ヘチマたわしとお年頃男子
忍は庭でこっそりと時計を見ながら秒数を数える練習をしていた。
革手袋の内側に魔法陣を仕込み魔力を流すだけで雷を放出するようにしたスタンガン手袋。
シンプルな放電の魔術を魔法陣のみで発動させる構造で、魔力を流してから発動するまで三秒かかるがいくらでも魔力がこめられる。
魔力を込めれば込めただけ放電時間は長く、威力は高くなるようだ。
「いいアイデアだったけど練習が必要だな。」
魔術の発動まで時間は魔力の多寡ではほぼ変わらないようなので助かっている。
時計を見ながら手袋に魔力を流し繰り返し繰り返し練習をする。
この世界の魔術や魔法はよくある異世界転生モノのようにイメージだけで好き勝手に出来るような代物ではないのでこういった積み重ねが大事だ。
効果がはっきりとしている分だけ能力よりもわかりやすいが、柔軟に応用するのが難しいところもある。
雷を出すと雷を飛ばすは別の魔術になってしまうし、それらをいちいち魔法陣や詠唱として書きとめなければつかえないのだ。
「集中が途切れてきたな、アレを進めるか。」
忍は新しい魔術を作り出そうとしていた。
持続時間を長く、噴出する場所を細かく、使う属性は風と火だが条件を増やしていくとどんどん魔法陣が複雑化していく。
しかしこれが完成すれば忍の悩みがまた一つ解消されるのだ。
忍は概要と魔法陣を紙に書き出し、魔法陣を彫りつけた大きめ木の板を用意した。
板をいつも使っている一人用の風呂桶にはめ込んで湯を沸かす。
最初のときは魔術の威力が強すぎてお湯が爆発したように吹っ飛んだ。
そこから威力を弱め、持続時間を伸ばし、少しづつ改良を施していった。
魔力を流すと炭酸のような細かめの泡がぼこぼこしゅわーと風呂の底から上がってくる。
忍が目指したのはジェットバスだった、泡が細かいのと大きいので二種類になるようにするため、魔法陣がより複雑になっている。
これならマッサージ・温浴効果もバッチリ。
お湯が白く見えるということはおそらくマイクロな泡の生成にも成功しているはずだ。
マイクロな泡で石鹸がなくても体の汚れが今以上に落ちるはずである。
温風なので洗濯物を乾かすときや寒い日の暖房にも使えるはずだ。
全てうろ覚えと聞きかじりなのでなんとなく正しいはずである。
「よし、よし、よし!」
いそいで目隠しを立てて風呂に入ってみる。
「あ゛ぁー………」
やばい、これはのぼせる。
体の温まり方が全然違う、長湯をすると湯当たりしてしまいそうだ。
これは疲れたときだけにしたほうがいいかもしれない。
「まあこれも完成でいいかな。本に書き写すとして、名前は何にしよう。」
忍はこの家に住みはじめてからいくつかの魔術を完成させていたが全て名前に悩んでいた。
大技ではなくちょうどいい威力のものや便利使い出来そうな魔術を作った。
参考にしたのは現代知識なのでそのまま名前をつけることも出来るのだが、せっかくなのでこちらの世界の人にもわかり易い名前をつけたい。
「スタンガンとか言っても不思議な顔されるのがオチだし。やっぱり雷神とかかな。タケミカヅチとか稲荷とか。あ、むしろもう片方に風魔術を仕込んで風神雷神がいいかな。」
『忍様。』
「大丈夫。あくまで気絶させるためのものだし、千影の動けない昼間用だ。それに千影ができることもきちんと把握したから、もっと働いてもらうかもね。」
『光栄です。どうぞこの身をお使いください。』
千影は生物の記憶を読み、精神に干渉できる。
それは忍の考えていた内容よりもさらに強い力を持っていた。
気絶させ夢を見せるだけでなく記憶の改竄や消去、特定の感情の増幅、気まぐれで人を壊せる恐ろしい力だった。
