第二十二話
続きです。
よろしくお願いします。
夜空に上がった花火が大きく咲いて、少し遅れた大きな音がお腹に響いた。
「おぉでけぇ」
見上げたままそう呟いた明日香の横顔をこっそり覗き見る。落ちて行く花びらが凜としたその横顔にゆらゆら揺れる影を作った、ような気がした。
私はこの瞬間を切り取って、永遠の記憶として私の中に閉じ込める。もう何百回も繰り返した作業のように。
「なんにすっかなー」
その横顔が好き。その真っ直ぐな髪が好き。その力強い眼差しが好き。その声も、口を大きく開けて笑うところも、口いっぱいに詰め込んで美味しそうに食べるところも、ガサツなところも気遣いが出来るところも優しいところも何もかもが好き。
「これだな。うまそー」
こんなに想っていても私の想いはいつか消えてしまうけど、明日香を好きだったことは決して忘れない。それでいいってそう決めたけど、悲しいものは悲しいから、今なんか泣きそうだけど泣くのは嫌。このまま見ていると涙が溜まって溢れてしまいそうだから、私は夜空に視線を戻そうとしたら明日香がいきなりこっちを向いた。
「どうした椎名。これ食いてぇのか?」
はい出ました食い気大魔神。
お互いの気持ちの落差は如何ともし難い。私の一方的な恋愛感情だから明日香は全然悪くない。そんなことわかっているけど、クレープっぽいよくわからない食べ物を持っている明日香を見ているとなんか腹が立つ。
「違うわぼけっ」
人の気も知らないでまったくこの女めって思って、私は理不尽にもグーぱんしてしまった。
「いて。なんだよ。なに怒ってんだよ」
「べー、だ」
「ベーってお前なぁ。ガキじゃねぇんだからよ。って、あ、アレか。私がさっき椎名のアレ食っちまったからか。んだよ、じゃあお返しになんかやるからもう怒るなよなー」
違うわぼけっとは突っ込まない。誤魔化せるならそれでいいから。
「えーと」
頓珍漢な明日香さんは、しゃぁねぇなぁって呟きながらガサゴソと大きなエコバッグを漁り出した。嵩張りそうだから持って来た私ってまじエコだよなって笑っていた大きなエコバッグ。これ、こんな小っちゃいけど広げるとすげぇでかいんだぜーって自慢していた。
「どれにすっかな」
私はそんな明日香も大好きだからいつまでも見ていたくなるけどやっぱり泣いてしまいそうだから上を向く。そして丁度花火がまた一つ上がって行った。
「明日香。花火上がったよ」
肩をちょんちょんやって明日香に声をかける。弾かれたように明日香が上を向くと同時に花火が咲いた。
「おお。でかいな」
「凄いね」
「ほら椎名これ。やるよ。お返しな」
数ある食べ物の中から私にくれるものを決めたらしい明日香が差し出したのは大判焼き。少し汗をかいてふやけているように見えるのはご愛嬌。
「ありがとう。じゃあ半分こしよう」
私は受け取った大判焼きを適当に割って大きい方を明日香に渡す。
「いいのかよ。さすが椎名。サンキューな」
「お礼とかおかしくない? もともと明日香のじゃんそれ」
「細かいことはいいんだよ。ふお、これもふめへな」
何でも美味いって騒ぐ明日香も好き。この先も一緒にいてこんな姿を見せられ続けたらいつまでも好きのまま。とは言え私の気持ちはどこまで行ってもどうにもならないものだから、結局のところ卒業はいい機会なのかも。
「よかったね。うお。どうしたのあまちゃん?」
「べつに」
私の左側が重くなった。あまちゃんに腕を取られて抱えられたから。よくあることだからべつにいいけど引っ張るようにするのはやめてほしい。持っている大判焼きが落っこっちゃう。
私は慌てて左手から右手に持ち替えた。セーフ。そして私は気がついた。
「あ、もしかして大判焼き食べたいの?」
「馬鹿じゃない」
「嘘でしょ?」
「お前ら仲良いな。ま、私の方が仲良いけどなー」
そして右側、明日香があまちゃんごと抱えるようにのしかかって来た。いつもの構図の出来上がり。楽しいけど今は駄目。
