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初依頼と助太刀

 「山親爺、大熊猫、ベアクロー、グリズリーネイル……。」


 あれから五日、今日はバンバンに頼んだナイフが出来上がる日だった。

 使った魔石はバンブーグリズリーのもので、忍は前回の轍を踏まないよう、数日前から名前を考えていた。


 「千影のときは事前に闇の精霊っぽいのと戦ったイメージだし、白雷のときはそのまんまだったもんなぁ。」


 「プオォ?」


 『そうだったのですか。』


 「ああ、あと、男性でも女性でも変じゃない名前を考えた。」


 忍はゲームの主人公やアバターに名前をつけるのに平気で数日くらいは悩むような人種であった。

 素早い決断を迫られていなければどうしても迷ってしまうのである。


 「鬼熊、若竹、笹切……。」


 バンバンの店の前についてしまった。

 仕方がない、ナイフを見てからにしよう。 


 「おぅ、来たな。ほれ、注文のナイフだ。確認しな。」


 バンバンは金属の鞘に入ったナイフを忍に渡してきた。

 鞘にはバンブーグリズリーの意匠が施してある。

 ナイフを抜いて、重さや握りを確かめる。


 刃渡り二五センチほどの両刃のダガー、先が少し膨らんだ投擲に適した刃、コの字の鍔に、握りも左右対称で忍の手に馴染み、順手でも逆手でも扱いやすそうだ。

 忍は前回と同じく出入り口に向けて、ナイフに魔力をこめた。

 しかし何もおこらない。

 いや、おこった。バンバンが笑い出したのだ。


 「ぶははははは、オメェ、魔剣は全部が全部魔力注いで発動するわけじゃねぇんだ!」


 「え、じゃあこれは?」


 「普通に切れ味と強度が上がってるだけだ!魔力がなくても扱える、注ぐ必要もねぇ!」 

 

