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貴族と海軍と冒険者とギルドと街

忍が目を覚ますまでに最後までついてきたカログリアたちは忍預りとなり、生存者とともに避難キャンプで生活することとなった。

 避難民は散り散りに逃げ出したようで行方のわからないものも多く、住民にもかなり被害が出たことで生き残った子どもが何人も孤児となった。

 狂血病の発生元であるエミリーはモザイク必須の死体に、ニカの誘拐犯は全滅で情報なし。


 報告を上げて数日後には忍は全員を連れてギルド倉庫に来るように呼び出しを受けた。

 倉庫につくとティーセットが用意されておりポンシャスと知らない女が二人ほど優雅なティータイムを楽しんでいた。

 カジャとエレインとガルガドランは怖い顔で話し込んでいる。


 「お待たせして申し訳ありません。」


 「よく来たね、坊っちゃんは遅れてないよ。まだ来てないのがいるからゆっくりしててくれ。」


 エレインは会釈をしてくれた、とりあえずは元気そうだ。

 ガルガドランは焔羅にウィンクをしたが焔羅は舌打ちをした。


 「お頭、あれがガルガドラン。」


 焔羅の耳打ちに忍は平静を装うが、成り行き上冒険者相手だとどうしても身構えてしまう。

 ウィンクする筋骨隆々の厳つい髭面……オネェ言葉で喋りだしたりしないことを願おう。


 「チッ、平民め、せっかくの紅茶が不味くなる……」


 唐突にテーブルの周りに【エアスクリーン】が張られた、反応したネイルが構えを取ってしまう。

 その姿に呟いた方の女が顔を歪めた、シーラがネイルを制して腕輪で念話を飛ばしてくる。


 『ご主人様、ポンシャス様のテーブルのお二人は海軍の貴族ですウオ。どちらも貴族らしい方だと聞いておりますウオ。』


 『貴族らしい、か。頭に入れとく。』


 ポンシャスには挨拶をする気だったのだが、あの様子では近づくだけでも攻撃されそうだ。

 もう一人の方は優雅にお茶をすすっているがあれはどちらかというと話しかけてくるなオーラをまとっている感じだろう。

 貴族というものはこんな埃っぽい倉庫でも紅茶が手放せないものなのだろうかとどうでもいい疑問について考えていると倉庫の扉が開く。


 「よかった、忍さん!」


 「忍の旦那?」


 入ってきたのはハコフグ顔の行商人のカナルと豚耳奴隷のカログリアだった。


 「揃ったね……坊っちゃん、お貴族様に声かけてくれよ。」


 「なんで?!」


 「馬鹿!あんたが関わってるって聞いた途端にダンボ様じゃなくてポンシャス様が来るって事になったんだよ!ただでさえギルドは肩身が狭いってのに!」


 「いやいや、カジャさんがギルドマスターでしょうが!私には特に立場もありませんしいきなり振られても無理ですよ!」


 「……主殿、カジャ殿【エアスクリーン】ですよ?」


 「「あっ。」」


 二人がほとんど同じ動きで恐る恐るポンシャスたちの方を振り返るとテキパキと紅茶を片付けている無口貴族と今にも噛みついてきそうな激怒貴族がいた。

 ポンシャスはいつもどおりの無表情だ、心做しか忍の方を見ている気がする。


 「失礼いたしました。お久しぶりですポンシャス様。」


 「お久しぶりね、かしこまらないでいいのよ。」


 「突然いらっしゃることになったとお聞きしましたが……。」


 「ダンボだと突っかかって話にならないでしょう。終戦した途端これなのだから貴族としても黙っていられないわ。顔合わせもしておいたほうがいいでしょうし。」


 「顔合わせ、ですか?」


 「こちら、シェラミア・チェダーよ。新しいギルドマスターになるわ。」


 ポンシャスが話を振ったのは激怒貴族の方だ。

 顔には出ているものの言葉は飲み込んで、シェラミアはやり慣れているであろう貴族の礼をする。


 「ご紹介に預かりましたチェダー家の六女、シェラミア・チェダーですわ。海軍より暫くの間ギルドマスターとして出向させていただきます。」


 「冒険者の忍です。よろしくお願いいたします。」


 忍は叫びだしたい衝動を必死で抑えた。

 国と冒険者ギルドって別枠じゃないといけないんじゃなかったか、カジャはどうなる、上に貴族が入るってことはギルド自体もどうなっていくか怪しいものだ。

 冷や汗が止まらない、というかなんであのババア半笑いなんだ。


 「海軍は海に出ていたのでどうにもできなかったのだけれど、国としてはこのように好き勝手をされては立つ瀬がないの。証言次第では冒険者ギルドを含めた各所に相応の責任を取ってもらうことになるわ。」