「ちょっ。明日香。あんこが落ちちゃうでしょ。もったいないよ」
「おお、そりゃダメだわ」
「あ。離れた」
「あまちゃん。明日香だよ?」
「そっか。納得」
「うまうま」
と言うことで、最後の夏、あっつい夏が今年も来たよ。
「よし、と」
夏休みに入って十日ばかりが過ぎた。連日続く猛暑日の中、私は午前中に予備校の夏期講習に行って、お昼ご飯を明日香のお母さんの定食屋さんで食べて、ピークが過ぎてお昼休憩をする明日香と少し話をしたら家に帰ってシエスタしてからまた勉強に勤しんでは好きな音楽を聴いたりあまちゃんとメッセージのやり取りをしたりとダラダラ過ごしてからまた勉強に取り組んでは気分を変えて法律のテキストを読んだりしてから夜ご飯を食べたあとまた少しダラダラしてから勉強をしてお風呂に入ってまた勉強をした最後にまた法律のテキストを読んでいるうちに眠くなったらベッドに転がっていつの間にか朝を迎えてご飯を食べてから今日も一日頑張りますと予備校に行くという一日のサイクルを確立していた。
ちな、佐藤は全くの役立たず。なぜってアイツは講習を午後の部にしたから。そのせいで男の子に声を掛けられたりするから堪らない。その度にスマホを弄りながら、今からリスニングの勉強するんでとか言って、耳に着けたイヤホンを指したりして適当に躱しているけどはっきり言って面倒くさいし余計なストレスになる。
だからと言って私は予備校を絶対にサボらない。これは私が望んだことだし、何より教育を受けさせる義務は中学校までで、高校、予備校、大学と、本来なら出さなくてもいい筈のお金を出してくれる親に申し訳が立たないと思うから。
「美月は進路どうするんだ? 何かやりたいことはあるのか? なりたい職業とか」
「アイドルになりたい」
「「は?」」
「うそうそ。今は特にないかな。法律の勉強したいしそっち系の資格は取りたいけど、弁護士とか司法書士とか、母さんみたいにその道の専門家になろうとまではまだ考えてないんだよね。なれるかどうかわからないし」
「そうか。それなら大学に行きなさい。資格を取るにしても就職するにしても行っておいて損はないからな」
「わかった」
「おう」
「あ。ねぇ」
「なんだ? 言いたいことがあったらなんでも言えばいい」
「えっと、私大でも平気?」
「ん? あっはっはっ。べつに大丈夫だぞ」
「本当に?」
「ああ。そういうことは俺たちに任せておけばいいんだよ。なぁ母さん」
「そうよ。お金のことは美月が気にすることじゃないからね。美月が行こうと思う大学を受ければいいの」
「東京だよ? 受かったら一人暮らしだよ?」
「色々ぶっ込んで来けたな。けどいいぞ。美月だって宇宙だって遅かれ早かれこの家を出るんだし。それについては前から母さんと話していたしな」
「そうよ。こういうこともあるかもねって話していたしね。そりぁ美月が居なくなるのは寂しいけど、美月の人生は美月のもの。美月がそうしたいと言うのなら、それが間違ったことじゃなければ私たちは喜んで美月の手伝いをするの。私たちからすれば、宇宙と美月がしたいことをして元気で幸せでいてくれたらそれでいいんだから」
「まじ?」
「「まじ」」
「本気でアイドルになりたかったとしても?」
「まぁな」
「当然よ」
「そうなんだ……わかった。ありがとう父さん、母さんも、ありがとう」
「おう。甘えとけ」
「うふふ。どういたしまして。あら、泣いてるの? しっかりしていると思っていたけどまだ子供なのね。よしよし」
と、高三になってすぐ、私のこれからを話し合った時にこんな会話をした。本当はもっと濃かったけど掻い摘むとこんな感じ。