 なんだろう、内緒で練習していたライダーの変身ポーズを見つかったような気分の悪さである。

 真顔でバンバンの笑いがおさまるまでじっと見つめる。


 「いや、すまんな。言ってなかったな。」


 「ええ、言われてませんでした。名前は、ヒユウにします。」


 「名前ぇ?愛着持ってくれんのは嬉しいけどよ、そいつには特別な力はねぇし、魔剣だが普通のナイフだぞ?」


 けろりと言ってのけるバンバンが癪に障った。

 名前もかなり悩んだ候補の一つだ、こうなれば意地でも特別なナイフにしてやる。


 「追加料金を払うので銘は飛熊、持ち手に竹の意匠もつけてください。」


 「お、おいおい、数日かかるぞ?」


 「言われたとおり、名前を数日、考えて、きましたので、数日かけてでも入れてください。」


 忍が真顔で圧力をかけると、バンバンはやっと怒っていることに気がついたらしい。

 こうしてバンバンの酒盛りは数日お預けになった。

 忍はナイフの代金として金貨五枚を支払ったが、出来栄えは大満足だった。


 ギルドに加入し、装備も整った。

 忍はいまのうちにやっておきたいことが二つあった。

 一つは冒険者ギルドの依頼を受けること、幸運にもカジャというギルドに詳しい知り合いができたので、今のうちに色々教わっておきたい。

 もう一つは木工、服飾、料理などの練習をすること、街に来るまでにパーカーもカーゴパンツもぼろぼろになってしまったし、木工や料理は大自然の生活を豊かにしてくれる。

 学生時代には家庭科は得意科目だったし、道具と【名工】があれば現実的に可能な内容だ。

 ドムドムのお陰で木工や竹、革の扱いの知識も増えたので、これらの内容を上達させておきたい。


 まあ、カーゴパンツとパーカーは買い物した日に速攻で特注してもらったけどね。

 あと、ブリーフはちゃんと売ってた。よかった。

 ブリーフ派の天原忍、三十才なのであった。


 「明日は朝イチで冒険者ギルドで依頼を受けるぞ。」


 忍は白雷をブラッシングしながら宣言した。

 毎日の訓練の結果、白雷は相変わらずであったが、千影も忍と触れている間は意思の疎通ができるようになっていた。

 触れていれば全員無言で意思疎通が可能、これは大きな進歩だった。


 『朝一番なら受付もすいているであろうというわけですね。』


 「千影、正解。うれしいな、黙ってても考えが通じるようになってきた。」


 『ありがとうございます。』


 異世界モノの話の中で、冒険者は朝寝坊なものだ。

 訓練がてら、千影には頭の中で話しかけている。

 意思疎通は忍が伝えたいことしか伝わらない、隠したかったりすることは伝えようと思ってもうまく伝わらないこともある。

 逆も然りで気を抜いていると考えがダダ漏れになるので練習が必要だった。


 『【デリケート】ですか?』


 「正解、明日もし同じ状況になるなら使ってみようかと。」


 『限定的な魔術ですね。』


 「んー、まあ、うまくいけばいいんだけど。」


 『白雷、声、出さない。』


 「うん、お願いね。」


 ちなみに従魔、つまり白雷のことは申告したが千影のことは申告していない。

 ついてきてはもらうが、大自然サバイバルのときのように影分身の烏による偵察とサポート役をしてもらうことにする。


 『忍、乗る?』


 「そうだな。それも練習しようか。」 


 手綱をつけることで白雷に乗るのは格段に楽になった。

 しかし、やはり速度が早すぎて調子に乗るとすぐに振り落とされてしまう。

 白雷がスピードを調整することと、忍が白雷のスピードに乗れるようになること、双方の慣れが必要であった。

 町中で練習するわけにもいかないため、外に出るタイミングで練習をしておきたかったというのもある。


 「明日は早い、寝るか。千影、白雷、おやすみ。」


 「プオオォォ……。」


 『おやすみなさいませ、忍様。』


 明日は冒険者としてクエストを受ける。

 異世界モノでトップクラスにポピュラーな行動をするのだ、忍は少しだけワクワクしていた。


 カジャによると冒険者ギルドは昼夜問わずに営業するらしい。

 荷船に漁船、夜行性の魔物の出現・討伐報告などもあり、常に人手が必要だからだ。


 ただし、賑わう時間は漁船のサイクルに比例するため、魚市場の賑わう早朝には人がほとんどいなくなる。

 依頼の掲示も処理されたものから貼り出されているので、掲示板の更新時間なども気にする必要はないようだった。


 大自然サバイバルを経験した忍は知っていた、真っ暗で何もないと、人は眠るくらいしかやることがなくなる。

 部屋のカーテンを閉め、千影に暗くしてもらって眠りにつくことで忍は朝日とともにスッキリ起きることに成功した。

 まあ、寒さはどうにもならないので布団から出るのには苦労したのだが。


 肩掛けバッグに精霊の壺、会員証、小銭入り革袋、麻袋、水筒、ロープなどのかさばらない程度の道具を用意し、剣帯の右には赫狼牙、左には飛熊を携えた。

 ポケットには【イリュージョン】【影分身の霊獣】【デリケート】【岩枷】【従魔の魔術】の発動に必要な魔法陣を用意した。

 せっかくポケットが八つあるので魔法陣を使う魔術が増えたら随時装備していこう。

 【従魔の魔術】なんてポンポン使っていたら天原忍動物園ができてしまう。


 バカなことを考えている間に、忍たちは冒険者ギルドについていた。

 中はガラガラで一人しか人がいない、そこまでは想定通りだったのだが、その一人は左から二番目、あの受付の女の子だった。


 困った、とりあえず掲示板を見に行くが、貼り出してある依頼はまばらで、主に船に乗って海に出なければできないものだった。

 常時貼られている依頼も存在するのだが、これは雑用と薬草採取、町中の雑用では白雷の訓練はできないし、薬草採取は忍の苦手な植物の見分けが必要な仕事であった。

 しかし、薬草採取は初心者向けだ、貼り出されている中では毒消しの材料になるピッカ草ならなんとかなりそうだ。

 群生しているようだし、一つ見つければそこの周りから取ってくればいい。

 納品時に受付で確認もしてくれるようだ。


 「よし、これでいこう。」


 忍は受付さんのところに紙を持っていく。


 「この依頼を受けたいのですが。」


 「……は、…じめて………。」


 やはり言葉が聞こえない、なにか喋っているようだが、声が小さすぎる。


 「ごめんなさい、ちょっとまってもらえますか?」


 忍は足元に布を広げて、その上に乗った。

 布には複雑な魔方陣が描かれており、忍は小さな声で詠唱した。

 