 「肝に銘じます。」


 ポンシャスが話は終わりだというようにスッと下がっていった、無口貴族が懐から取り出した紙を開いて読み上げる。


 「それではこれより事情聴取をはじめる。聞かれたものは前に出て質問に嘘偽りなく答えよ。焔羅、前へ。」


 呼ばれたのが焔羅だったことに忍は驚いた。

 人の基準の犯罪を一番やらかしそうな人選に冷や汗が滝になる。


 「焔羅、街で人の首を切って回ったというのは本当か?」


 「ああ、本当だ。」


 「見つけた奇妙な死体を報告したとあるが、何が奇妙だった?」


 「首が無事なのに胸当てが剥がされて綺麗に心臓が抜かれてた。あの獣じみた奴らにそんなこと出来るはずがねえ。」


 「一人で行動していたな、お前が殺したんじゃないか?」


 「やってねえ。」


 「鋭利な刃物を持っていたな、それで抉り出したんじゃないか?」


 「やってねえ。」


 焔羅は涼しい顔で応対しているが無口貴族は何度も違う角度で同じような質問をした。

 殺人犯と決めつけているような対応だ。


 「人の首を落とす技はどう身につけた?」


 「あ?関係あんのか?」


 「答えよ。」


 「……師匠に習った。」


 「その技がガスト王国特有のものとは知っていたか?」


 「……知らねえ。」


 スパイの工作による殺人を疑っているらしい、無口貴族の口ぶりだとどこかから漏れたというより戦い方で疑われたようだ。

 そう考えると死んでいた冒険者は貴族崩れか有名人かといったところだろうか、殺し方が違うのに焔羅がこんなに責められてるのは気になる。

 口を挟んでいいものか悩んでいると一旦話が終わり、山吹の番になった。


 「酔狂のエイミーを殺した理由は?」


 「ファロを力付くでも連れて行くと挑んできたゆえ、戦ったまで。」


 山吹とネイルの事情聴取は事実確認と当時の様子ばかりだった。

 鬼謀とシーラは狂血病の治療について聞かれ、ファロは狂血病が進行した状態で唯一生き残ったということで色々と質問されていた。

 暴れたことは本当に覚えていないようだったので、病気が進行して魔物として生き残ったということにした。

 忍が色々とやったことは言っていないが嘘はついていない。


 「ガルガドラン、焔羅は狂血病患者以外を殺している様子はあったか?」


 「見てはいねえ。」


 「焔羅の流派はガスト王国の暗殺者と……」


 「同じだ、間違いねえ。ただそれだけだって言ったろ?スパイでも無実でも正面から聞いたって…」


 「聞かれたことにだけ答えよ。」 


 どこからスパイの話が出たかわかったがガルガドランは不満げだ、言いたいこともわかる。

 話はニカの誘拐の方に移った、ニカもさらわれていただけなので特に有益な情報は持っていない。

 無口貴族は忍に対してもあたりが強かった。


 「貴様とガスト王国との関係は?」


 「特に思い当たりません。」


 「焔羅は奴隷と聞いたが?」


 「そうです。しかし彼女と出会ったのはマクロムですし、契約書もマクロムのものです。」


 なんとか失言を引き出そうとしているのか忍への問答も長い。

 忍はだんだんイライラしてきた、これは取調室の常套手段、犯人への揺さぶりというやつだ。我慢我慢。

 耐えているとやっと話題が変わった、マルクの船に関してだ。


 「どうやってあの船……エターナルメロウを沈めた?」


 「えー、船首像に魔石というか核らしきものがあったので破壊しました。」


