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竜姫の番探し15

不思議なことにその後の報告で、向かって来た獣や魔獣はラムジー山から遠ざかると落ち着きを取り戻し、森の中にそれぞれ消えて行ったと言う。スタンピートであれば絶対に村を襲って来るはずなので不幸中の幸いだった。しかしかなり多量な生き物が移動したことでこれまで住んでいた生き物と縄張り争いが起きるかもしれないし、あぶれた獣が村を襲う可能性があるため、翌日からは王子の指示で村から北東に向かってラムジー山まで魔獣の被害を調査することが決まった。


「街道も森の奥も獣の足跡でいっぱいですね」

馬から降りて辺りを見てきたリージスが言う。

そわそわと報告を待っていた王子はようやく動けるとばかりに

「そうだね、じゃあ僕は一足先にラムジー山まで行ってみるよ」

ひらりと自分の愛馬のジュビリーにまたがると、グラディウスはここは任せたと走り出す。


「このっ、バカ殿下! 護衛を置いていく奴があるか! おい、後れるな!」

リージスが悲鳴に似た声で騎士達に声をかけると遠ざかる背中を追いかける。

街道から外れ道なき道を進んでいくとリージス山の麓に着く。まるで巨人が砂遊びでもしたかのように平野にどでんと立ちはだかるこの山のお陰で北から吹く風が直接降りてこないため山のこちら側は豊かな森が広がっている。


「地中から魔力の霧も出ていないし、黒い泉も生まれていない。獣の気配が全くしないと言うこと以外、まるで平穏な森だな」

リージスに返事もしないで王子は馬を進める。

 

「こういう時は人の言葉なんて聞いちゃいないんだよな」と独り言ちながら追随する。

大木をすり抜けて行くと、そこにはほんの少しだけ開けた場所があった。王子は馬を降りてまっすぐに草原に進む。急にしゃがんで見たり、土を掘り起こしたりしている。


「副団長、殿下は何を探していらっしゃるのですか?」

まだ若い騎士が王子の奇行に困惑しつつ聞いてくる。


「さあな。あの形の良い頭ん中には凡人が思いもつかないことが詰まってるんだよ」


王子付き騎士団員達は慣れたように頷き合っている。

「まあ、殿下について行くにはちょっとやそっとのことを気にしかないで」と言いかけたところでグラディウスがここ数年聞いたこともないような大声を出した。


「リージス!!リージス、見つけたかもしれない!」


地面に描いた複雑な魔術式が光っている。

慌てて行ってみると、王子は満面の笑顔で


「見ろよ、これは対竜の生態反応用の魔術式なんだ!反応している! 化石じゃないんだ!生態反応ってことは生きてここにいたんだ!」

そう言うと大地を抱き締めるようにうつ伏せになった。

「わっ! わかった、わかったから起き上がれ! 」

いとおしそうに地面に頬を擦りつける王子にドン引きする騎士達。

「やめろ、服が汚れる。大体、いつの間にそんな高度な魔術式を作ってたんだ。無駄に大量な魔力使いやがって」

もうすべてを諦めたような顔をしてリージスが王子を引き起こす。

「ああ! ここに銅像を建立しよう!竜が立ち降りし場所、聖なる土地に指定して神殿を建てても良い!」

「アホ殿下! くだらないこと言ってないで急いで王都に帰るぞ!」

「嫌だ! 僕はここで調査をする!」

「アホグラディウス! 生きた竜が現れたってことは王国のどこに現れたっておかしくないんだぞ?! 万が一でも王都に現れてみろ、竜がその気がなくたって滅亡させられると民が騒いでもしたらどうする! それでなくても頭の悪い第三王子が王都に残ってるんだ、うおっと」


グラディウスはガバッと起き上がると

「あのバカが竜に危害を加える?そんなことは許さん!帰るぞ、皆騎乗しろ!」

美しい頬も真っ白な騎士服も土で真っ黒になっていたが気にもしないで愛馬ジュビリーに跨がる。


「全員、帰城する!」


王子を先頭に一団となって都を目指して駆け出した。






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