 「見えぬ地平の先を見て、聞けぬ霧中の声を聞く。【デリケート】」


 「ま、魔術?なにを」


 「ああ、ごめんなさい、音を聞きやすくするものです。」


 普通に喋ったはずなのに自分の声がかなり大きめに聞こえた。音量調整が難しい。

 しかも、女の子を怯えさせてしまった。これはしくじっただろうか。


 「ああ、すみません、すみません。私の声、誰も聞き取れないんです。大きく出そうとすると声がかすれてしまって…」


 「大丈夫ですよ。ただ、誰も居ないから使っていますが、騒がれたくないのでできるだけ内密にお願いします。奥の手なので。」


 どうやら自覚はあるというか、どうしようもないことのようだ。

 実はこの世界に来てから気がついたのだが、忍は相手が混乱したり慌てたりしていると落ち着いて話ができるらしい。

 目の前にいっぱいいっぱいの人がいると、自分がいっぱいいっぱいになる余裕がないからだろうか、不思議だ。

 受付の女の子は見るからにいっぱいいっぱいで、小さな声ながらかなりの早口で謝るのだった。

 忍は話を戻す。


 「依頼を受けたいのですが、受付していただけますか?注意点などもあれば教えてほしいです。」


 周りを烏に探ってもらっているが、ギルドの中に入ってきそうな人はいない、いきなり大音量を叩きつけられる心配はなさそうだ。


 女の子は書類を作成すると、忍に説明をはじめた。


 「依頼内容はピッカ草の採取です。報酬は出来高制で、重さで金額が決まります。はじめてのお仕事ということでいくつか注意点があります。」


 早口で声が小さい以外は対応がしっかりしている、そういえば入会のときもテキパキと手続きをこなしてくれていた。


 「今回のような出来高制の仕事ではありませんが、報酬の決まった仕事、討伐などでは失敗すると違約金が発生します。通常では二割ほどですが、中には違約金が高額の依頼もありますので受けるときには注意してください。」


 これはよくあるペナルティだ。

 魔物討伐で失敗したらその分長期間被害が出るし、金がないからとりあえず受けるというような責任感のない実力不足の者を振り落とすことができる。


「薬草や狩りの場合、生息地の物を取り尽くさないように注意してください。ピッカ草は冷水で伸びていく草なので、冬の冷たい川や池の近くに群生します。新芽を摘んだら本体は抜かないようにお願いします。」


 取り尽くさないようにして動植物を継続して採取できるようにする、ここらへんも生活の知恵だ。


 「今日の注意点はこんなところです。あ、あの、聞こえていますか?」


 「ああ、ごめんなさい、集中してました。冷水の近くに群生、新芽を集めて本体は取らない、でいいですか?」


 忍がそう言うと、女の子はポロポロと涙を流して泣き出してしまった。


 「え、お、落ち着いて。あー、えーっと、お茶、お茶飲む?」


 唐突な涙に忍は大混乱した。

 バックからお茶を出したり、マントから手のひらサイズの白雷を出したりしてみる。


 「ご、ごめんなさい、はじめて説明を聞いてもらえたのが嬉しくて。いつも受付にいても、だれも私に仕事を頼んでくれなくて……」


 なるほど、ずっとあの調子なら聞き取れるやつはかなりの地獄耳だ。

 他の四人に仕事を頼みに行くのもある意味当然の流れだろう。

 この子の受付はいつも空いている、本人も気にしているのだろうな。


 「少しこの街に滞在しますので、よかったら色々教えて下さい。私は忍といいます。よろしくおねがいします。」


 「あ、受付のミネアです。こちらこそよろしくおねがいします。」


 どうやら無事に依頼を受けることができたようだ。

 布を回収して忍は出発した。

 泣かれてしまったときにはびっくりしたが、持ち込むときもミネアに頼もう。


 ポールマークから首都シジミールまで続く大街道の途中に海へと流れ込む川があった。

 これを山側へ登っていくと大小の湖が点在する湿地帯が存在する。

 このズチャ湿地帯が、ピッカ草を発見できるポイントであった。

 

 『ピッカ、春先に花を咲かせる多年生の草。冷たい水を好み、渓流などでは一年中見られることもある。新芽は毒消しの材料になるが、葉も毒消しの効果を持っている。ただし、育った葉はとても臭く苦い、嗅いだ魔物が気絶したという逸話が残っているほどである。緊急時にはきれいな葉一枚をすり潰して服用する。茎は柔らかいものを切ってアク抜きし、山菜として食用にする地域がある。薬用、食用。』


