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魔術師・魔法使いギルド


 なんとか歩ける程度まで回復した忍は白雷とともに従魔車の荷台で揺られていた。

 御者台にはニカが座ってくれている、誰も御者台にいないと人とすれ違うときに驚かれるらしい。

 車でも運転席に誰もいないならホラー展開なので当たり前といえば当たり前だが。


 「というか、御者台に誰もいないというより、従魔車をフルプレートが引いていることのほうが原因な気もするが。」


 いや、どっちもか。山吹は尻尾と角が見えているので、従魔といえば従魔にも見える。

 どうやっても驚かれるのなら御者と従魔という理解できる状態を用意しておいたほうが親切というものだ。


 『忍様、街が見えてきました。ここはどういたしますか?』


 「素通りしよう、少し遅れてしまっているしな。」


 マッサージ事件から二日、パーミスルの街が見えてくる。

 従魔の速さで荷物には遅れが出ることがしばしばある、賊などに襲われることもあるため最悪の場合は届かない、荷物運びは一週間くらいの遅れなら問題ないというのが通例だった。

 しかし、スカーレット商会の仕事はそのままスキップの評価になる、できるだけきっちりしておきたい。

 ガラックの街は前後の街とも距離が近い、このまますすんで今日のうちにたどり着きたいところだ。


 「あれ?」


 通り過ぎると決めたパーミスルの門で行商手形を提示している時、忍は複数の魔力の気配を感じた。


 『忍様、街の中に魔法使いが集まっています。精霊の気配もありますね。』


 「ああ、そうなのか。列にも数人並んでる。」


 千影が上空から街を見て回ると、魔法使いの小さな集団が複数、そこかしこにいるようだった。

 忍は門番に尋ねる。


 「今日、魔法大会でもあるんですか?」


 「いや、ポールマークとシジミールのゴタゴタで冒険者達が集まってきているんだ。残党を捕まえれば賞金が出るし、お隣のガラックには魔法使いギルドの本部もあるからな。」


 魔法使い・魔術師ギルド。

 カジャから聞いた話では内部のゴタゴタが絶えなくてめんどくさいということだったな。

 あまり関わり合いになりたくないので早々に立ち去ることとしよう。


 「そうなんですね。ありがとうございます。」


 「便乗してる奴らもいるらしい、人の目の少ないところには気をつけな。」


 門番は簡単な注意をして、慣れた様子で門を通してくれた。

 忍が荷台に乗ると従魔車は出発するが、ニカ以外の全員が変な空気を察していた。


 『つけられていますね、一人ですが精霊の気配を複数感じます。』


 「ニカ、スピードを上げるから荷台に来て。スカイエも中に入れよう。」


 ニカの隣で日の光を浴びていたスカイエの芽は、この数日で膝下くらいまでの小さな木に成長していた。

 そろそろ植え替えることも検討せねば、ガシャットの遺産に植木鉢のようなものはあっただろうか。

 ニカと荷台の中で体を固定して荷物はできるだけ指輪に収納する。

 山吹には街を出たらスピードを上げるように【同化】で指示を出した。


 『それではどこかにおつかまりください!風になるゆえ!』


 街を出て数歩もしないうちに山吹はスピードをぐんぐんとあげた。

 鎧のこすれるガシャンガシャンという音とともに街道を突っ走っていく。

 魔力の気配がいくつか追ってきていたが、それらを置き去りにするだけの速さで山吹は走る。