私の親が子供についてどう考えているのかを聞けてちょっと感動して泣いちゃった。私がヘテロだったら良かったのにって、言わずとも期待しているだろう、私が彼氏を紹介することも、いずれ結婚したいと思うお相手を私が連れて来ることも、そのお相手に娘さんをくださいと言われることも、そのあと父さんの一発殴らせろっていうイベントも、花嫁姿を見てもらうことも、結婚式で感動的なスピーチで泣いてもらうことも、産まれできた子を抱いてもらうことも出来たのにって思ったらもっと泣けてきて、私が激しく泣く理由を知らない父と母に優しくあやされたのは申し訳なくも黒い思い出。優しいふたりをいつか傷つけることになるのかも。そう思うと胸がズキリと痛んだ。そんなことがあった。
ともあれ私の大学進学は、私が望んでいるからというだけでなく、私の人生の選択肢を広げるという点においても親も望んでいることだけど、それとこれとは話は別。親が無償で与えてくれた環境を活かしこそすれ右から左にポイ捨てするようなことはしちゃ駄目だと私は思うから。親なんだから子供のために何かするのが当たり前だなんて思っては駄目。
「終わった」
と言うことで、今日も午前中に予備校に行って明日香のところでご飯を食べて少し話して午後二時過ぎには帰ってきた。今日はシエスタしないで勉強中。
暑さは変わらず健在で、朝から日射しはジリジリ湿気た空気がベタベタと纏わり付くような暑さだったけど、私がいま居るリビングはクーラーのお陰で快適だから大丈夫。それを当たり前のように享受しているけど、やっぱりこれも親のお陰。熱中症は下手をすると生死に関わることだから感謝しないといけない。
「まぁこんなものかな」
七割くらいの出来。今の時期ならまぁいいかと、答え合わせを終えて、やり終えた問題のページに戻り、指の代わりにシャーペンを挟む。そうしないと、取り掛かったばかりのこの赤くて分厚い過去問題集が閉じちゃうから。そうなるとどこのページだったかわかんなくなって、一々探す羽目になるのが嫌だから。
集中力が途切れた途端に戻って来た音を一緒に口ずさみながらソファに体を投げ出して大きく一つ伸びをする。
「んーーー。気持ちー、いっ? いだだだだ」
攣った。背中だか腰だかよくわかんない所を攣ってしまった。
「うぐぐぅ」
奇声を上げつつ体を丸め、私は暫くその体勢のままでそれが治るのを待つ。は? 何やってるの? なんて声はそれどころじゃないから無視をする。
「いてててて」
苦しむこと約二十秒くらい。けど、体感的にはそれ以上の、かなり長く思えた痛みは治った。だけど動くとまたなりそうで怖いから、私は暫く丸めた体勢をキープして、いくらなんでももう大丈夫だろうなって思えてからゆっくり体を起こした。
自分のせいだけになんだかすごく疲れた気がする。
「あー、びっくりしたぁ」
「それはこっちの台詞。いきなり怖いんだけど」
そしてこの一連の行動を、私の対面、二つ並んだ肘置き付きのソファに横向きにした体を完璧にフィットさせてだらしなく寛いでいる女の子が馬鹿にしたような顔をして私を見ていた。
「うるさいなぁ。あまちゃんだって足とか攣ったことあるでしょ」
そう。あまちゃん。
なぜあまちゃんがウチにいるのかと言うと、今夜が毎年恒例、いよいよ最後の私たちの花火大会だから。あまちゃんは初参加だけど私たちだから細かいことはどうでもいいの。
で、私が駅に着くタイミングで待ち合わせて、明日香のところで一緒ご飯を食べて、あとでねーってふたりで明日香に手を振って一緒に帰って来て、私が勉強している間、大人しくしてくれていたってわけ。
そのあまちゃんのソファにすっぽり嵌っている体の形が、ひ、に見えなくもない。
「ない」
「え。ないの?」
「ないよ」
「本当に? なんで?」
「さぁ?」
答える気がないのか、本当にわからないのか、気のない返事を返しながら、丁度自分の胸の位置にあるスマホを弄るあまちゃん。その感じからしてこの先も不毛なやり取りが延々と続くとわかったから、私はとっとと会話を打ち切ることにした。
「まぁいいや。あまちゃんもそのうち攣って思う存分苦しめばいいよ」