 神々の耳飾りの情報では匂いがヤバイらしい。

 映像では低木のような緑鮮やかな植物のようだが、葉っぱはスペードのかたちをしていた。

 葉っぱのかたちだけで言えば、ドクダミかな。

 あの独特で強烈な匂いは庭の草取りで散々嗅いでいたが、忍は苦手だった。

 上流に進むとチラホラと湖が見え、ぬかるみに木の橋や歩道が設置されている一帯にたどり着いた。どうやらここがズチャ湿地帯のようだ。


 「千影、頼む。」


 『探します。』


 千影が上空から薬草を探す。今日は控えめに烏を三十羽ほどにとどめた。

 すぐに何箇所かの群生地が見つかる、その間に忍は白雷に手綱を取り付けていた。


 『忍、乗る。』


 「よし、ゆっくり飛んでくれ。」


 白雷は三メートルほどの大きさになり、忍は上にまたがった。

 そのままゆっくりと忍たちは湿地帯を進んでいく。


 「イルカに乗った少年、ならぬ、クジラに乗ったおっさん。」


 だめだ、悲しくなってきた。

 忍は白雷がとてもゆっくり飛んでくれているため、幼き日の動物園のポニー乗馬を思い出した。

 数年後、ニ回目にいったときは体重的にポニーが可愛そうだと諦めたのだった、そういう意味ではこの歳になってリベンジを果たしたことになるのだろうか。


 『忍、重くない、白雷、平気。』


 「……白雷はいい子だな。疲れたらいつでも言ってくれ。」


 意識を読まれた上に慰められて不覚にも涙ぐんでしまった。意思疎通の精度をもっと高めねばならない。


 千影の見つけた群生ポイントに来るとすでに新芽は収穫された後だった。


 「他にも来ている冒険者がいるのか?」


 『はい、三組ほど上空から確認しました。入り口からも一組入ってきましたね。』


 なるほど、有名ポイントは競争率も激しい。


 「もう少し奥の方で探そう。白雷に乗っていけば歩いて入れないような群生地も回れるはずだ。」


 『仰せのままに。』


 「プオオォォ……。」


 かくして忍たちは上流、湿地の奥を目指すのだった。


 「これは正解かな。手つかずのピッカの茂みがかなりある。」


 バッグから大きめの麻袋を取り出して新芽を摘み取っていく。

 小さい新芽は見逃しつつ茂みを回るが、ほどなくして麻袋は一杯になった。

 この大きめの麻袋はスーパーの大きめのポリ袋くらいは入るのだが、現在はなんとなく苦そうな匂いの新芽でいっぱいである。

 そういえば葉っぱはものすごい匂いだというが、どの程度のものなのだろうか。


 「ちょっと試してみるか、白雷。」


 手近な茂みの足元を確認して白雷におろしてもらう。

 ピッカ草の下の方でしっかりした葉っぱをちぎろうとするが、なかなかちぎれない。

 ピッカ草の葉はちぎれないビニールのような伸びる粘り強さがあり、忍が体重をかけて引っ張るとようやっとブチッという音とともにちぎれた。

 葉先を少しちぎっただけだが新芽のにがそうな匂いを強烈にしたような匂いに加えて、嗅いでしまった鼻がピリピリとしはじめる。なるほど、強烈な匂いだ。


 「プオオオォォォ!!!!」


 白雷がすごい勢いで上空に飛んでいった。

 これでは魔物は近づけないのだろう。

 ところで、私はどうやってこの茂みから動けばいいのだろうか。


 「白雷!もどってこれる?!」


 「プオオオォォォ!!!!」


 『かなり嫌がっていますね。少し匂いが薄れるまで駄目かもしれません。』

 

 「……しょうがない。我慢しよう。」


 茂みの位置が湿地に囲まれていたこともあり、忍は寒い中しばらく待つことになった。

 風は寒く、気温も寒く、水も冷たく、刺激臭がヤバイ。

 かなりの時間、白雷は忍に近づけなかった。


 白雷が忍を助け出したのは昼頃であったが、匂いが残っているらしくずっと嫌がっている。

 仕方なく忍は大鍋で湯を沸かし、自分と白雷を拭いていた。


 「少しはマシになったか。白雷、どうだ?」


 『我慢、できる。』


 白雷にはまだ匂いがしているらしい。

 しかしこの新芽、余分に取っておきたい。

 もし何かの拍子に毒消しが必要になった時、あの葉を服用するなんて絶対嫌だ。


 「偉いぞ。しかし、もう少し新芽がほしいな。千影。」


 『承知しました。』


 いざとなれば売ることもできるだろう、薬草は集めておくに越したことはない。

 千影が集めてくれている間、昼食に久々に竹焼肉を作ってみる。


 「あー、この味だ、が。舌が肥えてしまった。」


 珊瑚の休日亭の料理に慣れた忍の舌では、竹焼肉は食えなくもない食べ物くらいの位置づけになってしまっていた。やはり料理を覚えたい。

 