もっと働いてもらうとは言ったものの強力すぎてできれば使ってほしくないレベルだ。
記憶の改竄や消去とか、脳みそに悪い影響がありそうでこわい。
「主殿ー、テントと風呂桶が届きましたー。」
「マジで?!」
山吹の声にまどろんでいた意識が一気に覚醒した。
『忍様、影分身をお願いします。』
「よし、まかせた!」
目隠しの幕の中から烏が次々と飛び立ち、山吹の持ってきたテントを組み立てていく。
忍は急いで風呂から上がると山吹と千影を手伝って設置が終わった大きな風呂桶に早速お湯をためた。
「主殿は本当に風呂が好きですね。今まで入ってたのでしょう?」
「それはそれ、これはこれだ。見ろ、この風呂桶なら足を伸ばして入れるぞ。すぐ沸かすからな。」
「久々の大きな風呂、楽しみです。」
「もちろんだ。千影もどうだ?この桶なら四、五人は入れそうだ。」
『では、ご一緒させていただきます。』
もはや風呂のことしか頭にない忍はウキウキのノリノリである。
魔法陣も大きな風呂の方に移動してジェットバスをお披露目する。
「向こうでボコボコ聞こえていたのはこれですか!」
「そうだ、あったまるし肌にもいいんだぞ。みんなにも声かけてくれ。」
「承知しました!あ、風呂桶のおまけにこれを頂きました。」
忍に袋を渡して山吹はニカたちを呼びに行った。
『何でしょうか?』
「ものすごく軽いけどそれなりに大きいな。さて?」
中を確かめると、俗に言うヘチマたわしが二つ入っていた。
忍のテンションが限界突破した。
ヘチマはたわしになる以外に食用としても使える植物だ。
茎を切って出てくる水はヘチマ水と呼ばれ、化粧水や痰切りとして重宝される。
忍としては薬効よりも鍋を洗ったり体を洗ったりするのに重宝するヘチマたわしという存在と、知ってる植物との予期せぬ出会いに嬉しくなったのだ。
後々冷静になってみればそんなにテンションが上がる話でもないのだが、この時の忍は何が起きてもテンションが上ったのではないだろうか。
「ヘ・チ・マ!ヘ・チ・マ!!」
まだ少しぬるいが後は風呂に入りながら沸かせばいいと端っこに置かれた小さなテーブルの上の籠に服を入れ、謎の掛け声を発しながらかけ湯をする。
そして風呂に入ったところで、入口で目が点になっているニカと目が合った。
「……どこから、見てた?」
「ヘ・チ・マ!っていいながら服脱いでるくらいから、かな?」
「……オミグルシイトコロヲオミセシマシタ。」
天原忍、大恥である。
「忍さん、これどうやって使うの?あとこのお湯って入って大丈夫かな・・・?」
「白く見えるがただのお湯だぞ。ほれ。ヘチマたわしは体を洗うんだ。石鹸なしだから少しふやかさないと痛いし、あとでだな。」
「あ、手桶にとると透明になる!面白い!」
風呂の仕組みを少し話してみるが、詳しいことは理解できなかったようだ。
千影はすでに隣を陣取って静かに入っているが、うんともすんとも言わないので言われたから付き合ってくれてるんだろう。
「おお、テントの中は湯気でいっぱいですね。これでは服がしっとりしてしまいそうです。あ、白雷は遠慮するとのことです。」
「わかった。ほらこれヘチマたわしだぞ。」
「ヘ・チ・マ!ヘ・チ・マ!!」
ニカが忍のマネをしてヘチマコールをする。
悪気がないのはわかっているが一瞬固まってしまった。
「きゅ?!きゅー?!」
風呂桶の縁でマントを着たまま鬼謀が鳴き声を上げていた、すごく興奮している。
「鬼謀、どうした?」
『どうしたじゃないよ!なにこれ魔導具?!』
「おちつけ……あっ。」
「きゅ?!」
ぽちゃんと湯船に落ちてバチャバチャしてる。かわいい。