私の言葉にあまちゃんは、返事の代わりにくだらないというふうに鼻を一つ鳴らした。
そんならしさ全開のあまちゃんに、私は私なにり汝を愛しているぞよと、あの方も真っ青な慈愛に満ちた微笑みを向けてから、さて今何時だろうと時計を見遣った。と同時に三時半と言う声がした。あまちゃんが教えてくれたの。
「よくわかったね」
「まあね」
「私そろそろ着替えてくるよ。待ってて」
「私も行く」
何を思って私についてこようと思ったのか知らないけど、あまちゃんがすっと立ち上がった。ひ、みたいな体勢から動きが詰まることなくスムーズに立てるなんて凄くない? どうやったの? って思ったけどそれは置いておいて、私は過酷な現実を教えてあげる。
「来る? いいけど部屋、くそ暑いよ?」
「やっぱりここで待ってる。悪いけどひとりで行って」
「え? わたし元々そのつもりだったよね? よくわかんないんだけどどういうこと?」
あまちゃんは華麗にスルー。そして何事もなかったように再びソファに、ひ、の形に収まった。それが自分で充電器に戻るお掃除ロボットみたいな感じが私のツボに入って面白くて、私は笑いながらリビングを出た。扉を閉める時、くくくって笑い声が聴こえたようなないような。
「うわ」
扉も窓も開けていたのに日当たりのいい部屋は暑過ぎた。リビングを出た時からわかっていたけどへこんでしまう。私はさっさと着替えてリビングに避難することにした。
今年は浴衣は着ない。だから楽ちん。着付ける時間がないし、可愛い私は去年明日香に見てもらったし、今年は浴衣を買ってないから去年と同じ物になっちゃうのは女の子としてすごく嫌だしそこは絶対に譲れないし、今夜は明日香の家に泊まるから。
私は明日も予備校があるから朝早くひとり寂しくお暇するけど、みんなはゆっくりすればいい。べつに疎外感は感じない。つまらないなんて思わないし、みんな何して遊ぶのかなぁなんて少しも思わない。
「もうこれでいいや」
そんなことを考えながら、用意しておいた服にサクッと着替えて私は部屋を出た。暑くて死にそう。おつむをやられた。汗もかいたから汗拭きシートで綺麗にしないと。無言でくんくんされて距離を置かれては堪らないもの。そのあとは顔を洗ってお手入れし日焼け止め。女の子は一々大変なんだよ。
全てを終えて新品同様になった私はリビングに戻りいまだひ、のままでいたあまちゃんに声をかけた。
「じゃあ行きますか」
「私も直したいんだけど」
「あ、そうだったね」
また一つ大きな花火が咲いて散った。
「おおお」
「すげ」
「うわぁ」
「今のデカかったなー」
「ね」
見上げるみんなは何を思うって思ったけど純粋に楽しんでいるみたい。まだ子供なんだからそれが一番。色々と考えてしまう私が少しおかしいのだろう。
待ち合わせの駅には既に明日香と理香と亜衣が私たちを待っていた。亜衣が私たちに気づいて手を上げたから、私は大きく、あまちゃんは小さくわからないぐらいの振り幅でみんなに向かって手を振った。
「「「おつ」」」
「おつ。今年はみんな浴衣じゃないんだね」
「着ても良かったんだけど何気に気ぃ使うんだよね。トイレとかさ」
「「「あー、それな」」」
「ぷ」
「実はさ、もっとちゃんとした理由があるんだよ」
「なに?」
「浴衣って素早く動けねぇし下駄だから走れねぇだろ? そんで去年逃げ切れねぇでゴリさんに捕まったんだよ。だから、な?」
「理香、派手に転んでたもんね」
「悲惨。ぷっ」
「まじか。ウケるわー」
「へぇ。くくく」
「そうなんだよ。けど今年は大丈夫。パンツにスニーカーだしな。何があっても逃げ切る自信しかない」
「だといいけど。玲さん足早そうだし。あっという間に捕まったりして」
「理香。そういうのフラグって言うんだってよ」
「フラグ?」
「あ、玲さんだ」
「え。まじ?」
「ひっ」
「うそうそ」
「ちょっ、やめてくれよ。いやまじで」
