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宝石坑道の紫蜘蛛1

 激動の第二回営業の翌日、忍の従者、ニカと山吹に激震が走っていた。

 天原忍者隊、緊急会議が招集された。 


 「えー、これより、千影殿の問題行動についての会議をはじめます。」


 忍は白雷を膝にのせ、壺を持って成り行きを見守っている。

 千影の意見も公平に聞くため、カーテンを閉めて部屋も薄暗くした。


 「千影殿は主殿のお側付きでありますが、トイレ、風呂、睡眠中など常々主殿を監視していますね。」


 『忍様の意向で、不本意ながらトイレだけは監視しておりません。』


 「昨晩の岩風呂で、我と主殿が交わした会話は?」


 『もちろん全て聞いておりました。千影も胸は気にしないでいいかと考えています。』


 そうなのだ、ニカが山吹に千影のことを話したらしく、山吹がこれはまずいと会議を招集したのである。


 「知られたくない事ゆえ、内容の言及は控えてください。我々従者のことも監視していますか?」


 『もちろんです。忍様は皆を守れとおっしゃいましたので、監視できる範囲で、できる限り見守っております。トイレもお風呂も睡眠中も同様です。』


 「おうぼうだとおもいます!」


 「主殿も何故こんなことをお許しになられているのですか?!」


 二人の言いたいことはよくわかる、しかし説明しようにも感情や気持ちの上でのことは説明が難しいのだ。


 「千影に合理的な説明ができなかった。未開地では千影にそうやって監視してもらわないと休憩することもできない状態だった。というところだ。」


 「従者も増えていますし、街でそこまで警戒することもないでしょう。」


 『山吹、ニカ、白雷は守らずともよいということなら、監視はしないでもかまいません。しかし、忍様だけは譲れません。どうしてもということならご命令を。』


 ニカも山吹もこれには詰まってしまっている。

 忍としても今までのことを考えると千影に安心して監視をやめろとは言えない。


 「千影、私の指示が悪かったかもしれない。普段から監視をするのではなく、守れという指示をしたときだけ皆を守るのはどうだ。生活の全てが監視されているというのはとても辛いことなんだ。私はこのままでいいから。」