とりあえずすくい上げてマントを外しウサギ専用の壺湯を作ってやる。
『ボコボコしてない。』
「まだこれしか無いんだ、文句言うなら人の姿で入れよ。」
『エッチ。来てあげたんだからいいでしょ。』
「時間ずらしてもいいんだぞ。」
『それはなんか、あれでしょ。』
「みんなだけずるい、か。すまない、作っておくよ。」
言い当てられた鬼謀が壺の湯をこちらにばっちゃばっちゃかけてくる。
落ち着け、壺が小さいから湯が無くなるぞ。
「鬼謀、毛が抜けてますよ。主殿、失礼します。お、おぉー……泡がなんだかむず痒いゆえ、我は苦手かもしれません。」
「この泡がマッサージの効果を生むんだ。」
「えっ、じゃあ私の仕事無くなっちゃう?!」
「いや、ニカのマッサージとはまた別だから。鬼謀の筋肉痛とかは揉むよりこっちのほうがいいかもしれないけどね。」
「きゅ!」
よくわからないが、実家のような安心感に包まれる。
スキップの事件からずっと、みんなそれぞれにちょっとした陰りのようなものがあった。
気にはなっていたが忍にはどうにもできなかった、しかし大きな風呂とヘチマが解決してくれたようだ。
「あ、あのー。失礼します、ウオ。」
「え?!シーラさん?!なんで?!」
「主殿がみんなに声をかけろと言ったのではないですか。それとも仲間はずれですか?」
「い、いやそんなことは。」
「……お邪魔でしたか…ウオ?」
「そんなこと無いです!」
「主殿の許可も頂いたゆえ、早くこちらへ。入口が開いていると寒いです。」
「は、はい!ウオ。」
忍がまごついてる間に山吹はどんどんと話を進めてしまう。
潤んだ瞳でそんな事言われたら男だったら誰でもまごつくはずだ。
その隙に忍はニカに引っ張られた。
「ヘチマ、どう使うか教えてー。」
「ちょ、今?!」
「忍さん、ヘ・チ・マ!」
「わーかった!わかったからそれやめてくれ!」
「ほう、それが、ヘ・チ・マ!ですか。」
やばい、なんか山吹も参加しはじめた。
目が合ってわかってしまった、こいつら確信犯だ。
絶対後で締める。
いつの間にかアイコンタクトとかいう器用なこと覚えおって。
「ニカ、後ろ向いて。」
「え、うん。」
ニカの背中をヘチマたわしでちょっと強めにこすってやる。
「あだだだだっ。」
「新品は固いからな。こうやって体を擦って洗うんだ。」
ちょっと赤くなってるがこのくらいにしておいてやろう。
裸のシーラが山吹と入れ替わりで湯船に入ってくる。
「で、なんでこうなったんだ?」
「そ、その、私は、ご主人様をお慕い申しておりますウオ。是非ともお情けをいただきたく。」
「……シーラって、人だよね。私がどれだけ浮気者かわかって言ってる?」
「……覚悟の上ですウオ。」
「人には気持ちというものがある、惚れた腫れたで千影たちと争うことになることはないと誓ってくれ。」
「誓います、ウオ。」
「私は裏切りも浮気も許せない。浮気してる身でわがままをいうけれどそれでもどうしてもか?」
シーラが忍の後ろをちらりと見て言葉を続ける。
「どうしてもですウオ。」
「ニカ、山吹、まさか無理やり言わせてるわけじゃないよな。」
「忍様、シーラはファロとネイルに気を使っているのです。三人とも同じように考えているはずですので。」
千影の発言に目の前でシーラが顔を両手で覆った。
頭から湯気が出そうになっているが、忍は説明を求める。
「シーラ、これはもしかして奴隷としての打算的なことか?」
「一番はご主人様のお人柄ですウオ!」
すがりつかれそうになるのを手を前に出して素早く制する。
再び千影が解説をはじめた。
