ、白雷とニカ、ファロさんとネイルさんはお留守番としましょう。よろしくお願いします。」
こうなってくるとメイドの三人にも忍が何故こんな危険な中で動いているかを話しておくべきだろうか。
家事と接客対応をやってもらうくらいでそうそう危険なことなどないと考えていたのが甘すぎた。
「シーラさん、ファロさん、ネイルさんは残ってください。私が何をしているのか、皆さんにお話しておきたいのです。」
そうして忍は神の使徒と神託について、三人のメイドに話したのだった。
翌日の夕方、忍たちは従魔車に揺られていた。
緊張感の漂う中でシーラが鬼謀に質問をする。
「ご主人様の事情をお聞きしましたウオ。恐れながら鬼謀様もなにか事情があるのですかウオ?」
「僕は、旦那様の忠実な下僕ってだけさ。」
「シーラさん、みんな必要なら話してくれるだろうから勘弁してやって。全員の事情を把握してるのは私と千影くらいだろうし。」
「そうなのですかウオ。失礼しましたウオ。」
最初に命令してるからどこかに漏らすことはできないだろうけど、やっぱり不安にさせたのだろう。
この集団は異常だ、中身を知れば知るほど普通の価値観を持ったものには辛くなってくるだろう。
もし、ついてこれないようなら三人を奴隷から開放しよう、馬が合わない集団に合わせるのは辛いことだって知っているから。
「そうだ、シーラさんは水の民なのになんで語尾つけてるの?私はそっちのほうが気になってるんだけど。」
「…お恥ずかしい話ですが、売れ残って長いのですウオ。完璧に振る舞えるメイドほど長い間教育を受けた、つまり売れ残っていたということになりますウオ。」
その理屈で言えば三人ともかなり長いのだろうか。
特にファロは言葉遣いも表情もほとんど崩れない。
「私もファロももう少しで払い下げられてしまうところでしたウオ。ネイルは最近来たばかりでしたがあの振る舞いならおそらくは長いですウオ。」
「そうか、辛かったな。」
奴隷といっても売り物だ、売れないと判断されたなら、もっとひどい環境に置かれることもあるのだろう。
当たり前のこととはいえ、世知辛い。そして人権という言葉が頭の隅に浮かぶ。
いつまでも慣れないな、どうも。
「絶対服従の契約と聞いたときは死ぬものと諦めておりましたウオ。」
「あー、うん、まあ。」
シーラが暗い顔になる。
【真の支配者】の能力を隠すために絶対服従を選んだが、たしかにいろいろな物語でこの条件は恐ろしいことになっている。
命が軽い世界、肉盾や遊び殺されるくらいのことはあるのだろう。
「先生が言ってたけど、旦那様に逆らったら鱗を一枚一枚剥がされるんだよね。」
「申し訳ございませんウオ!どうかお許しくださいウオ!」
「鬼謀、脅すな。」
鬼謀の一言のおかげで少し和やかになった従魔車が止まる。
どうやら目的地、クロムグリーン公爵の別荘に到着したようだった。
入口でパドルトカゲに乗った男が待っていて、二つ目に大きなコテージのような建物に案内された。
従魔車で敷地内にを通る間に見えたのは、森とツリーハウス、大小のコテージ、忍ハウスを買ったときも思ったのだが、敷地内が小さな集落のようだ。
この家の大きさは忍ハウスと同じくらいだろう。
「数十人くらいなら余裕で住める。」
「ここまでの広さは貴族様のお屋敷でもなかなかありませんウオ。ご主人様の屋敷が広すぎるんですウオ。」
シーラが呆れている。
その間に鬼謀は片眼鏡をかけて従魔車の中を見回していた。
正確には透視と望遠で周りを確認してくれている。
「お、バレット、まだ生きてるみたいだね。たいした精霊対策はなさそう。」
「様をつけなさい。……行きますよ。」
先に従魔車を降りたシーラと山吹がお辞儀をした。
それを確認したのちに忍と鬼謀は従魔車からおり、入口から出てきたメイドの先導で食堂へと案内されるのであった。
椅子を勧められてしばらくすると壮年の男性と、中学生くらいに見えるドレスの女の子が食堂へ入ってくる。
まっすぐに忍たちの元へ歩いてくるので忍たちも立ち上がって居住まいを正した。
「お初にお目にかかります。行商人の忍と申します。こちらは魔術師の鬼謀、フードを被っておりますが、安全のためですので、どうかお許しください。」
「クロムグリーン家当主、グレック・クロムグリーンである。この度は愚息を助けていただき感謝する。こちらは我が娘レイアだ。」
「レイア・クロムグリーンと申します。以後、お見知りおきを。」
「今夜はささやかながら料理を用意させてもらった。ぜひ楽しんでいってくれ。」
「グレック様、その前に御子息にお目通り願えないでしょうか。経過が芳しくないとのお話でしたので鬼謀も心配しておりまして。」
「ふむ。よろしい。案内させよう。」
「お兄様のところならわたくしが案内いたしますわ。さ、おふたりともこちらへ。」
メイドが先導しようとしたところでレイアが案内を申し出た。
食堂にはシーラが残り鬼謀と忍はバレットの様子を見に行くこととなった。
『旦那様、特になにか起こりそうな雰囲気はないんだけど、一応注意して。』
鬼謀が背中に触って意識を伝えてくる。
同じ建物の二階の部屋にバレットは横たわっていた。
息はしているようだが、忍たちが部屋に入っても目を覚まさない。
「旦那様、【解呪】して!早く!」
「は、え?【解呪】!」
唐突に鬼謀が叫んだため忍はあわててバレットに触って【解呪】をつかった。
事前の打ち合わせでいろいろな状況のシミュレーションをしていたので、忍もすぐに動けた。
「ぐぐぐ、ごああぁぁぁぁ!!!」
「キャアアァァァ?!」
バレットの口から黒い煙のようなものが立ち上る。
それは段々と集まってイタチのような形に収束した。
「魔石を割って!」
鬼謀がそう叫ぶと忍のマントの下から【ダークニードル】が数本飛び出し、胴体の一箇所をえぐった。
赤い魔法陣が浮かび上がり、イタチが苦しんで霧散する、魔石を割れたようだ。
「な、なんで、お兄様?なにがおこったの?!」
「【クロケムリ】さ。」
鬼謀が片眼鏡で部屋の中を見て回る。
そのうちバレットの枕の下から小さな陶器のようなものを取り出して床に叩きつけて割った。
「旦那様、回復をお願い。」
そう言われたところで悲鳴に気づいた使用人たちが部屋に入ってきた。
忍と鬼謀は両手を上げて事情を説明しようとするが、問答無用でつかまってしまった。