 『……承知しました。千影は忍様の負担になっているのでしょうか。』


 「難しい質問だな、それ以上に助かってる。千影がいなかったら私はこの世にいないだろうし。」


 レッサーフェンリルのことは今でも覚えている。

 川の氾濫の時も大変だった、千影もそれらを気にしてくれている。


 「千影殿、我が山で主殿と二人きりになったときも監視をしていたのですか?」


 『忍様が二人にしてくれとおっしゃったので、ついていきませんでした。忍様が人払いをされる場合は不本意ながら監視を解いております。』


 「はくらいさんは、だいじょうぶなの?」


 『白雷、外、生きてる。』


 「白雷は自然の群れで生きてたからトイレも何も全部見えてるのが普通みたい。」


 白雷はやはり野生の獣寄りなんだろう、街だとあまり話しかけてこないし忍たちが話していることを理解できていないことも多い。

 トイレに行くことはあるが、それは従魔車や住処を汚さないためであって、隠れるためではないようだ。マーキングとかをするような習慣がなかったのは良かったかもしれない。


 「これだけ種族も考え方も違う集団なんだ、相談してお互いわかりあっていこう。」


 忍がそう締めくくって、天原忍者隊の緊急会議は終了した。



 「見なかったことにしてもいいような気もしますが。行くのですね。」


 「ああ、頼む。」


 ニカと白雷を部屋において忍たちは織物のホロウに向かっていた。

 織物のホロウ、店主の老婆の話は紫蜘蛛討伐よりも前にこの村がどうやって紫蜘蛛と共存してきたかという話だった。

 岩蜘蛛と違い、紫蜘蛛は人を食べることができる。

 幸い食事は頻繁ではないため、ボボンガルは生贄を差し出すことで紫蜘蛛の腹を満たし、洞窟から出てこないように鎮めていたようだ。

 あの蝶の彫り物は、生贄を差し出した家である証であり、生贄は家を守る蝶になったのだと村人は信じた。紫蜘蛛は人を食べる時、人を宝石に変えてすするのだという。

 洞窟の中に宝石の欠片が落ちていたら、それは紫蜘蛛が何かを食べた跡なのだ。


 山吹が発見したジェムロックラブが人を食べた、その欠片が山吹の持っている髪飾りの宝石だというのが忍の立てた仮説だった。

 織物のホロウに向かっているのは詳しい話を聞くためだ。


 「この髪飾り、本物のいわくつきになってしまいました。」


 「すまない、プレゼントなんて慣れないことしたもんだから。」


 「いえ、主殿のせいではないゆえ。」


 織物のホロウは営業中で、客の居ない店内に老婆はちょこんと座っていた。


 「よくきたねぇ。今日は三人かい?」


 「はい、実は紫蜘蛛の話を詳しく聞きたくてですね。弱点とか習性とか、なにかわかりませんか?」


 「えぇ?ババの大ババさまから聞いた話だからねぇ。ここらでこの話を知ってるのはいないんじゃないかねぇ。」


 口伝が途絶えてしまっているのだろうか、これは当たって砕けるしかないかもしれない。


 「ありがとうございます、あとは湯着も仕立ててもらおうかと。」


 何も買わないのも悪いので仕事を頼もうとすると、老婆は首を横に振った。


 「急ぎでないなら、岩蜘蛛の糸袋を持ってくるのがいいねぇ。そこらの糸とは肌触りも丈夫さも違う。気をつけて、行ってらっしゃいねぇ。」


 老婆は忍たちが岩蜘蛛を倒しに行こうとしていることを察しているらしい。

 亀の甲より年の功とはよく言ったものだ。

 忍たちは老婆に礼を言うと、冒険者ギルドに向かった。


 ギルドの掲示板にはジェムロックラブの討伐依頼はなく、ほとんどが行商人の護衛の依頼だった。

 受付さんに聞いてみると、もう二十年以上前からジェムロックラブは狩られていないらしい。

 こちらから攻撃しなければ無害で、防御力が固く狩るのが大変なジェムロックラブに対して、フォールスパイダーは比較的狩りやすく安価で手に入る素材なので、湯着の糸が取って代わられていき、今では一部の冒険者が防具の材料目当てで狩りに来るくらいのようだ。

