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第十九話

続きです。


よろしくお願いします。

 


 冷たかった冬の空気が(ぬる)んだように思う三月、私は十七歳になったよ。

 ちなみに私は魚座のB型。そしてご存知の通りペガサスでもありクリオネでもあり私の色は何とか緑とかいう色でもあると言う。そして、あなたの前世がわかるとかいう本によると、私の前世はなんとびっくり凡そ四百年前、北アメリカ大陸で生きた女性らしいの。凄くない?

 ふと、拳を握って立っていたのかと思ったけどあの女性は元は白人だから違うとしてもそんな感じ。加えて私はビアンでもある。

 私に(まつ)わるものをこうして並べてみると、ごった煮感が凄すぎて私は一体何者なんだろうってちょっと思う。


 それはさておきこれでようやくみんなに追い付いたぞと思ったのも束の間、何の感慨もなく卒業生を送り、短い春休みを挟んで今はもう四月、新入生を迎えてバタバタしていた筈の新学期も既に落ち着気を取り戻して通常運転、過ぎる速さに慄いていたりもする。この分だと一日を長く感じても大事一年はあっという間に過ぎて行きそう。




「ゼイドンノーアバーラース」


 三月に季節外れの暖い日が続いたせいなのか、いつもより早く満開になった桜の花ももう散って、代わりに緑色の葉がつき始めている。また来年の春には花をつけてくれるだろうけど私はその頃にはもうここに居ないから、ここの桜は今年で見納め。

 この先私がどこで何をしていても、桜は毎年変わらずここで咲き誇るのだろうけど、巣立った私がしばらく振りにその姿を見ることが出来たとしても今年見たものと同じものを二度と見ることはない。それはもはや別のものだから今年の桜はあくまでも今年の桜。


「ゼイネバハードオーラー」


 それは人も同じ。離れてしまった人に久しぶりに会って、たとえその時一瞬にして時間が過去に戻ったような感覚になったとしても、それは過ぎ去り日の残像だから、それを懐かしく眺めることは出来ても触れることは出来ない。触れ合うことが出来るのはもはや目の前に居るその時のその人だけ。


 私は置いて離れて行く側の人。そして私も変わっていく。時間を止めるなんてことは、残念ながら神様でさえ出来ないことみたい。私はそう願ったことが何度かあったんだから。


「ノーアイウォン」


 結局私が何が言いたいかというと、移ろい、変化、ということ。動産も不動産も、離れる人も留まる人も何もかもが、ゆっくりにでも急激にでも変わっていくということ。

 つまり私は今屋上にいて、手摺りの上に重ねた腕に顎を乗せて、幾分なりとも高い所から昇降口辺りに視線を遣って下校して行く生徒たちを見下ろしながらなんとなく世界の真理に触れちゃったぞと、その一端をわかったような気になっているってだけの話。

 さらに言えば、私は明日香とあまちゃんが現れるのを今か今かと待ちながら、お気に入りの音楽を耳に鳴らしてルックをちまちま摘んでいたら頭の中がこんなことになっていたってだけな話。


「パイナッポー。はい当たり」



 ここで過ごして得たものと失くしたもの。これから得るものと失うもの。パインの匂いを鼻腔いっぱいにしながら、ふと、そんなことを考える。


「んーんーんー」


 漠然とし過ぎてよくわからないけどわかっているものもある。得たものはあまちゃんこれから失うものはこれまで通りじゃなくなってしまう明日香との関係。たぶん他にもあるんだろうけどいま特に意識するものはこの二つ。


「んーんー……」


 私は私の想いを叶えるために頑張ることをしなかったけど私はそれを後悔していない。可哀想だね私の恋心って思うけど、出来ないことは出来ないし、してはいけないことをしてはいけないからそこは許してもらいたい。

 蛮勇をもって想いのままに踏み出せば何が変わったのかも知れない。それで私の恋が実を結んだのかも知れない。

 けどその実はそう遅くないうちに必ず地面に落ちてしまう終わりの見えている恋。みんながどう考えているのか知らないけど、私は死別以外で確実に来る終わりを意識しながら付き合うなんてしたくない。それでもいいなんて思えなかったしそれは今もそう。


