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竜姫の番探し16

「ここが王都かあ~」

ゼファと合流してから一週間、ようやく王城にたどり着いた。目抜き通りには広い二車線の馬車道が縦横に伸びて、両側には石作りの建物がそびえ立つ。

破れた幌馬車からルクスが乗り出すように顔を覗かせる。その頭は仕入れ品から引っ張り出したカラフルな布をしっかり巻き付けてプラチナブロンドの髪を隠していた。

元々着ていた服が南方のチュニックに似た上着に膝までのぴったりしたズボンだったので他国からの商会見習い、と言うことにした。


王都に入る前、ローガンはルクスとゼファを前に真剣な顔をして向かい合った。

「いいかい、王都はとにかくたくさんの人がいる。良い奴も悪い奴もまぜこぜだ。竜の愛し子だと分かったらルクスを利用しようとする人間が大勢出てくるだろう。だから良さそうな人であっても絶対に竜について話してはいけないよ」

噛んで含めるように言い聞かせる。


「わかった。けどゼファはどうする?」

ゼファは体を小さくしたままルクスの腕に抱かれている。

「南方にイグアナと言う大きなトカゲがいるんだ」

「トカゲ! 我をトカゲと呼ぶか?!」

ぐるると不機嫌に唸る。すると晴れていたはずの空に黒雲が呼び寄せられる。

「あああ、落ち着いて! 正体がバレないための嘘ですから!」

ぽこん、とルクスがゼファの頭を叩く。

「ダメでしょ、ゼファ。私が捕まったらどうするの? それにポリーを怖がらせないで」

ぶるるる、とポリーが嘶く。

「馬、馬の方が我より大切か...」

「いえ、この往来で暴走すると困りますから」

ゼファの気落ちを無視して先を急ぐ。


大通りを一本奥に入って道に面した茶色い石で作られた3階建ての建物の前で馬車が止まる。すると窓から見ていたのか正面のドアからすごい勢いで小さな生き物が飛び出してきた。


「パパ! お帰りなさい!」

ローガンはその弾丸のようなものを抱き上げると

「ただいま! ミリイ!会いたかったよ!」

すっかり伸びてしまった無精髭を擦りつけると嫌そうな顔をされる。

「パパ、遅いじゃないの! ちゃんと帰って来てって行ったでしょ!もう昨日ママがアンディを産んじゃったのよ!」

「!?!?」

絶句してしまったローガンの後ろに立っている女の子にミリイが気づく。

「パパ、お客様?ううん、お姫様?」

ローガンははっと気がついて

「ああ、ミリイ、こちらは今日から商会で預かるルクスだよ。ミリイ、それでママは」

ミリイから臨月だった妻が予定より数週間早く息子を生んだこと、今おばあちゃんが来ていることを聞くと家の中に飛んでいった。


「ねえ、お姫様でしょ?私ずっとお姫様に会って見たかったの!嬉しい!今日はミリイのお部屋に泊まってね!」

小さな手でルクスの手を握る。


「ありがとう。お姫様っていうのはわからないけどルクスって言うの。ミリイはローガンの番の子ね?」

ゼファが尻尾で腕を叩く。


「番...? わあ、大きなトカゲさんね!触っても良い?噛まないかしら?」

「ゼファはとっても良い子だから噛んだりしないよ」

そういっておっかなびっくりしているミリイの小さな手を取るとそっとゼファの顎に添える。

ゼファは少しびくっとしたが、ゆっくり撫でられるのが気に入ったのか大人しくされるがままでいる。

「ふふふ、かわいい」

ルクスとミリイはにっこり笑いあった。


「まあ、お嬢様いつまで玄関にいらっしゃるのですか?早く中に入って下さい!」

黒髪に眼鏡をかけた女性がイライラした様子でやって来た。

「あなたが新しく働きに来たっていう人ね。さっさと厨房に行きなさい!」

「イライザ、ルクスはパパが連れて来たお姫様よ!失礼だわ!」

眼鏡をぎらっと光らせて

「ローガン様は商会で預かると言いました。ですからこれは只のメイドで、ましてやお姫様なんかではありません!お嬢様は口を閉じておいてください!」

ヒステリックに叫ぶと一人で中に入ってしまった。


「ごめんなさい、ルクス。すぐにパパに言ってお客様だってみんなに伝えてもらうから」

下唇をぎゅうっと音がしそうなくらい噛んでミリイが呟く。


ルクスは傷付いたミリイを抱き締めると

「気にしなくて良いよ!ローガンが働いてみたら、って言ったのは本当だから。それよりミリイがとっても痛そう。大丈夫よ、ミリイはとても良い子よ!」

明け透けで開けっ広げな抱擁にミリイはなぜだか涙が止まらなかった。

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