「いま超びびったしっ。なんなら少し出ちゃったしっ」
「「あはは」」
こうしてみんなで楽しく電車に乗って、出店で買い物をしながらやって来た、同じ穴場の同じ場所に陣取って、今年もこの日に同じ夜空を見上げている私たち。今年もみんな揃ってここに来ることができたけど、残念ながらたぶん今年で終わり。私たちはいつまでも友だちでいられるかもだけど、いつまでも一緒にはいられない。
私たちは先へ進む。その過程で色んなものに触れて、今まで過ごした自分の世界の狭さを知って、この世界の広さに気づく。
それぞれがそれぞれの場所で新たなコミュニティに属し、新しい人や事柄に触れてはその取捨選択を繰り返して過ごして行くうちに気の合う誰かが私たちに取って代わる。今という時間も、確かに在った筈の私たちの小さなコミュニティ、狭い世界はゆっくりだけど確実に過去のものに変わってしまう。
失くしたことに気づかないものもある。ゆっくりだから失くしたことに気づけない。それに気づくのはもっとずっと先のこと。私たちが過ごす今はまさにそういう類のもの。なんとも言えない気分になるけど私たちは先へ進む。その時が来れば、置いていけるものを置いて。
大きな花火が次々と上がって夜空一面、連続して響く大きな音とともに咲いては散ってを繰り返している。
いよいよ終わりがすぐそこまで来ていた。誰もなにも話さずに、静かに空を見上げている。
最後の花火が散ったあと、それを追いかけるように暗くなった夜空とこの空間に音が響く。少し間抜けな感じがするけど余韻を味わえるから私はこの瞬間が好き。
「終わっちゃったね」
「ああ」
他にもうんとかだなとかそれぞれに返事を返してくれたものの誰も動こうとしない。何を思っているのかわからないけど私のように何かを思っている様子だから、これ以上、口を開くことが躊躇われる。
なら、私も遠慮なく浸らせてもらおうと思う。今までのこと、これからのこと、私のこと、明日香のこと、みんなのこと。思うことは果てしなく尽きないのだから。
少しして、隣でバッグをガサゴソする音が聞こえるなって思ったら、うめーなんて声がして、ああそう言えばこの前さぁって理香の言葉に、えーまじかよとか、馬鹿みたいなんてやり取りがきっかけになって、取り止めのない話が始まった。当然私もその輪に加わった。
「だからよー」
「でね」
「へぇ」
「そうなんだ」
「うまうま」
みんな楽しげに話している。あまちゃんまでもが笑っている。
私はこの瞬間を切り取って私の中にしまい込む。みんなで集まることがあまり出来なくなっても、それすら失くなってしまっても、他に優先すべき大切なものが出来たとしても、子供でいる時間を一緒に過ごした私たちが友だちなことに変わりはない。きっと、形を変えて続いていくのだ。会えばその時は子供に戻ってみんなで一緒に笑える筈。
本当にそうなのかはわからない。わからないならわかるまではそう思っておけばいい。何も変わらないと、みんなの楽しげな様子が私にそう思わせてくれる。今のところは。
そして私は再びみんなの輪に加わった。
「ねぇ聞いて」
「どした椎名」
「宇宙ってね、ふたりの時はなーさんのことなごみんって呼んでるみたいなんだよね。こないだ電話でそう呼んでるの聞いちゃった」
「「「は? なごみん?」」」
「うん。なごみん」
「あー、悪い椎名。聞き間違いかも知んねーからもう一回言ってくれ。誰が何だって?」
「いいよ。なーさんがね、宇宙からなごみんって呼ばれてるの」
「へー……」
「ふーん……」
「ほー……」
「可愛いよね。なごみん」
「「「いやないわー。なごみんはないわー」」」
お疲れ様でございました。
どこかのsnsで話題になっていましたが、私の地域は大判焼きです。他にも色んな呼び名があるみたいですね。初めて知りました。世界は広いっ。
読んでくれてありがとうございます。