 最速のその先、どうやら伊達ではないようだ。ところで、そろそろ止まってほしいのだが。


 『風が、風が呼んでいるゆえ!』


 「命令ー!!ゆっくり止まれー!!」


 忍が命令すると山吹が数十メートルかけて止まった。

 山吹は優秀なときと暴走しているときの落差が激しすぎるのが玉に瑕だ。

 まあ、楽しくなっちゃって自制できないというのはわからんでもない、山吹は走るのが好きそうだし。


 「失礼しました。どうやら追手はまいたようですね。」


 「ああ、ここからはまた普通に頼む。」


 なんで追ってきたかはわからないが、追手がいるのにニカを御者台につかせておくのはマズい。


 「ニカ、ここからは中にいてくれ。」


 『忍様、千影の烏も追いつけずに全滅いたしました。申し訳ございません。』


 「あっ、すまない…。次から解除しよう。」


 情報を集めてくれた千影の烏をすっかり忘れてしまっていた、スピードについて来れず有効な範囲の外に出てしまったようだ、反省。

 忍は御者台に揺られつつ、マントの下から烏を生み出すのだった。


 その後、数台の従魔車とすれ違ったが、護衛なのか商人なのか魔法を使えそうな人がちらほらいる。

 【魔力操作】で感覚が鋭くなっているのか集中しなくても魔力が感じ取れる。

 しかし、忍たちの魔力のほうが反応が大きく、ニカでさえそこらの魔法使いよりは濃い魔力の気配を持っていた。


 「ニカ、そのうち魔法の練習してみるか?」


 「やってみたい!おじいちゃんみたいに、かりとしょうばいするの。」


 「あんまり危ないことはしてほしくないが、教えられることは教えるよ。ああ、そうだ。これを渡そうとおもっていたんだ。」


 忍はバッグからドアの形のペンダントを取り出した。

 ミネアに渡したのと同じもので、なかにはガシャットの似顔絵が入っている。


 「……ありがとう!これ、しのぶさんがかいたの?じょうず!」


 「ああ、おじいちゃんがニカのこと守ってくれるように、お守りだ。」


 忍は元々オタクだったこともあり絵はある程度描けたが、【名工】の能力のせいか写実的なものを描くのが格段にうまくなっていた。

 今回のガシャットの絵も柔らかに微笑んでいる自信作だ。


 「しのぶさん、これ、いいかも!うってみようよ!」


 「ああ、最初はそれも考えたんだけど、描くのに時間が掛かるし、絵無しじゃただのドアだからな。」


 「ドアだけでもこうつかうんですよってやれば、ほしいひとがいるよ!わたし、いま、すごくうれしいもん!」


 ニカはすごく乗り気なようだ。

 ガシャットの店でも看板娘だったことだしお金の計算もできる、行商の練習にもなりそうだった。


 「今度、行商市で店を出してみるか。少し数を用意しておかないとな。」


 「ぜったいうれるよ!」


 楽しそうにしているニカにほっこりしているとガラックの正門が見えてきた。


 ガラックはシジミールよりは小さいもののそれなりの広さのある街であった。

 主要都市というのだろうか、いくつかの街道が合流しており、街も発展している。

 高い建物もいくつもあったが、何よりも目を引くのは中央にそびえ立つ巨大な塔だった。

 忍の知識でいえばバベルの塔だろうか。らせん状の道が塔の周りを回っており、従魔車がゆっくりと上り下りしている。


 「うわ、何階建てだあの塔。」


 「たかーい!」


 『魔術師の回廊という遺跡ですね。かなり前に踏破されて、現在は魔法使い・魔術師ギルドの本部になっているようです。その他のギルドや街の施設は大半が塔に間借りしているようですね。』