「ファロ、シーラ、ネイルは忍様がビリジアンを出発する以前からそういった考えを持っておりました。しかし、ビリジアンではスキップに遠慮して言い出せなかったのです。スキップも忍様と寝たがっていたようですので。」
「千影……そういうのは本人以外が伝えるのは色々ダメだ。」
「申し訳ございません。」
サラリとファロもネイルもスキップも忍が好きと暴露してくる闇の精霊。
ここはさらにうろたえるべきとこなのだろうが、逆に頭が冷えた。
ムッツリなりに腹を括ってみんなを守っていくことにしたのだ、ここで日和っているわけにはいかない。
【真の支配者】の影響下にいる者は忍の従者なのだ、心からの希望だというなら叶えたい。
「打算は、まったくないとは、いえませんウオ……。でも、ご主人様をお慕いする心にも偽りはありませんウオ。」
「……わかった。ファロとネイルが気になるならシーラもビリジアンに帰った後に相手をしてもらうことにする。」
「……ありがとうございますウオ。あ、お背中をお流ししますウオ。」
そういってシーラがヘチマたわしを持ったところで千影以外がそそくさと風呂から上がろうとした。
「おい、どこいくんだ?」
「いえいえ、後は若いお二人にお任せしようかと…。」
「……正座っ!声を出すなっ!躾っ!」
山吹のお見合いのような台詞をきっかけに忍の激が飛んだ。
死屍累々、忍はシーラに背中を流してもらっている間、命令を解除することはなかった。
今日という今日は一人づつじっくりこんこんとお説教である。
知り合いにはマクロムから逃げるようにオススメしつつ、忍たちも出国の準備を進めた。
スカーレット商会の面々はトントラロウのことを含め、もう少し事務処理に残ることを選択した。ヘチマやその他の種も分けてもらう、ありがたい。
スワンは冒険者ギルドの力を借りて騎士団に働きかけているようだ。
そして今日、タルドから調べ物の結果を聞くことになっていたのだが、家を訪ねてきたタルドは大きな荷物を持っていた。
「ハイドーズリキッドとガッシュナザルについて調べてきたっス。あ、これ書物の写しっス。」
小冊子のようなものを渡してきたタルドだが、背中の荷物が気になって仕方がない。
シーラにお茶を頼んで暖炉の部屋に通す。
「報告を聞く前にその荷物はどうしたんだ?」
「やだなぁ、兄貴!ロクアットの憩いを紹介してくれるって言ったじゃないっスか!」
「え、もしかしてビリジアンに行く気?」
「兄貴たちビリジアンに戻るんでしょう、ついてくっス!」
「先走りすぎだ!」
今日出発するわけでも、同行を許可したわけでもないのに旅支度を済ませてきたらしい。
宿もすでに引き払ってると言われて頭が痛くなる。
げに恐ろしきは人の業、タルドには美人の奴隷しか見えていないようだ。
シーラたちには不用意に紹介するとか口を滑らせないよう徹底しなければ。
「タルド、一人の人生をお前が背負うことになるんだぞ、きちんと考えてくれ。奴隷だからって無碍に扱うようなことがあれば許さないからな。」
「大丈夫っスよ。それだけはないって誓うっス。俺がほしいのは後衛のパーティメンバーなんで。」
「ん?パーティメンバーなら……」
「忍さん、俺の噂知ってるんでしょ。マクロムじゃもう誰も組んでくれないんスよ。シーラさんも新人と比べたら全然戦えるっスよね?」
てっきりエロだけが目的かと思ったらそれだけでもないようだ。
「絶対可愛い子買ってラブラブパーティ組むっスよ!」
「はぁ…。先に依頼の報告頼む。」
ハイドーズリキッド、魔術ポーションとも呼ばれるこの液体は一部の魔術を使うために必要な媒体である。
材料はトールの根、マンドラゴラの葉、ドレイクワームの胆汁、グリーンマンの血、オーガの魔石の粉……代用も出来るようだがそれでも知らない材料ばかりだ。