 「どうやって?」


 「どうやって……?」


 「あの船は精霊結界と魔物避けの効果を持ち、あの船首像は魔術を含む攻撃にびくともしない耐久性があるはずだ。もう一度聞く、どうやってあの船を壊した?」


 「あー……。」


 忍はこんな形でソウルハーヴェストのことをツッコまれるとは想定していなかったので言い淀んでしまう。


 「手持ちのアーティファクトで破壊しました。」


 「後ろ暗いことがなければはっきりと話せるはずだが?」


 「よく知らない人の前で手の内を明かすというのは洒落になりません。破壊できるアーティファクトを持っているとだけ。」


 「貴方!調子に乗らないほうがいいですわよ!ここで拒否すれば困るのは冒険者ギルドですわ!」


 シェラミアが割り込んできて声を荒げた。

 割り込んで良かったなら割り込みたいところがいっぱいあったのだが、まあいい。


 「え、そうなんですか?」


 「何をとぼけてますの!今回の落ち度はすべて冒険者ギルドにあるんですのよ!」


 海軍に落ち度がない、この認識は正さねばならない。


 「海軍にも落ち度はありますよ。戦時中なのになぜニカを誘拐した船を出港させたんですか?」


 「戦争は終わってますわ!」


 「ニカを乗せた船はその知らせが入る前に出港してましたよ。海軍は船の荷物をあらためていたはずですよね?」


 シェラミアの顔色が変わる、無口貴族も舌打ちをしたのが聞こえた。

 冒険者ギルドに全責任を負わせる気でいたのに厄介なことになったという空気だ。


 「それについては知らせを聞いて警戒が解かれたあとに出港したとなっている。海軍に責任はない。」


 「そんなわけ無いでしょう。…貴方のお名前をいただいても?」


 「関係ないだろう。」


 「マルクはペリカという軍人に賄賂を渡して見逃してもらったと言ってたんですけど、まさかペリカさんとかいいませんよね?」


 黙ってしまった無口貴族、名乗らないから妙に感じていたがまさかまさかの大当たりか。

 ポンシャスが忍に質問する。


 「たしかにこの子はペリカだけれど、なにかもう少し証拠はないのかしら。貴方が嘘を言うとは思わないけれどマルクという冒険者がデタラメを言ったかもしれないし、問題として取り上げるにはまだ不十分よ。」


 「ニカを狙った理由を吐かせたついでに聞いた話ですので、それに組織に属すると個人の意にそぐわないことをしなければならないこともあるでしょう。」


 守銭奴のマルクは金を稼ぐためなら手段を選ばなかったが、金を溜め込むだけではなく使うのも上手かった。

 袖の下の内容は金に限らず金に変えられるものはなんでも使った、奴隷もその一つだ。

 特に労働力を必要とするような大型船などを所有している者には、操船を補助できる人員は大人気だったようだ。


 無口貴族ことペリカはこちらを睨みつけているが海軍で袖の下を受け取っていたのはこいつだけではない。

 それどころか混乱したマルクはなんとか生き残ろうと海軍の有力者だけではなくいかに自分が有用か、自分を殺したらどんな不利益があるか事細かに説明していた。

 後ろ盾の貴族の名前もいくつか口走っていたが、残念ながら一度殺すと決めてしまった忍には全く効果がなかった。


 「話がそれましたが、私は犯人とつながっていたかもしれない海軍に手の内を明かすのは抵抗があります。それこそ、船を壊した方法が事件となんの関係があるんでしょう。焔羅のことも技の流派だけで犯人扱いなのは納得がいきません。」