 『忍様、これでよろしいでしょうか?』


 焼肉を食べ終わる前に千影が新芽の山を作り上げていた。

 この精霊、本当に有能である。


 「千影、ありがとう。仕事が早いな。」


 『お褒めに預かり光栄です。』


 麻袋に詰めていくときっちり二袋分あった。千影、恐ろしい子。


 「午後は時間を白雷に乗る練習に使えそうだな。湿地だけじゃなく周りの森も見て回ってみるか。」


 こうしてクジラに乗ったおっさん一味はズチャ湿地帯物見遊山ツアーに出発するのであった。


 少し上空に浮かび上がると湿地帯の中の冒険者は増えていた。

 大街道はポールマークから宿場町のヘイガン、フリオンを通り、シジミールまで続いていた。

 この湿地帯はポールマークとヘイガンの間にある。

 よってこの湿地帯にはヘイガンの冒険者もピッカ草を取りに来るのである。

 ポールマークの冒険者ギルドではベストやバンダナなど海賊や水夫に近い格好が多かったが、ここでは鎧や武具、マントを羽織った人が多く採集している。

 あれがヘイガンの冒険者なのだろうか。

 忍が飛んでいる湿地の奥は足場が悪いため、誰一人として踏み込んできては居なかった。


 『もう少し取ってきますか?』


 忍の考えに千影が反応する。

 奥の方に新芽を取りに来る冒険者は居ないだろう。


 「麻袋は二つ残ってる、その分は集めてくれ。近くの地面に降りて待ってる。」


 『承知しました。』


 またもや千影は短時間で大量の新芽を集めてきた。

 大体の場所がわかっている採集依頼は千影がいれば怖いものなしだ。


 忍は予定よりも早く採集を切り上げて家路につくのだった。


 冒険者ギルド、相変わらずミネアの受付はガラガラだった。

 忍は迷わずミネアの受付に取ってきた三袋を置く。二袋はすでに指輪の中だ。


 「ピッカ草です。確認をお願いします。」


 「……なに……す…で…。」


 ミネアがなにか話しかけてくれているが、冒険者ギルドは賑わっていた。

 怒鳴り声や笑い声が多すぎて【デリケート】を使えばこっちが参ってしまう。


 「ごめんなさい、聞こえない、です。また、すいている時間にでも。」


 ミネアにだけ聞こえるようにそうささやくと、ミネアはブンブンと頭を下げて、忍に番号札を渡した。

 受付で袋の中のピッカ草をあらためているが量が多いので、正面から見るとミネアがピッカ草に埋もれてしまっている。

 掲示板の依頼などを探しながらしばらく待っているとミネアが受付の中で立て看板を掲げてこちらを見ていた。二番と書いてある、忍の番号だった。


 「お疲れ様です、大丈夫でしたか?」


 忍が声をかけるとミネアは両手で四角を作るジェスチャーをした。


 「……会員証?」


 ミネアがうんうんとうなづく。

 忍はバッグから会員証を取り出してミネアに渡した。

 するとミネアは脇にあるコピー機のような透明な板にそれを置く。

 そして、しばらくしたあと会員証を忍に返した。

 買取金額は三袋で銀貨一五枚だった。

 

 「ありがとうございます、またよろしくおねがいします。」


 忍はミネアに挨拶をして、冒険者ギルドをあとにするのだった。

 

 麻袋の追加を買うため忍はいそいで雑貨屋に向かった。

 時刻は夕方、もう少ししたら珊瑚の休日亭に皆が集まりだすので、閉店ギリギリに滑り込めるかどうかという時間だった。

 雑貨屋の前につくと店は静かだったが、扉には営業中の札がかかっていた。


 「こんばんは、ギリギリの時間にすみません!」


 扉を開けるとニコニコとした奥さんがカウンターに座ったままペコリとお辞儀をする。

 忍はこの奥さんに違和感を感じていた。

 雑貨屋、珊瑚の休日亭、そして今も、奥さんは貼り付けたような笑みを浮かべて一言も発しない。

 ネミルが一生懸命話しかけているときも笑顔も絶やさず、たまにうなづくくらいのものなのだ。

 変な空気が流れる、しかし、下手に事情をつつくわけにもいかない。

 忍は雑貨屋に来た目的を思い出し、奥さんに商品のことを聞いた


 「え、と、大きい麻袋がほしいんですが、ありますか?」


 奥さんは忍の横の棚を指さした。

 大きな麻袋は四枚残っていた、価格は銅貨二枚である。

 

 「在庫ってまだありますか?十枚ほどほしいのですが。」


 奥さんは店の奥に歩いていくと、麻紐で纏められた麻袋を持って出てきた。

 紐をほどくと忍の目の前で一枚一枚脇においていく、ちょうど十枚あった。


 「ありがとうございます、大銅貨二枚でお願いします。」


 カルトンに大銅貨二枚を置くと奥さんはそれを自分の方に引き寄せてペコリとお辞儀をした。

 奥さんは一言も喋らない。

 忍はどこか奇妙なこの女性を警戒しつつ麻袋を持って雑貨屋をあとにするのだった。


 次の日の早朝、やはり冒険者ギルドにはミネアだけがいた。

 同じ依頼を受けて、魔術を使い、少し雑談する。


 「料理、ですか?」


 「そうなんです。珊瑚の休日亭でご飯を食べてしまうと焼いただけの肉とかが物足りなくてですね。」


 忍はミネアにズチャ湿地帯での昼食の話をしていた。

 するとミネアはこの時間帯に冒険者ギルドに一人でいる理由を教えてくれた。


 港では一日に二回、漁から帰ってきた漁師のために炊き出しをするらしい。

 売れなかったりサイズが合わない魚を持ち寄って振る舞うのだ。

 朝はこの時間に、夕方にもう一回やるのだが、料理をする人はボランティアで人手が足りない。

 それに参加すれば料理の練習ができるのではないかと提案してくれた。


 「お金は出ませんが一食浮くので、食い詰めた人が飛び込みで参加することもあります。漁船が停泊してるところに行けば参加できますよ。今朝はもう終わってる頃ですけどね。」


