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プロローグ2

「日ノ村氏ー。おはようでござるー。」

「おはよう日ノ村君。」

教室へ入ると同時に聞こえる二人の声。我のソウルメイト、伊佐美真央いさみまさちか井草衛いくさまもるの二人だった。

伊佐美は真ん中分けで鎖骨に届く長さのウェーブがかった癖毛、度の強そうな黒縁眼鏡、骨張った顔はいかにも昔のオタクと言う感じだ。

彼はわざとそう言った格好にしているらしい。リスペクトというやつだそうだ。そしていわゆるネットの中で見るようなオタク言葉を使う。

そういったことの影響なのか細みの長身だが猫背のためあまり背が高いと感じにくい。

一方で井草は真逆で色白のぽっちゃり体型だ。少し幼いが優しい顔つきはまるで仏様のようだ。

親戚や近所の老人に好かれるタイプの子供というのはきっとこういうことをいうんだろう。

実際井草はとても優しく人柄もいい。彼の口から汚い言葉を聞いたことがないくらいだ。

我ら3人とも高校編入組だが出会いは13歳に始めたネトゲからの付き合いだ。

最初は顔の見えないネットでの出会いだったが、当時見ていたアニメの趣味も合い年齢も同じということですぐに意気投合した。

ネットだけでなくオフ会も開くようにもなった。中学はそれぞれ別々だったが全員で同じ高校に行こうと話し合った。全員が合格した時は涙を流したものだ。

「おはよう二人とも。ご機嫌いかがかな。」

「今日は早いでござるな、いつも通りだと遅刻ギリギリでござるのに。」

「うむ、昨夜は早めに就寝についたからな。今朝は早く目が覚めた。たまにはこういうのも良いな。」

そう言って我は井草の腹を揉む、弾力の良いふかふかの腹が我の手を包み込む。

「もう、やめてよお。」

拒絶の言葉を吐くも嫌がるそぶりをみせない井草。

これが最近の日課になっている。

「井草氏のお腹は天下一品でござるからな。老若男女誰もが抗えない魅力あるお腹でござるよ。」

「伊佐美まで乗っからないでー。」

そんないつもの日常の会話をしつつ、井草の腹を揉んでいるとガラリと教室の扉が開く音がした。

「おはよう、日ノ村君。」

その声に手が止まる。

後ろから聞こえる麗しい声、振り向かなくてもわかる。ーーーーー彼女だ。

一呼吸おいて我は最上級の笑顔を作り、声の主である明寺舞理めいじまりに挨拶する。

「お、おはようご、ざいます明寺さん。」

振り返ると己の瞳に彼女の姿が映し出される。

可愛らいく整った顔から発せられるまばゆい笑顔、こぼれ落ちそうな大きくて素敵な瞳、開いた窓から吹く風になびくオレンジ色の長い髪はサイドと後ろ髪に結ばれた三つ編みがとてもお洒落だ。

彼女の仕草の一つ一つが我の鼓動を早くさせる。彼女の言葉一つ一つが我の体の熱を上げさせる。

「今日は早いんだね。私の方が後からになっちゃった。」

「あ、いやそうだ、ですね。今日は僕早起きして、それでなんだ。」

彼女の前だとどうしても口よどんでしまう。

「ふふ、そうなんだ。それじゃあ後でね。」

そう言うと彼女は荷物を机に置くと、彼女の友人達の方へと向かった。

「明治さん……。」

いつからだろうこんな気持ちを抱いていたのに気がついたのは。

クラスの自己紹介の時?隣の席になった時?授業で同じ班になって一緒に学んだ時?

はっきりとはわからない、でも今年も同じクラスになってよかった。

我らがいるこの進学科が一番生徒数が多いためクラス数もそれなりなのだ。

2年連続同じクラスになり、しかもまた咳が隣同士……ということはもはやこれは運命なのでは?とも思ってしまう。

「日ノ村氏は明寺氏にほの字でござりますなあ。」

「日ノ村君のあんな格好してても普通に話しかけてるんだしいい人だよね。」

二人の会話もたいして耳に入ってこないほど彼女を魅力的に感じる。

これが初恋というものなのだろうか。

そう思った瞬間ふと脳裏に昔の思い出がほんの一瞬蘇る。

2人の男児と1人の女児が遊んでいる、だがしかしそんな記憶、いくら思い出そうとしても出てこない。

不思議に思っていたが見慣れた顔が教室に入ってきたことに意識をとられため忘れられることになった。

「よう、日ノ村。」

教室に入ってきたメガネをかけた同級生が挨拶を交わしてくる。

「うむ、剣持よ。今日は良き日だな。普段疼く我の左腕もおとなくしておるわ。」

「そうだな。」

我の言葉をものともせず席につく。

男の名前は剣持大騎けんもちだいき。このクラスの委員長を務める男で我の十数年来の幼なじみでもある。

眼鏡の奥に光るキリッとした目元、端正な顔つきに憧れる女子も少なくない。

「日ノ村、悪いが先生から頼まれごとがあってな。放課後手伝ってくれないか?」

「うむ、よいぞ。」

小さい頃は一緒によく遊んだけどある時を境に少しよそよそしくなっていったっけ。

そうなった理由は自分でもよくわからない。本人に聞くのが一番なのだろうけどそれもどうかと思うし。

まあそれでも同じ学園に通い、同じクラスになってこうやって頼み事を言ってくるならば嫌われたと言うことでもなさそうだから多分問題はないのだろう。

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