 ジェムロックラブの討伐自体は自由とのことで、紫蜘蛛の話に関してはそもそも受付にいる人は誰ひとり知らなかった。

 ここでも有効な情報は出てこなかった、忍はぶっつけ本番で行くことに決めた。



 今回は洞窟ということで機動力が活かせない白雷と戦闘のできないニカはお留守番ということになった。

 岩に雷も効かなそうだという勝手な思い込みもあったのだが。

 昼下がり、フルプレートを脱いだ山吹に案内されて大きめの天然洞窟の入口に忍たちは陣取っていた。


 「山吹が私と千影がいるこの出入り口に蜘蛛を追い込む、でいいのか?」


 「はい、我なら地面を通って直接叩きに行くことができます。洞窟内部は入り組んでおり、こちらから出向くには厄介ゆえ。」


 理にかなっているが気になることもある。


 「普通のジェムロックラブもいるんじゃないのか?そっちはどうする?」


 「そこなのですが、どこに潜んでいるかわからないゆえ、とりあえず藪をつついてみようかと。」


 想像以上にぶっつけだ、というか無策すぎだろう。有効な攻撃手段もよくわからない。


 「先に一、二体討伐してみるのはどうだ?弱点もわかるだろうし。」


 「どうやって探し出すのです?」


 そうだった、色違いは山吹が【鉱物探知】できるが、普通のジェムロックラブはどう隠れているのかもわからない。


 「怖気づいて悪かった。出口に大穴をほっておく、ショーの実の落とし穴を試そう。あとは千影頼り、かな。」


 『お任せください、精神攻撃で意識を刈り取ってみせましょう。』


 「心強いです。では主殿、千影殿。我は洞窟の奥に参ります。」


 「気をつけろ、ヤバそうならすぐに逃げるんだぞ。」


 山吹と別れて忍は入り口に【トンネル】で落とし穴を掘った、千影は狼の影分身で穴の周りでショーの実を準備している。

 追い立てられた蜘蛛が穴に落ちたら狼がくわえたショーの実を潰して投げ入れる、ダメなら精神攻撃の二段構えだ。


 「たしか、糸には火と水と斬撃が効きづらいんだったな。【ロックバイト】の用意しとくか。」


 いざとなったら有効なのは土魔法くらいだろう、しかし、洞窟で生きている魔物にどの程度通用するかは疑問だった。


 『千影も情報収集のお役に立てず、申し訳ありませんでした。それに、この時間では影分身での援護くらいしかできません。』


 「いや、よくやってくれているよ。誰も知らないんじゃ千影に分かる道理もない。」


 明るい時間を選んだのも洞窟の生き物なら光を怖がるかもしれないという打算込みなのだ。

 狼なら中級魔法を使えるし、十五もいれば過剰戦力もいいところだろう。


 忍が罠を仕掛け、千影と喋りはじめてからまあまあの時間がたっていた。

 洞窟からは何も音が聞こえてこない。

 山吹も戻ってこなかった。


 『何をしているんでしょう?』


 「心配だな、どこにいるんだ。」


 耳飾りの地図は行ったことのない場所は正確に表示されない、山吹は二百メートルほど先で停止しているようだった。


 『狼で偵察に向かいますか?』


 「いや、【同化】してみよう。はぁ、また扱いが丁寧すぎるとか言われるんだろうな。」


 二匹の狼が洞窟前でいつでも動けるように準備をする。

 信じて待てるのが良いリーダーなのかもしれないが、あいにく忍は出来損ないのおっさんなのだ。

 そうと決まればすぐに山吹とどうかするべく、忍は集中をするのだった。



 忍たちと別れた後、すぐに宝石の気配を感じ取った山吹はその場所へと向かう。

 天然の洞窟は真っ暗で山吹は気配を頼りに蜘蛛を発見した、はずだった。


 動かない、何かが変だ。

 遠間から【ウィンドハンマー】を打ち込む。

 パキンとヒビが入るような音がするが、やはり動かない。


 前回はすぐに反撃が来た、好戦的だったはずだ、奇妙な状況に山吹は動けずにいた。

 しばらく様子見をしていると忍が【同化】で状況を聞いてきた。


 『山吹、大丈夫か?』


 『主殿、妙なことになりました。ご足労願えますか?』


 『わかった、千影とそっちに行く。』


 忍も山吹の事情は把握したが、蜘蛛の様子は実際に合流してみないとわからない。