 マントの端を引っ張られる、後ろには焔羅がいた。


 「やめてくれ。お頭の立場が悪くなっちまう。」


 忍は目をつぶって深呼吸をする。

 ゆっくりとポンシャスに向き直り頭を下げた。


 「……失礼いたしました。熱くなりすぎたようです。」


 勢いに任せてぶちまけてしまうのもいいかと考えていたがこの場では匂わせる程度に留めたほうがいいだろうと自分に言い訳をしておく。


 海軍も冒険者ギルドも正直どっちもどっちだ。

 ポンシャスとカジャは忍と個人的に仲が良くても組織の代表としてこの場にいる以上は組織として判断するだろうし、忍は自分たちの保身に徹しないといけない。

 貴族に歯向かった時点で怪しいものではあるが、幸か不幸かミスフォーチュンは全員揃っている。


 「この場はあくまで事情を聞く場、公式の場でもないの。発言で立場が悪くなることはないわ。……ただ、どうしてそこまで確信しているのかは教えてもらえるかしら?」


 「ポンシャス様、どうせ仲間を庇っているだけです。大した理由などあろうはずがありません。」


 さっきまで黙り込んでいたペリカがここぞとばかりにこちらを煽ってくる。

 平民は黙っていろオーラによる威圧も怒りゲージの溜まった忍には燃料にしかならない。


 「根拠は殺し方が回りくどいものであること、殺し方の違いを報告したことです。更にその場で妙な男と交戦したと聞いています。狂血病によって戦場になった街で味方のはずである冒険者を攻撃する者がいるなら、そちらが犯人というのが自然なのではないでしょうか。」


 「どこが根拠だ!この焔羅は人の首を切って回っていた!殺しを楽しんでいたかもしれないだろう!」


 「最初から楽しんでいたなら手段は変わらず首を切り飛ばしたはずです、いきなり殺し方が変わるのは変でしょう。街中に死体が転がっているのだからわざわざ報告して発覚させる必要もないです。」


 ペリカは認めたくないのだろう、必死であらを探しているようだがそもそもが無理筋なので逆転のしようがない。

 推理物にも手を出しておいてよかった、ヅラの刑事みたいな穴だらけの言いがかりだったが。

 シェラミアはおろおろするばかりだったがポンシャスとカジャ、エレインの三人は納得したようだった。

 最終的にポンシャスに促され、ペリカは仕事を続ける。

 カログリアも緊張しながらも無事に話し終わり、忍の中で一番謎の人物が話す番になった。


 「カナル、前へ。」


 「カナルと申します。何なりとお聞きください。」


 一礼をしたカナルだがシェラミアとペリカの雰囲気がずいぶんとやわらかい。

 どうやら知り合いのようだ。


 「従魔車についての話を。」


 「はい。たまたま外に出ていたところで狂血病患者に誰かが襲われており、咄嗟に近くにあった従魔車に隠れました。従魔車はそれはもうひどい匂いだったのですが、奴らは遠巻きに眺めているだけで襲っては来ませんでした。そのまま睨み合っているところをエレイン殿に助けていただいた次第です。」