 「ショッピングモールみたいだな、とりあえず塔を目指してみるか。」


 塔に行くまでに、ブルーアースの歩き方でもこの街のことを調べてみる。

 アサリンド随一の学術都市で出版されている本はほとんどがこの街から流通するらしい。

 魔法学校があり、街の至る所で魔法が見られる。

 魔力を持った人物がここに移住してくることも多い。

 図書館は様々な書籍が閲覧可能、筆写することも出来るので学者も多く滞在する街のようだった。


 「図書館か、興味はあるけど荷物があるからな。今回は素通りだ。」


 「わたし、うえにのぼってみたい!」


 ニカが高いテンションのままねだってくる、そのくらいなら大丈夫だろうか。

 山吹も無言でサムズアップしている、フルプレートは圧力があるな。


 「用事が全部終わった後で登ってみるか!」


 「うん!」


 「プオッ!」


 街中に入ったので荷台に降りてきた白雷も元気よく返事をしている。

 この街での第一目標は荷物のお届け、第二目標は塔を登ることに決まった。


 忍たちが塔の下まで来た時、白いローブを着た一団がバタバタと走ってきた。

 五人は山吹の前に立ちふさがると、一歩前に出た短髪白髪の初老の男性が大声で口上を述べる。


 「またれよ!この魔力!荷台のお方はさぞ高名な魔術師殿とお見受けする!会員証を拝見したい!我が名はアサリンド魔術師ギルド会長、セルランである!!」


 「えぇ、これなんて答えればいいの?」


 『忍様、顔を見せて名乗るのがいいかと。』


 そういわれてみればそうだ。

 唐突な通せんぼと名乗りに取り乱したが何の用かもわからない、とりあえず対話をしなくては。

 忍は深呼吸をして荷台から降りると、山吹の前まで歩きセルランと対峙する。


 「パーティの代表、行商人で冒険者の忍です。御用は何でしょうか?」


 冒険者ギルドの会員証を提示するが、セルランはしかめっ面でそれをじっと見ていた。

 なんだか雰囲気が悪い、何か間違っているのだろうか。


 「忍殿、でよろしいか?水魔法使いということだが、精霊の主人はどちらかな?」


 「私です。師匠の教えで全てを申告しているわけではありませんので。」


 「……実戦が得意な師匠殿なのでしょうな。魔術師ギルドの会員証は持っておられないのですか?」


 「ええ、持っておりません。」


 「それはいけない!その才能!ぜひとも魔術師ギルドに入るべきです!!」


 そういうが早いか、セルランの後ろに控えていた二人が忍の両脇を固めてセルランの懐から紙が出てきた。


 とっさに烏が忍を抑えている二人に【ダークニードル】を放つも、セルランの後ろに控えていた二人が【ファイアブラスト】をぶつけて相殺してしまう。


 「白雷!」


 「プオォ!」


 荷台から素早く出てきたぬいぐるみサイズの白雷がセルランに電撃体当たりをかます。

 忍は抑えられていた右腕を振りほどき、左腕で頑張っている一人の頭を捕まえてマントの中に突っ込む。

 ビクンと体が一回跳ねて気絶した、千影本体の力は烏の比ではない。

 千影の烏が気絶したセルランを抑え、一旦騒動は収束した。

 

 「……魔術師ギルドはいきなり襲ってくるものなのですか?」


 「い、いえ、失礼いたしました。これは勧誘活動でして……」


 「羽交い締めにしてなんだかわからない紙を取り出すのが勧誘活動ですか。こんな街中で反撃されたときの周りの迷惑を考えなかったんですか。」


 反論しようとした一人もそれで黙り、重苦しい沈黙が訪れた。


 「私だけでなく、私たち全員はこんな失礼なギルドに入る気はありません。なんでこんな事をしたか知りませんが、衛兵にもお話させていただきます。」


 忍はそう啖呵を切って白雷とともに従魔車の荷台に乗った。

 山吹がすぐに出発し、忍たちは塔を登り始めた。


 「あぁ。もう、千影、白雷、ニカ、なにあれ。心臓が痛い。」


 白雷に抱きつき、すり減った精神を回復させる。

 同時にニカも忍に抱きついてきた。


 「しのぶさん、よかった!こわかったよ…。」


 『セルランは普段から同じような勧誘活動をしているようですね。この街では魔術師ギルドの力は強いですから衛兵もおいそれとは手が出せないようです。魔術師ギルドと魔法使いギルドの勢力争いで、強力な魔力を持つ忍様を入会させることで点数を稼ぎたかったようですね。』