 「なるほど、行ってみます。」


 『忍様、冒険者が来ます。』


 千影の声に魔術を解除して、ミネアにお礼を述べる。

 夕方か、早く帰ってくれば間に合うだろうか。

 採れたての海の幸も楽しみである、機会があれば積極的に参加したい。



 ズチャ湿地帯の奥まった場所で、忍はピッカ草の新芽を摘んでいた。


 「すごいな。残した芽は一晩で大きくなってるし、摘んだところからはふたまたで脇芽が出てきてる。」


 冬場によく成長する事は知っていても、スピードが尋常ではない。

 毎日十袋いっぱいまで収穫したとしても大丈夫なんじゃなかろうか。


 「プオォ。」


 白雷は葉っぱの匂いがトラウマらしく少しでも葉っぱが傷ついていそうな茂みに近づかなかった。

 行けと命令したら近づくのだろうが、緊急時でもないし無理強いは良くない。

 千影の烏も動員し、ほどなくして麻袋に五つほどの新芽が集まった。


 「流石に不自然だな。」


 ミネアの話によるとピッカ草は冒険者同士の競合もあるので新人だと一日で麻袋半分も取れればいい方、上手な人でも二袋くらいが限界のことが多いのだとか。

 歩いて入れない茂みを狙っているとはいえ、五袋はやりすぎか。

 しかもまだ昼前である、帰るにしても時間が早すぎた。


 「まあ、街に入らなければいいか。」


 忍は街道沿いをゆっくり散歩することにした、草花や木を調べてみたり、素振りやダッシュなど町中でやれていなかった動きを確認した。

 昼頃、汗をかいたので忍は街道から外れた木陰で鍋を用意し、体を拭こうとしていた。

 忍はギルドに水の魔法しか登録しなかったので、火の魔法を使うのは見られてはならない。奥の手だし。

 よって、忍はこの世界で初めて、魔法無しでの焚き火に挑戦することにした。


 『忍様、わざわざ街道から離れてまで隠さなくてもいいのでは?』


 「千影、奥の手とした以上は隠しておくものなのだ。」


 【ウォーターガッシュ】で鍋に水をためる。

 土を少々掘って、そこらの木をフェザースティックにし、鍋の下に設置する。

 火をつけるための道具はこの世界にも存在する、火口箱のような着火セットも売っている。底なしの指輪の野営道具にも古いものが入っていたが、忍はやったことがなかった。

 いま、はじめての火打ち石での着火。


 「不発!」


 ヤバイ、うろ覚えだがこれであっているのだろうか。

 火口箱は金属製で本体も蓋もそれなりの重さがある、ハガキを縦に細くしたような大きさだった。

 中には、綿というか繊維のようなもの、親指ほどの尖った小石、ぐにゃりと曲がった金属、真っ直ぐで文鎮のような金属、の四つが入っている。


 そしてここで忍の脳裏にアレの存在が思い浮かんだ。おもむろに神々の耳飾りから視聴しはじめる。

 