 「その従魔車はどこにあった?」


 「衛視の詰め所に繋がれておりました。胴体のところに珍しい紋の旗がついており……」


 狂血病患者の対策がされた従魔車であれば敵の持ち物の可能性があるという話らしい、カナルは紙を取り出してその紋章を書き写したものを皆に見せた。


 丸で囲われた中に天の文字。


 忍は瞬時に理解した。


 「ごめんなさい、うちの従魔車です。その匂い、ピッカ草じゃないかと。」


 ここでさらに疑惑が濃くなってはたまらない。

 忍は必死で従魔車がそこにあった理由を探し、たまたま山吹が忘れていったことを思い出して事なきを得たのだった。




 従魔車の件で擦った揉んだをしているうちにファロの調子が悪くなった。

 まだ病み上がりということで一通りの情報を共有したこともあり、一度解散することになった。

 もっとも送ったあとで顔を出せと忍はカジャに呼び出されているのだが。


 ファロは日光にあたっても皮膚が焼けたりはしないものの、昼間は力が抜けるとのことでだるそうにしていた。

 一日経過観察した限りでは日が落ちはじめたくらいで調子が良くなり魔力が増えていることがわかった。

 その魔力は夜中には数倍ほどに膨れ上がる、それが夜明けあたりにまた減少して昼間の状態に戻るのだ。

 もともと魔力をほとんど持っていなかったので特に不自由はないようだが、体調の上下だけはいかんともしがたいようだ。


 【悪夢の病】もファロで実験してみた、どうやら呪病をうつさなくすることも出来るようで使ったあとに試しに噛んでもらったが忍にはうつらなかった。

 【生育】をしているせいかここ数日は血を吸いたくなるわけでもなく、ファロの魔力が関係しているのは明らかだった。

 心配していた体の腐敗や記憶の欠落なども今のところはない。


 『呼ばれたのに何も聞かれなかったのー。あの草の匂いがしたのー。もう嫌なのー。』


 『良く我慢してくれたな。ブラシかけような。』


 ファロを背中に乗せた白雷に文句を言われて我に返る。

 呼び出されてくさい倉庫に行ったのに何も聞かれず帰るのは白雷にとっては退屈極まりないことだろう。

 白雷だけではない、それぞれが微妙に元気がないのだ。

 ニカは誘拐されたことでへこんでいたし、シーラは忍を殴ったあとなんだか他人行儀になった。

 鬼謀は狂血病を見抜けずにファロの治療が遅れてしまったことを悔やんでいるし、ネイルは知り合いが死んだことがだいぶこたえたようで毎朝フォールンに祈っている。

 山吹などは忍のわたしたアクセサリーを壊してしまったことを土下座して詫び、気にするなというのにしばらく正座をしていた。


 中でもひどいのは焔羅だ。

 焔羅は表面上は変わらないものの、よくストレッチをするようになった。

 髪の毛をくるくるといじる頻度と忍のことを気遣う発言が増え、からかうような発言はほとんどなくなった。

 余裕がないと地が出る、焔羅が地を出すほど動揺しているということはかなり追い詰められている証だろう。

 からかわれないのは楽だが、今度はその姿が忍の心を抉る。

 時薬、人薬、耐えて待つこと、とかくこの世は生きにくいとは誰の言葉だっただろうか。

 

 「旦那様、もう元に戻ってもいい?」


 「拠点につくまでは我慢してくれ。」


 「え、まさか旦那様も具合悪いの?!」


 鬼謀が声を上げたことで一斉にみんなこっちを向いた、ドキッとしたがそれもそのはずで忍はすでに拠点まで帰ってきていた。

 周りが見えないほど思考に没頭していたらしい。


 「すまない、考え事をしてただけだ。……決めた。今夜は風呂も食事も豪華にいくぞ!」


 「あっ?!旦那様ちょっと!ギルドは?!」


 ガス抜きに気を取られてすっかり忘れていたがカジャに呼び出しを受けていたのだった。

 わざわざ別で呼び出されているあたり気が重い。


 「……お頭、俺、バンバンに呼ばれてっからついてくぜ。帰りに寄ってくれよ。」


 「うん。あー、いつになったら落ち着けるんだ。」


 「もう少しだろ。こっちもお頭が一緒じゃねえと……赫狼牙のことだからよ。」


 そうだった。

 大体の話は聞いたがこちらも気が重い、めちゃくちゃ怒鳴られるんだろうな。

 忍は肩を落として焔羅とともに冒険者ギルドにとんぼ返りするのだった。


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