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竜姫の番探し24

「止まって、止まるようにローガン•ビショップ」

後ろから警告の声がかかる。


『万事休すか』受付で名前を名乗っているのだ。ばれているのに逃げても無駄だ。盛大に心の中で舌打ちをすると人好きのする商売人の笑顔を全快に振り向いた。

「何かございましたか、騎士様?」

赤髪の騎士は息切れもせず歩み寄ってくる。

「ああ、少しお尋ねしたい。そちらの女性は貴殿の奥方かな?」

じっとりと脇に汗が滲んでくる。

「いいえ、知り合いから預かっている令嬢です」

にこにこと音が出そうなくらいの笑顔に若干引き気味の騎士。

「そ、そうか。実は殿下が少々その令嬢とお話ししたいとのことなのでご同行を願いたい」


その時、いつになくおかしな父親と騎士を見比べていたミリイが

「あいたたたた、パパお腹が痛い!」

「!!? 大丈夫か、ミリイ?」

「大変!やっぱりカップケーキを三個食べたのは食べ過ぎだったんだよ!」

なにやらおかしな台詞も聞こえたが、さっきまで全然へっちゃらで走っていた娘が急に訴える。痛い、痛いと下腹を手で押さえて前屈みになると

「パパ、お手洗いに行かないと、ルクス一緒に来て!騎士様、ごめんなさい!」

そう言うとルクスの手を引いて華麗なスタートダッシュをきめていく。

ローガンもハッと気がついて「ああ、娘が心配なので着いていきます!失礼致します!」

あっけにとられた騎士を置いてきぼりにして飛び出していく。


三人は走って走って、ようやく馬車まで戻ると御者はあんまり早く戻ってきた三人に驚いたが早く馬車を出すようせっつかれて目を白黒させながら馬を走らせた。


家に着くとオリビアがアンディを抱いて出てきた。

「一体何があったの?盗賊にでも追いかけられたの? パーティーは?」

ローガンの服はぐしゃぐしゃ、せっかく整えたルクスの髪は飾りが取れかかって、ミリイとなると靴を両手で掴んでいる。


「盗賊より悪い、って言っちゃいけないけどまずい事態だ!ゼファ、ゼファどこにいる?」

大声で呼ばれてやって来たゼファはルクスの肩にぽんっと乗ると髪についていた葉っぱをとってやる。


「全く、せっかくきれいにしてもらったのになんていう有り様よ。善き番になりそうな人間がいなかったのか?」

「それとも、人気が出すぎて逃げてきたのかしら?」

なぜだかうきうきと嬉しそうなオリビアに

「よりによって一番見つかりたくない相手に見つかっちゃったんだ!ゼファ今からルクスを連れて逃げろ!王都以外ならどこでも良い!」

ローガンの叫びがホールに響いた時、リンゴーンとドアベルが鳴った。


「嫌な予感しかない...」


執事のルイスがドアを開けると発光しているんじゃないだろうかと思うくらい美丈夫が立っている。


「ローガン•ビショップ殿はご帰宅されているかな」

第一王子の御光臨だった。



にっこりと微笑んだ王子と苦虫を噛んだような顔の騎士を応接室に迎え、ローガンは『詰んだ』と言う言葉がリフレインしている。

ルクスはまだ良く分かっていない様子で両サイドを見比べている。


「ローガン殿に伺いたいのだが、春先に東にあるミンド村に立ち寄ったことがあるかな?」

「確かにこの春は入荷のため東の村を回りましたが、ミンド村と言う名前には覚えがございません」


にこにこにこにこにこにこにこにこ


「そうですか。その時私はファイヤーベアの討伐にあたっていましてね。不覚にも炎の攻撃で全身火傷を負いました」

「それはそれは、ご無事で何よりでした」


にこにこにこにこにこにこにこにこ


「その時、私を始め全ての人を救ってくれた方が現れたのです」

「それはそれは、素晴らしい出会いでしたね」


にこにこに...


「あー!!もう止めて、止めてください!ねえローガン殿、あなた分かっていますよね!? 村で瀕死の殿下に白い薬を飲ませてくれたその人はそこにいるルクス嬢だって!?そしてその後何も言わず去って行かれたおかげで久しぶりの年休が次の日から待ってるってのに命の恩人を探すまで帰らないって騒ぐ殿下に引きずられて一週間かけてしらみ潰しに周辺の村を行方を探すはめになったその人だって!」

なんだか思っていたより私情が入っている赤髪の騎士が大声でにこにこ合戦に割ってはいる。


「リージス、無作法だよ。令嬢の前で声をあげるなんて。ところでルクス穣、あなたは婚約者がいますか?」


なぜだろう、ルクスが開口一番に「あなたは番がいる?」って聞いてきたのに被ったなとローガンは思う。


「こんにゃ、婚約者?」

「つ、付き合っている人のことだよ」


ルクスは首をかしげて「いません」と答えたら細く開けた扉の向こうでミリイが腕で×を出している。


えええ?どういう意味?

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