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竜姫の番探し32

グラディウスは自分の生い立ちについて話した。

「私はこれまで王子として国に尽くしてきましたが、私がいることで返って国が荒れることは耐え難く、王太子になることは本意ではないのです。これまでは臣下に下って辺境で生きることを望みとしていましたが、ルクス嬢あなたに出会えた。あなたが竜の島に戻るなら私も一緒に従います」

そう言って手にキスを落とす。

またかあっと赤くなる頬を隠せないままうろたえる。


「でも、竜はすごく大きいの。ゼファは今小さいけどあれは仮の姿で、本来は家の二階以上に届く位なんだよ。人間はきっと怖がると思うよ」

グラディウスは目を輝かせると

「怖いだなんて! 一生のうちに出会えるとは思わなかった竜に会えるんです!それこそ全てを投げ売っても行きたいですよ!ああ、今から楽しみで楽しみで仕方がないです!」

あれぇ~?私より竜の方が興味ありそう?きらきらが倍増しているよ?

ちょっとそわそわした気分が下がる。


「おい、竜が本命みたいな言い方するな。すみません、ルクス様。こいつを育てた師匠が竜の研究者っていうかオタクだったもんで」

グラディウスは慌てて、

「もちろんですよ、ルクス嬢と竜を比べているわけはありません!ただ、子供の頃から竜について学んでいたのでちょっと興奮してしまって」

「竜について勉強したの?」

ルクスは人間の中で竜がどのように知られているか聞いたことがなかった。


「私の研究では、いわゆる市井で語られる部分と魔術的な部分に分けられています。よくある物語は『竜の愛し子』と言う話ですね。これは美しく心優しいお姫様が天に愛され人の世に置くのは忍びないと思われて、神の化身である竜が盗んでしまう、と言う話です」


「ああ、ローガンが言ってた愛し子ってそう言う意味だったんだ」


「はい。この話を学術的に考察すると、実際は愛し子の魔力が人知を越えるほど高いと竜がその存在を関知して同種だと思い連れ去るのではないか、とされています」

なぜか期待感たっぷりにわくわくと見られているが


「えっと、私がどうして島にいるかは聞いたことがないの。だからそれが正しいかはゼファに聞いてみないとわからないなあ」

そう答えるとグラディウスはなるほど要研究継続事項だな、と神妙に頷いている。


それからは島での生活や住んでいる竜の種類や生態、母さまについてなど話は尽きなかった。


「それでね、水竜は普通泳ぐ時羽をあまり使わないんだけど、羽を使った方が速いんじゃないかと思ったスペスがやってみたらすごい渦が巻いちゃって自分が酔っちゃったって、こんな話して楽しい?」

ルクスはいつの間にか誰にも話したことがないような思い出話しまでしてしまっていた。

にこやかに微笑んでいるグラディウスは

「もちろんですよ。好きな人のことは何でも聞きたいです」

ぽぽぽ、と頬が赤くなる。

「な、なんでそう言うこと言うの」

「だって本当にそう思っているから」

草むらに生えていた紫色のアスターという花を摘むと耳元に飾る。指がほんの少し触れると、更に頬が熱を帯びてくる。


「ああああの、グラディウスは王子を辞められないんでしょう?」緊張して話題を変える。

「いえ、辞めますよ」

「おい」

まるっと突っ込みを無視して続ける。


「必ずルクス嬢と一緒に島に行きます。ただその前にどうしてもしておかないといけない約束があって少し時間がかかりそうんです」

「約束?」


「私には二人弟がいると話しましたね?そのうちの第二王子であるアルカナムは王国一の天才なんです。魔力が少ない人でも使える魔道具を作って広めたり、周辺国に売り込んだりとにかく立派な弟なんです」

細めた目が慈しんでいる気持ちを表していて、ルクスは兄弟っていいなあと思った。


「そんなに立派な弟なので、私は常々自分より国王にふさわしいと思っているのですが、弟が愛した人が同性なので国内では支持されていないんですよね」

がっくりと肩を落とす。


「それで、私の継承権を破棄する前にアルカナムの地位だけは築いて置かないといけないな、と思っているのですがなかなか古い価値観を変えるのは難しいのです」

男性が好きな国王なんて他国に嗤われる、次代を生めない王などいらない、好き勝手に投げつけられた言葉。繊細なアルカナムをどれほど傷つけただろう。それなのに、王位を押し付けることでまたしても傷つけてしまう。自分勝手だとわかっているのに、申し訳ないのに、ルクスを諦められない。ぐっと奥歯を噛み締める。

「あの~人間のことはよくわからないけど、竜にも雄同士の番はいるよ」

「え」

「そうなんですか?」

うん、と頷く。

「雌同士もあるし、みんな仲良しだけど、何が問題なのかな?」

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