 【暗視】があれば暗闇は障害ではない、千影の狼と連れ立って洞窟を進むことにしたのだった。


 『忍様、山吹の場所がわかりました。蜘蛛が動かない理由も見当がつきました。』


 洞窟に入った途端に千影がそういった。

 そうか、千影は闇に同化すれば数キロ程度は感覚の範囲内なのだ、洞窟くらいなら隅から隅までわかっても不思議ではない。

 まあ、わかったところで一度確認には行くのだが。


 『どうやら山吹の目の前にあるのは抜け殻のようです。』


 「っ?!」


 声を出しそうになって咄嗟に我慢する。

 蜘蛛はどうか知らないが、カニは脱皮をするはずだ。

 ジェムロックラブが脱皮をしても不思議はない。

 そういえば千影はジェムロックラブの気配を探れるのだろうか。


 『それらしい気配はありませんが、山吹が地面と同化すると千影にはわかりませんので、同じようなことができるのなら千影には捕捉できないかと。お気をつけください。』


 精霊のルールに照らし合わせれば、土の中は土の精霊の守備範囲、ということか。

 忍はいつでも魔法を打てるように準備をし、音を立てないよう慎重に洞窟を進んだ。


 山吹のいたところは行き止まりが部屋のような空洞になっている場所だった。

 忍は合流すると、【ホワイトフレイム】を出して辺りを照らした。


 「この宝石の山?」


 「あ、主殿!不用意に近づいては?!」


 慌てる山吹を尻目に忍が宝石に近づいてみるが、やはり何も反応がない。

 岩に宝石がびっしりついているようだが、離れたり近づいたりしてみると蜘蛛のような造形が見て取れた。

 もったいないから宝石は回収しておこう。


 『やはり中身がないようです。』


 「石の魔力も薄い。髪飾りと同じような感じだ。」


 「主殿、千影殿?我にもわかるように説明してください。」


 忍は山吹にこれが抜け殻であるらしいことを説明した。

 真っ暗な洞窟の中では判別は難しいだろう。

 殻といっても岩のような硬さで、薄い部分を鞘に入れたままの飛熊でつついてみるとパリパリと音を立て細かく崩れた。

 ものすごく薄めの岩というところだろうか。 

 山吹は再度【鉱石探知】を試みる。


 「ダメです、他にはこの宝石はありません。もう近くにはいないのでしょうか。」


 「いや、脱皮をしたら石の種類や性質が変わったのかもしれない。そうなると実際に歩き回って探すしかないな。」


 山吹は素手で抜け殻から宝石をもぎ取っている、八つ当たりなのだろうがパキンパキンと音を立てて素手で石を割るのはとても怖い。怪力の一言で済ませていいのだろうか。

 殻は忍と同じくらいの大きさ、脱皮したならここからもう少し大きいのだろう。

 よく周りを調べてみると、繊維状の白い岩があるのを見つける。

 やはりパリパリと崩れるのだが、端の方は柔らかいところがあった。

 頑丈さは段違いだがなんとなく粘性は薄く、練りこんだ小麦粉のような感じだ。


 「これ、糸か?」


 木で松明を作って火をつける、繊維に当ててみても燃えはしない。

 しかし、しばらく当てていると繊維が固まってきた。

 そして衝撃を与えると、かなり固いが崩れる。


 「火にも水にも強いけど、乾燥には弱いってことか。」


 「脱皮したのは前回我が見つけた後でしょうか。」


 「お腹すかして坑道をうろついてる可能性があるな。」


 脱皮して殻が固まれば、おそらく食事を取りに行く。

 もしかしたらまた犠牲者が出るかもしれない。


 『白い岩は洞窟の至る所にあるようですね。』


 白い、岩。


 「この糸、鉱物なのか?」


 忍は糸のかけらを手に持って、【鉱物探知】に集中する。

 たしかに周辺に反応があることを感じた。

 山吹も理解したようで、欠片を拾って試している。


 「確かに探知できますが、これでは多すぎて何が何やら。」


 「ここはおそらくジェムロックラブの巣だが、坑道は違う。坑道に抜けながら、それっぽいところをチェックしていこう。糸は私が金槌でなんとか壊せそうだし、山吹は探知に集中、千影は不意打ちを警戒してくれ。」