 「なにそれ、巻き込まれ事故じゃん。」


 「このまちこわい。はやくにもつとどけてでよう!」


 『千影もニカに賛成です。今回は白雷の不意打ちでどうにかなりましたが、加減ができる相手ばかりではありません。』


 忍も感じていたが、セルランは魔術師としてしっかりと強そうだった。

 魔術師の戦いは魔力の量で決まるわけではない、ネレウスのことを思い出して気を引き締めた。


 「とにかく荷物だ。あと、千影は烏じゃなくて狼に切り替えよう。この街では精霊の気配がわかる人も多そうだし、いざとなれば戦闘力がある方がいいだろう。みんなを守ってやってくれ。」


 「承知しました。」


 十匹ほど魔力を強めにこめた狼を出し、忍は御者台へと戻った。


 「うーむ、まだ効いてるな。」


 マッサージの後遺症で忍はまだ体が素早く動かなかった。

 山吹にも方針を伝達し、忍たちは急いで行商人ギルドに向かった。





 塔の外周は従魔車が走っているが、内部からの呼び込みも多く、誘惑がいっぱいだった。

 魔法店、本屋、武器防具、雑貨、従魔用品、レストランに宿、果ては船上用品まで売っていた。

 この塔で揃わないものはないのではないだろうか、ショッピングモールどころではない、巨大な買い物専用の街があるようだった。

 登っている途中、セルランのことも近くの衛兵に報告したが、なんだかいつものことのようで困った顔をしていた。

 行商人ギルドでは、荷下ろしした後の手続きも山吹とニカと固まって行ったのだが、そこで受付のお姉さんが声をかけてきた。


 「下では大変でしたね。いま、ミリオン商会のゴタゴタで魔術師ギルドは焦ってるんですよ。」


 「どういうことですか?」


 受付のお姉さんは周りを気にすると、忍に耳を貸すようにちょいちょいと手招きをした。


 「ミリオン商会は大商会だったから各ギルドには寄付とかもあったんだけど、従魔レースのお陰で魔術師派閥はその額が多かったらしいのよ。事件でそれが表面化したところに魔法使い派閥がツッコんで、ゴタゴタしている間に従魔レースの経営に関われなくなっちゃったのね。おかげでお互いの派閥の溝がより一層深まっちゃって、この街は、最悪の雰囲気なのよ。」