「ちなみにこれ、売ってたりはするのか?」
「いや、遺跡なんかで見つかることはあるようっスけど買うのは無理っス。あと、ガッシュナザルっスね。こっちは知り合いに聞いてみたらそれらしい昔話が出てきたっス。」
その昔話はグーシュナザルという魔人の話だ。
戦争によって娘に先立たれたグーシュナザルは娘を蘇らせるために禁忌の魔術を開発した。
古の魔術を調べ、遺跡を回り、何年も何年も非人道的な実験を繰り返し、ついに魔術が完成する。
しかし、グーシュナザルは魔石から魔人や魔物を蘇らせることには成功したものの、その魔術は娘を蘇らせることはできなかった。
どれだけ外見を似せたとしても、中身は似ても似つかない。魔石に宿った魂は娘のものではなかったからだ。
やがて失われた魔石に宿っていた娘の魂がなければ娘を蘇らせることはできないと知ったグーシュナザルは、失意のうちに失敗作を野に放ちどこかへ消えてしまった。
「……って感じっス。マクロム建国前の口伝みたいなんでそれっぽい話をいくつかまとめたっス。」
タルドの調べてきた情報に忍は手応えを感じていた。
ざっと目を通した口伝の中に塔に住んでいたということと、湖底の冒険の話が出てきたからだ。
グーシュナザルは娘の体を作るため湖底の白い泥をとりにいくが、そこでイソギンチャクに似た魔物と戦うことになる。
そのイソギンチャクのような魔物は魔術も銛も効かないが、グーシュナザルが苦し紛れに白い泥を舞い上げてその下に隠れるとしばらくして何処かにいってしまうのだ。
この魔物の対処法は忍ハウスビリジアン支部ことガッシュナザルの魔術塔に書かれていたことと一致する。
魔術塔の持ち主、ガッシュナザルはグーシュナザルで間違いないだろう。
そしてこれらの情報から残念ながらスキップ復活のアテが一つ外れてしまった。
ハイドーズリキッドがなければ魔術塔の魔術でスキップを復活させることはできないからだ。
「ありがとう、これで方針が決まった。私達はビリジアンに寄った後すぐに出発するぞ。宿とか考えとけよ。」
「え、どこ行くっすか?」
「未開地。」
「……えぇーー?!」
忍はマクロムの図書館での調べ物の際に未開地についても調べていた。
この大陸での未開地というのは誰も開拓できていない土地である。
理由は地形であったり、魔物であったり、天候であったりと様々だが、もちろん容易に住むことができないからこそ未開地なのである。
忍にとって大切なのはそんな未開地に関する人族共通の取り決めだ。
未開地は開拓したものの土地となる。
つまり、未開地とされている土地ならば大手を振って自分のものに出来るのだ。
そして今、忍にはほしい土地があった。
賢王国アーグ、魔王アーガイルの墓である。
「正気っスか?!いくら兄貴でも無謀なんじゃないっスか?!」
「いや、私、未開地出身だし。っていうか兄貴ってなんだ。」
「ごまかそうとしないでくださいっス!そんな人いるわけないじゃないっスか!」
嘘ではない、さらにいえばこちらの世界では魔王の墓出身である。
「ロクアットの憩いまでは送ってやるがその先についてくるのはナシだ。あと、急ぎだから少し本気を出す予定だが私達のことを他人に漏らさないようにしてくれ。」
「そこらへんは冒険者っスから、ペラペラ兄貴たちの手の内は喋らないっスよ。」
「兄貴やめろ。紹介しないぞ。」
いつからタルドに兄貴と呼ばれていたか覚えていないがとりあえず釘を差しておく。
兄貴というのはもっと筋骨隆々な相手に使う敬称だ。たぶん。
出発日を決めて宿無しタルドにはお帰り願った。




