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竜姫の番探し20

焦げてしまったイザベラは警ら隊に引き渡して、残ったミリイとルイス、それからオリビアを呼んできた。


「あなたがルクスちゃんね!ずっとお話ししたかったの、ごめんなさいね、アンディの具合が悪くててんてこ舞いだったの」

「具合が悪いときは舞いは踊らない方が良いよ」

「そうよね、それなのにルクスちゃんが悪い薬を見つけてくれて...!本当にありがとう!ルクスちゃんは私の天使だわ!」

「ミリイも手伝ってくれたんだよ。ミリイも天使だね」


全く噛み合っていないのに何故か話しが通じている二人をローガンとルイスが呆然と眺めている。その横ではミリイががっしりとゼファを抱き抱えて茹でたささみをせっせと与えている。


「ゼファはよいこね、よいこにはご褒美があるのよ!」

「なるほど、人間は与えたら返すのだな。良い心がけだ!」


王都で生活するうちに人間の食べ物を食べてみたら案外美味いと知ったゼファは最近この鶏のささみがお気に入りだ。

「ミリイ、あんまり甘やかさないで」ルクスが声をかけると

「なんとルクスよ!我が妹の危機を救ったと言うのにご褒美を遮るとは! うむむ、なんと兄に対する敬意が足りぬぞ!」

眉をしかめたルクスにげっぷと膨れたお腹を擦りながら言う。


「その、旦那様、とかげが、いえゼファ様がお話しされているのですが」

真面目一徹のルイスはどうしたら良いのかわからぬまま、何故かゼファを受け入れている。


「あ~、説明していなかったんだけど、ルクスは竜の島からやってきた愛し子で、ゼファさんはお兄さんなんだ」


その言葉に

「やっぱりミリイが思ったとおりだったわ!ルクスは竜のお姫様なのね!」

「まあ~、ゼファちゃんはささみが好きなのね。それじゃあ今日はお祝いにささみパーティーにしましょう」

「あんまり食べさせないで。太ったら飛べなくなりそうだよ」

「ゼファ、お姫様の騎士はかっこよくなくちゃ。太るのはダメよ」

全く違う次元で話を進める三人。頭が痛くなってきたローガンは声を上げた。


「と、に、か、く! ルクスは人間の番を探すためにここにきた。ゼファさんは見張り。二人について外で絶対に話してはいけません!分かった!?わかったらお返事!」


「「「はーい!」」」


ガックリと力が抜けたローガンにルイスがそっと手を添えた。


◆◆◆


その後三人を追い出して執務室でルイスにこれまでのことを説明する。


「なるほど、まさか竜が存在するとは思いもよりませんでした」

ソファに向かい合わせに座ったルイスは普段ではあり得ないほど背中を丸めた。

「当たり前だよ。俺もこの目で見なければとても信じられない話さ。でもゼファは竜だろうがとかげだろうがルクスのために一生懸命な奴だから害はないさ」

ローガンは強い酒を二つのグラスに注ぐと自分の分を呷る。


「ただし、ルクスさんに危害を加えなければ、ですね」


はあああ~と二人は焦げたイザベラを思い出した。

警ら隊によれば、イザベラは雷の影響で記憶が曖昧で、話している内容から子供の頃に戻ってしまっているそうだ。


「ゼファがしゃべったり雷を落としたことを覚えていないでいてくれたのは助かるけど、オリビアやアンディにしたことまで消えてしまうとは」

どう受けとめて良いのか複雑な心境だ。

「しかし証拠があるので、やはり鉱山に送られるようです」

人殺しや重大な罪を犯した者は死罪か鉱山で死ぬまで服役する。

ただし今回は未遂だったため、鉱山の官舎で20年間食事を作る罰で済んだ。


「じいさんのせいなんだよな...」

凝り固まった古い観念の持ち主で、自分の代で商会を大きくしたことで隠居してなお口うるさく関わってくる。オリビアに対する嫌みだけでなくイザベラの心の闇に火を点けておきながらこちらを罪に問えないとは忌々しい。


「これを機会に、商会にもじいさんの指示を一切受けないよう通達するよ。まだきっと内通している奴もいるだろう。今後、じいさんが関わってきたら俺はビショップ商会を出たって良い」


ルイスは息を飲んだ。商人にとって商会は子供であり、宝であり、決して離れることができない存在だ。

「ルクスが言う通り、番に、家族に代わりはない。俺が守るべきは家族なんだ」

そう言って下を向いたルイスの肩を掴むと

「もちろん、ルイスも俺の家族でいてくれるだろう?」

「旦那様...」

もう一度グラスに酒を注ぐとカチリとグラスをあわせ無言で飲み干す。

それから二人はこの先、ルクスとゼファをどうやって守っていくか夜更けまで話し合った。

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