 「まさか我が姫役ですか?!」


 『ちゃんと蜘蛛が出たら倒してください。千影は忍様を守ります。』


 嬉しそうな顔をした山吹だったが、千影にバッサリ切られてちょっと不満そうに口をとがらせた。

 洞窟内部は千影がある程度把握できたようだった。

 炭鉱に繋がる部分は崩落でできた横穴らしき場所で、ここからそう遠くない場所にあるようだ。

 千影の案内で歩いていくと、真っ白な壁のようなものが見つかった。

 どうやら糸と土を混ぜて壁のようなものが作ってあるようだ。


 「ここも含め、薄い壁のあるように感じる箇所がいくつかあります。これは巣かもしれません」


 「なるほど、地蜘蛛なのか。カニらしいところはハサミしかないな。」


 地蜘蛛には穴を掘り、巣に蓋をつける種類がいる。

 蟻地獄みたいなもので巣穴を地面に同化させ、近くを通った獲物に襲いかかるためのものだが、ジェムロックラブの白壁は近くを通ったり壁を調べても開くことはなかった。

 とりあえず襲いかかられることはないようなのでホッとしたが、今回は一個体を探しているのだ。


 「いないのか、想像と違うのか。割ってみよう。」


 「この山吹にお任せください。それでは日が暮れてしまいます。」


 忍がハンマー片手に壁に向かおうとすると、山吹がそれを呼び止めた。

 山吹は土を得意とする竜だ、なにか妙案があるのかもしれない。

 ハンマーを仕舞って少し後ろに下がった。


 「では、失礼します。ハァッ!!」


 山吹は壁の少し手前から踏み込んで飛び、前に突き出した拳ごと壁に突進した。

 某格闘ゲームの赤いキャップのあいつの技でしかこんな突進は見たことがなかった。

 いつの間にか山吹の拳には竜の鱗が現れている、鋼より強いという言葉は本当のようだ。

 洞窟を反響する気合を入れた声とともに壁は崩れ去り、ついでに忍たちの歩いてきた方向からガラガラズズンと音がした。


 「どうですか!主殿!」


 「叫ぶな。千影、後ろはどうなってる?」


 『入口が埋まりました。退路がなくなりましたね。』


 壁の向こうには数メートルの横穴があったがジェムロックラブの姿はない。

 結果だけ見れば山吹の行動で大ピンチである。


 『裏切り者として処分いたしますか?』


 「えっ?」


 「えー、山吹。手加減を覚えろ。千影も、今は抑えてくれ。」


 さっさと坑道側に出なければ、落盤に巻き込まれて死にかねない。

 危険の度合いが一段階上がった、これからはより慎重に進まねばならない。

 坑道への横穴の手前でもう一箇所、巣らしき場所があった。

 今度は忍がハンマーを持って近づく、飛び出してくるようなら千影の狼が精神攻撃をする手筈だ。


 松明を近づけてパリパリと少しづつ割っていくが、奥は同じような空洞のようだ。

 壁の周りに沿って割っていき、三分の一ほど割れたところで真ん中を崩した。

 崩落は起こっていないようだ、そしてここも空振りだった。


 「巣じゃないのか?」


 見当外れだったのかもしれない。

 忍たちは横穴から坑道に入った。


 「崩れてできた穴のようですね。この穴、埋めておいたほうが良いのでは?」


 確かに坑道とつながっている穴が埋まればこちら側にいるジェムロックラブを退治するだけで済む。


 「よし、埋めよう。」


 「では、我が」


 「まて、殴って崩すのはダメだ。どんな方法でやろうとしてる?」


 『落盤で生き埋めになれば、千影も忍様も生きて帰れないでしょう。先程のようなことをするならば……。』


 「だ、大丈夫です。壁を生み出す魔術があるゆえ、それを使います。どうか山吹に汚名を雪ぐ機会を……。」


 真面目モードの山吹は失敗もするが頼りになる所も多い、個人的には任せてやりたい気もする。


 『忍様、【グランドウォール】などでは埋められないのでしょうか?』


 「できないことはないが、力加減を間違えば洞窟に衝撃を与えることになるな。山吹、力加減が必要な魔術なのか?」


 「いえ、洞窟に衝撃を与えるような魔術ではありません。」


 「じゃあ、信じる。千影もいいな。」


 『仰せのままに。』


 山吹はそこら辺に落ちていた石を穴の部分を囲むようにいくつか地面においた。

 それらの真ん中に土を集めて小山を作る、その後、地面に何かを書き込んでいた。

 しゃがみこんで両手を地面につけると、山吹の魔力が地面に流れる。


 パキリパキリと音を立てて現れたのは透き通った石の壁だ、水晶だろうか。


 「いかがでしょうか?」


 『塞がりましたね。』


 「まあ、これでいいか。ただ、鉱夫が崩すぞ。」


 「あ。」


 宝石を取る坑道で水晶の壁だ、喜んで崩すだろう。

 まあ、一時的にでも塞げたから良しとしようか。

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