 『ジャスティとっ!』

 『グレーシアの~!』

 『『フォレストレンジャー式っ、はじめてのサバイバル指南~!!!』』


 オープニングのタイトルコール、軽快な音楽とともに動画資料が再生される。

 テンションが高い。


 『ジャスティ、大変!こんなに寒いのに火がつかないの~!』


 『はっはっは、大丈夫だグレーシア!俺の筋肉に任せておけっ!』


 筋肉関係あるのだろうか。あと背景が完全に吹雪だ。

 今回は娯楽目的ではないのでさっさと飛ばして必要なところを見る。


 『ジャスティ、この棒が余っちゃったわ~。』


 『風が強いときに繊維を押さえるのに使うぞっ!普段は重めの木の枝でも大丈夫だっ!!』


 「なるほど、この文鎮みたいなやつ、繊維を押さえるのか。よくできてる。」


 火口箱のセット内容にも種類があるようだが、包括的に丁寧に解説してくれていた。

 まあ、関係ないところは早送りして飛ばしていくのだが。


 『火打金にも種類があるぞ!こいつはこう、こいつはこう持つんだっ!そして石の角をこするように叩けばっ!火花が飛ぶっ!』


 ガチン、という音とともに見事に火花が散った。

 感嘆の声があがり字幕とともにグレーシアの驚いた顔のアップが映る。


 『枯れ枝や枯れ葉を山形に組むのだ!この真ん中に繊維をおいて火花を当てると!!』


 『わぁお、火がついたわ!あったか~い!』


 「よし、やってみよう。」


 数十回のチャレンジで無事に火はついたのだが、狙ったところに火花を散らすのが難しかった。

 そういえば街についたらこの資料おすすめの道具を揃えようとしていたのだった。

 やはりきちんと揃えて魔法なしでも快適な野営をできるようになろう。



 昼過ぎ、白雷に乗った忍はポールマーク周辺の村を見つけていた。

 村に入っていくのではなく白雷に乗ったまま遠目に様子を見るだけだったが。


 「ポールマークに来たときにいくつか見つけたけど、こっち側にもいくつかあるなぁ。」


 今回の村は畑らしきものと三十件くらいの家屋の集まりで、周りは森や茂みに囲まれている。

 大街道から伸びる脇道は二つの森を通って村まで続いていた。


 「ポールマークから行くなら三時間くらいか?」


 まあ、見た所何もない村なので行くこともないのだろうが。

 ちなみに現在の忍は観覧車の天辺くらいの位置でそれらを見下ろしていた。

 従魔車用の長い手綱を腰に巻いて結び、普通の手綱を持てば馬くらいのスピードの白雷に乗っていられるということに気づいたからだ。

 それ以上に早いと目を開けていられないので白雷に必死でしがみつく羽目になるのだが、大幅に移動距離の選択肢が増えたのは嬉しい発見だった。

 現在はどのくらいの高度まで忍が耐えられるのかを実験していた。


 「下を見ると一気に怖くなる、こんな高さは必要ない、しかし、実験はしておかないと。」


 忍は問題が起きた際、事前準備でできることを増やしてすべてをなんとかするタイプだ。アドリブは得意ではない。

 よって忍にはこういう実験が必要不可欠であった。


 「彼を知り、己を知れば、百戦危うからず……。」


 自分のできることを知っておく、これが忍のやり方である。

 でも、怖いからそろそろ降りたい。


 「プオォ。」


 「まって!ゆっくり!!ゆっくり!!!!ノオォォ!!!!!」


 意識に反応した白雷が急降下をして、忍の心臓が口から飛び出そうになった。


 「はー、はー、死ぬかと。ヤバイ、動悸、ヤバイ。」


 『忍、ごめん。』


 「い、や、大丈夫、ん?」


 叫びが通じて白雷の降下速度がゆっくりになり、周りを見る余裕ができた。

 忍が発見したのは、森から走り出してくる人影であった。

 脇道の森、三人の人間、追っているのは。


 「デカいイノシシだ!白雷、あそこおおぉっ!!?」


 話すより意識が伝わるのが早かった、急いで忍は手綱を握りしめ、高速で飛ぶ白雷の背中に顔を埋める。


 「プオオオォォォ!!!」


 雄叫びを聞いた直後に衝撃が走った。

 白雷は自慢の角でイノシシの土手っ腹に体当たりをしたらしい。

 角はイノシシに深々と刺さったが、同時に動きも制限されたようだ。

 暴れているのは白雷かイノシシか、体がブンブンと縦横無尽に振り回された。


 「小さくなれ!角も抜けるはずだ!」


 白雷はぬいぐるみほどのサイズに小さくなった。

 手綱が白雷の頭から外れ、忍はドテッとその場に落ちる。


 特大サイズのイノシシは見事に仕留められていた、白雷は自慢げだが、角が血まみれでちょっと怖かった。

 立ち上がろうとしたところ、腰に痛みが走った。

 手綱を巻いていたところだ、感じていたよりも衝撃が強かったのだろう。

 動けない状態で、遠巻きに唖然としていた人たちに声をかける。


 「大丈夫、ですかあ゛っ?!」


 腰がピキッと鳴った。

 その場にポテッと倒れた忍は助けた三人に大いに心配されることになったのだった。

 

 「助けてくれて感謝する。まあその、大振りな体だからな、無理するなよ。」


 「ははは、すみません。あ、私は置いてって大丈夫なんで、この子もいますし。」


 太っているというのを遠回しに言う時、人はなぜこんなにバツの悪そうな空気を発するのだろうか。 忍は心配そうに覗き込んでくる白雷を撫でて男にそう返した。

 話しかけてきたのは忍とは別の意味で大柄な男性だった、背中には両手剣を背負っている、黒髪の角刈りで無骨、筋肉質の引き締まった体が防具を内側から圧迫していた、まさに戦士っぽい人だ。