 「なるほど。貴重なご意見ありがとうございます。」


 利権争いで溝が地割れくらい大きくなったのか、強硬派がいるわけだ。

 忍は手続きが終わると二人の手を引いて踵を返した。

 しかし、行商人ギルドのロビーには青いローブを着た男女二人組がすでに待っていたのだった。


 「魔法使いギルドのサミュエルというものです。個室をお借りしておりますので、代表の方と一対一でお話がしたいのですが。」


 男のほうが声をかけてくる、忍は塔の下と同じように前に出て交渉に応じた。


 「忍といいます。お話を伺いましょう。……ちょっと行ってくる。」


 忍は二人を残してサミュエルと個室に入った。


 「早速ですがまず、セルランの非礼をお詫びいたします。申し訳ございませんでした。」


 そう話しはじめたサミュエルの話は大方の予想通りギルドに入ってほしいということだった。


 「嫌です、遠慮します。」


 忍はバッサリと答えたのだが、サミュエルはなかなか引き下がらない。


 「魔法使いギルドに入っておけば、勧誘されることもなくなりますし、不都合もおこらないですよ。魔法を覚える際の教本や魔法薬も安価に仕入れることが出来ますし……」


 忍は腕を組んで相槌も何も打たないことを意識していたが、サミュエルは喋り続ける。

 根気の勝負かとめんどくさくなってきた時だった。


 「キャーーー!!!」


 絹を裂くような女の悲鳴が行商人ギルドに響いた。


 「どうした?!」


 忍がびっくりして個室を飛び出すと待合室で青ローブの片割れがしゃがみこんでいる。

 ニカはオロオロしていて、山吹は椅子に腰を下ろしたままだった。


 「こ、この男がお尻を揉んできたんです!撫で回してきたんです!!」


 青ローブがそう言って指さしたのはフルプレートの戦士、山吹だった。


 「忍さん、あなたのお仲間は随分と横暴なようで。」


 後ろからサミュエルが声をかけてくる、行商人ギルドの待合室は人の目も多い、忍は全員に質問をした。


 「だれか、山吹が彼女のお尻を触っていたのを見ていた人はいますか?」


 誰一人として手も声もあげなかった。


 「なるほど、誰も彼女の言う事を証明はできないんですね。」


 「本当よ!嘘つき呼ばわりなんて酷いわ!」


 「そうです!彼女は被害者ですよ!なんて奴らだ!」


 二人がまくしたてるが、山吹は動かない、忍に任せるということだろう。

 怪しすぎて頭が痛い、青ローブの女に忍は質問する。


 「あなたは我々が個室に行く時、椅子に座っていましたよね。どうしてそれで山吹がお尻を揉めるんですか?」


 「手を滑り込ませてきたのよ!当たり前じゃない!!」


 「はい、嘘ですね。あなた、山吹の隣りに座ってください。」


 忍は近くにいた男性職員を指名して女の座っていた椅子に座らせた。


 「山吹、お尻を触ろうとしてみて。」


 山吹が言われたとおり男の尻を触ろうとすると、フルプレートがガチャガチャ音を立てる上に、厚手の手甲が背もたれにひっかかって手が入らなかった。

 山吹のフルプレートはは特注の極厚だ、お尻を揉むには椅子の後ろ半分くらいは空間がないと無理だろう。

 そして忍は知っている、山吹に尻を揉まれたらしばらく痛くて立ち上がれない。


 「五月蝿いし……滑り込ませられるような装備じゃないですよね。」


 「まあ、これは……。」


 男性職員は言いづらそうだった。

 おそらく、魔法使いギルドに目をつけられたくないのだろう、皆が黙っている理由もわかる気がした。

 長いものに巻かれていくのが普通ということであり、集団の中で円滑に生きていくための処世術だ。

 それで罪を着せられる方はたまったものではないが。


 「でも、この男が!」


 「さっきから誰のことを言ってるんです?」


 忍は女のキンキン声を遮りそう言った。


 「山吹、すまないがヘルムを取ってくれ。」


 「仕方ないですね。なかなか面白かったです、主殿。」


 中から顔を出した褐色美人がニヤリと笑った。


 「お、女だからってやってないなんてことには…」


 「我は主殿一筋ゆえ、こんなところでギャーギャー騒ぐ恥知らずな女には欠片も興味がないです。主殿、この不肖の身を案じていただきありがとうございます。今夜はたっぷりと慰めていただきたいものですね。」


 纏めていた髪をファサっと広げ、山吹が喋りだすと一気に雰囲気が変わる、寡黙だった先程までとは別人のように弁が立つのだ。

 なんか忍が女ったらしみたいに言い回していくので文句はあるのだが、ここで山吹に反論すれば青ローブの二人に隙を見せることになることくらいはわかる。

 こうなるともはや魔法使いギルドの二人が何を言ってもどうにもならない。

 口の回る山吹相手に証拠のない性別まで間違っている訴えでは、いくら波風を立てたくない相手でも、もう誰も耳を貸さなかった。

 青ローブの二人は逃げ出したが、運悪く忍たちの従魔車の近くを通ったらしく、千影の狼に補足されて捕縛されていた。


 『忍様、殺したり壊したりは……。』


 「なしね。ほんとは許可したいくらいだけど。あと、山吹は覚えてろ。」


 「主殿?!」


 絶対楽しんでいた山吹を牽制しながら、すっかり怯えきってしまったニカの頭を撫でる。

 しばらく行商人ギルドの待合室で休ませてもらった。

 この街の経験で忍たちが決定した指針が一つだけあった。


 魔法使い・魔術師ギルドには入らない、極力関わらない。


 商人としては入会するメリットもあるのだろうが、もう印象が最悪だった。

 その場でスキップにも受領証を送り、忍たちは日の落ちたガラックの街から逃げ去るのであった。


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