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竜姫の番探し5

当たり前だった。

竜の島で大切に大切に育てたのだから、人間を見たことがなかったのだ。


母竜はあらためてルクスに問う。

「ルクスよ、お前が飛べないのはなぜだと思う」

「うーん、まだ羽が生えてこないから?」

「ぶっぶー」

「なによ、ウェル。何がぶっぶーなのよ」

「間違いってことさ」

無駄に前向きなルクスに突っ込みをするのがウェルの役目だ。


不満げなルクスをおいて母は続ける。

「お前が小さいままなのはなぜだと思う」

「後でまとめて大きくなるから!」

「ぶっぶー」

「もう!ウェルってば!」

ぷくっと頬を膨らませる。


「お前が鉱物を食べないのはなぜだと思う」

「うーん、歯が弱いから?」

「ぶっぶー」

ウェルをバシバシ叩くルクスの手を取ると母は


「それはお前が人間だからだよ。人間は竜ほど大きくならないし、飛ぶことは出来ないし、果物や魚を食べるんだ。だからね、かわいい娘よ。お前は人間の世界に番を探しにいかなければならないのだよ」


「...がーん!」

ショックで心の声がでちゃった。


「母さまよ、だが番がいなくても俺達がいる。なにも旅に出さずともこの島で家族一緒に生きればいいじゃないか」ゼファはルクスを背に隠しながら言う。

「でたよ、シスコン」

「うるさい!ウェル!」

「だってゼファに番ができたらどうするのさ?母竜さまは番を亡くして新しく作るとは思えないけど、老後はどうする?ルクスが独り残されたら困るだろ」

ウェルの歯に衣着せぬ物言いにゼファは怒っているけど、ルクスは目から鱗だった。


『まさか竜じゃなかったなんて!そのうちに羽も生えると思っていたのに。は!、と言うことはこのままだとウェルの言う通りお一人様人生まっしぐら...』

しかしルクスは無駄に前向きだった。島中の竜に愛されていたので、飛べなくても溺れても笑って生きてきた鋼の精神を持っていたのだ。


ルクスは立ち上がると母竜に向かって叫んだ。

「母さま、ルクスは番を探しに行ってきます!」


◆◆◆


それから数日、ゼファとウェルが大喧嘩をして火山の一部を壊して群れから苦情が出たり、親世代の竜がルクスの番探しを心配して止めに来たり、若い竜は応援だと言ってアメジストだの水晶だのをやたらにかき集めたりして大騒ぎになってしまった。


そしてとうとう旅に出ることになった。

島中の竜が旅立ちを見守る。土竜も水竜も火竜もみんなルクスとの別れを悲しんでいる。


「母さま、どうかお元気で」

頬をぎゅっと押し当てると冷たい鱗に涙が伝わってくる。


「ルクスよ、お前が生まれた時に着けていた物だよ。人間の世界で何かしら役に立つかもしれない」

そう言って手のひらに載せられたのはチェーンについた小さな指輪だった。


「ありがとう、母さま」腰に着けた革袋にしまう。

ゼファはルクスが気に入るところまで送っていく役目なのだが落ち着かずそわそわとして

「明日にしても良いんだぞ。そうだ、今日は天気が悪くなるかもしれん。明日に」

「ゼファ、心配しなくても大丈夫!私きっと番を見つけて来るよ!」

「そ、そうか、何か困ったことが起こったらこの笛を吹くんだぞ。どこにいても近くの竜が助けに行くから!」

そう言って自分の鱗で作った竜笛を渡す。

「ありがとう、ゼファ! じゃあみんな、またね!」

そう言ってゼファに飛び乗ると空に舞い上がる。


竜達は高い鳴き声をあげて竜の歌を唄う。

その様子を黙って見守っていた古竜が、

「はて、番を見つけて来る、と言うことは、この島に戻って来ると言うことか。はてさて、竜の島に初めての人間の婿は来るだろうか」

そう言って楽しそうに飛んで行く姿を送った。

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