 「商人の護衛だから放置して追いつけば失敗にならない。お言葉に甘えない?」


 緑の髪が少しだけ覗いているが、フードを目深に被った女性がそう言った。

 周りを警戒しながら木にもたれかかっている。

 服装は分からないがマントの中では武器に手がかかっていそうな格好だ、おそらくナイフのような小さな武器を使うのだろう。パーティバランス的には盗賊かもしれない。


 「ごめんなさい、あいつ容赦なさすぎるんで。でも、違約金払えなきゃうちらもやばいよね?」


 そう言ったのは軽装に細身の剣を携えた小柄な女性だった。

 赤のポニーテールがよく似合っている、喋り方からは快活そうな印象が見て取れた。

 違約金か、そういえばミネアに注意を受けたな。

 言うが早いかポニーテールの女性は街道を歩き出そうとしていた。


 「追いつけるなら行ってください。あ、イノシシってもしかして普通に倒せました?余計なことしましたかね。」


 「いや、ヒルボアは我々だけでは無理だったろう。感謝する。俺はボーガン、ポールマークで冒険者をやっている。また会うことがあれば一杯奢らせてくれ。」


 ボーガンはそう言ってくれたが、女性陣二人は街道の先を急いでいた。

 慌ててそれを追っていく背中が見えなくなってから、忍は腰に【ヒール】をかける。


 「お、おおぉ。あったか。」


 光がおさまった時、忍の腰はすっかり完治していた。


 「さすが。これぞファンタジーの魔法!」


 誰も居ない街道の片隅で、異世界モノらしい展開に感動する。

 しかし、あの女性陣、たくましいな。

 回復した忍は一休みして、ヒルボアなる魔物の解体にかかった。


 ヒルボアは中型の中でも最大級の魔物で大きければ八メートル、平均的なもので四メートルほどである。

 土をほって休む習性を持っており、その背中が小さな丘のように見えるためヒルボアという名前のようだ。

 ヒルボアは厚い脂肪の層を持っており、刃が通りづらい。

 また休んでいるヒルボアは土色の毛皮が保護色のような働きをして、間違って踏んでしまうと怒って襲ってくるらしかった。


 「誰かが森の中で気づかずに踏んづけたのか?これで死んでしまったら目も当てられないな。」


 土を食べるので山でも森でも平地でも出る、内蔵は食べられないが、肉は癖が少なく美味らしい。


 「魔石と毛皮を回収したら保存。豚肉っぽいといいな。あ、白雷、私が乗っているときに体当たりは禁止。」


 こうして忍は久々の獲物を解体するのであった。


 魔石とは、魔物にとっての心臓である。

 解体したヒルボアの魔石は白雷の一撃で粉々に砕け散っていた。

 レッサーフェンリルの魔石もそうだったが、魔石は砕けてそのまましばらく経つと空気に溶けるように消えてしまう。

 

 忍はヒルボアの皮を丸めて白雷に乗り、少し遠回りでポールマークに帰った。

 その足で冒険者ギルドに行くと、例の三人が忍を待っていた。

 どうやら商人に追いついて依頼も達成したらしい。


 「護衛で一週間ほど留守にしていたのできみを知らなかった。改めて礼を言う。私はボーガン、マントのほうがウィン、赤髪がアンリ、パーティで冒険者をやっている。夕食はどうかな?」


 「ありがとう、おかげで借金せずに済んだわ。っていうかそんなに大荷物だったっけ?」


 「助けてもらったのに、変な言い方して悪かった。腰、大丈夫?」


 「いえいえ、あらためまして忍といいます。夕食のお誘いは喜んで。でも、あれは反射的にやってしまったところがあったので、あまり気にしないでください。腰もなんとか、ちょっと時間ください売ってきちゃうので。」


 今日の成果は白雷に縛り付けたヒルボアの皮と麻袋五つ分のピッカ草である。

 ミネアに預けてボーガンたちのところに戻ってしばし雑談をする。

 ボーガンたちは商人の護衛を中心に請け負っている、パーティの名前はなく、実はアンリがリーダーらしい。

 今回はヒルボアを踏んづけた商人の従魔車を逃して囮になろうとした所、予想以上にヒルボアの足が早く追いつかれそうになっていたらしい。


 「それってちゃんと護衛してるように聞こえますけど、依頼失敗になるんですか?」


 「護衛した商人がすごい文句つけてきた。失敗扱いにされそうだった。もうあいつのは受けない。」


 ウィンが沈んだ雰囲気でそう話した、気が立っていたのかもしれない。

 そこまで話を聞いたところでミネアが番号札のボードを出した。

 

 会員証を手元に出していたので手続きはスムーズだった。

 大銀貨六枚とのことだが、つまりヒルボアの毛皮は銀貨三五枚相当で売れたということだ。

 ミネアが自分の手に書いた文字を見せてくれた。

 穴が大きいため。とある。


 「穴がなかったらもっと高いってことですか?」


 ミネアはこくこくとうなづいた。


 「わかりました、ありがとうございます。」


 なんだろう、余計な詮索もされないし、ミネアの受付はすごく楽なことに気づいた。

 ちょっとしたシンデレラフィットの発見に忍は嬉しくなった。


 ボーガンたちと合流するとものすごい勢いで何を売ったのか聞かれた。

 どうやら商人の護衛は大銀貨五枚で実働五日だったらしい、もちろんパーティで頭割りである。

 冒険者家業も楽ではないということだ、忍は召喚されたことで一足飛びに強くなったので、やはりちょっと後ろめたいのだった。

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