「…んー」




「おつ。チョコの匂いがすんな。くれ」


 待ち人の一人、明日香が音もなく私の隣にやって来て私と同じような格好をとった。急に現れて驚いて、咄嗟に明日香の方を向いたら顔が近くてもっと驚いた。しかも何気に肘のところが触れ合っていてちょっと嬉しい。日向の匂いに包まれた気分になる。


「おつ。見えてたくせに。はい」


「サンキュー」


 持っていたルックを箱ごと渡し、イヤフォンを外しながらスマホを出してプレイヤーを止めてポケットに突っ込んだ。


「なに聴いてだんだよ」


「トレイシーさん。ゼイドントノウ」


「しらねぇな」


「だろうね。昔の歌だけどいい歌だよ」


「ほーん」


 訊いたくせに全然興味無さげ。それはそう。明日香の興味はチョコレート、ルックのみにロックオンされているんだから。そんなに熱い視線を向けていたら食べる前に溶けちゃいそうって思うくらいのガン見。

 私のこともそんなふうに見つめてくれてもいいんだよ、なんて思ったりもするけど、万が一にもそうなったところで私たちには先が無いからやっぱり無し。私が一人で着けた火は、鎮火するまで私が一人で対処する。どれだけ恋に焦がれようとも飛び火なんて絶対にさせない。


「椎名これ好きだよなー。私も好きだけどなー」


「好きだよ」


 私の言葉の意味を一ミリも勘違いすることもなく受け取って、だよなーなんてニコニコ笑ってそれを一粒適当に摘んで口に放り込み、すぐさま二粒目も口に放り込んだ明日香はなんとなくだけど、やっぱりイブの日以来、物理的に私との距離が近づけているような気がする。意図的なのか偶然なのか、たぶん意図的なんだろうけどその理由を私は知らないし訊かない。訊いて距離を空けられても嫌だし、明日香がそうしてくれるのなら私はそれを密かに喜びつつ受け入れて、この嬉しくもあくまで些細な出来事をこっそり噛み締めておく。


「うーん」


 その明日香の顔が微妙なものになる。


「どうしたの?」


「やっぱバナナとイチゴってあんま合わねーのな」


「え」


 まさか味わっていたとは思わなかった。驚きで声が出ちゃったけど、明日香は気にせず、うーん、お互いが主張し過ぎて口の中でケンカしちゃってんなー、香料多過ぎなんじゃねーのと、真面目な顔でそれっぽいことを呟いている。


「そ、そうかな? 私はべつに。けど料理人を目指す明日香が言うならそうなのかもね」


「だろ?」


「じゃあさ、パインとアーモンドいってみなよ。パインの匂いしかしなくなるから。アーモンド台無し」


「それじゃ意味ねぇだろ」


「はっはっはっ。その組み合わせはまだ見習いの明日香には早かったかな。ま、所詮は見習いだもんね。見習いは見習いらしく味の批評なんかしないで大人しく皿でも洗っていれば、いて」


 明日香が軽くデコピンをくれた。私はそこを摩りながらなにすんのさと明日香を睨む。カップルがいちゃいちゃしているみたいに私の中では凄く可愛い感じで。


「いや。なんかムカついたから」


「そっか。じゃあしょうがないね」


「おう」


「あっ」


「いて。なにすんだよ」


「蚊だよ蚊。肩のところにとまってたの」


 私はあたかも蚊を狙ったんだけど逃げられちゃった、だからわざとじゃないよというふうに手のひらを明日香に見せた。


「ほぉ……あ、居やがったっ。オラッ」


「うわっ、あぶなっ。あったまきたっ」


「お? やるか? 来いよ。ははは」


 うりゃうりゃと遣り合う私たち。いちゃいちゃが加速する。ただし私の中で。何も知らない明日香がそれに付き合ってくれる。私はそれで十分。





「はぁはぁ。平和だね。はぁはぁ」


「なに言ってんだよ。息あがってんじゃねーか」


 あれくらいで情けねーなって言うけど無理なものは無理。ということで、いっぱい遊んだ私たちは再び仲良く並べた体を手摺りに預けて学校を見下ろしていた。私は疲れた体を預けるようにでろんとだらしなく、明日香は凛々しく颯爽と。


「おつ」


 そして私の左側に軽い衝撃が走る。もう一人の待ち人、あまちゃんの登場だ。こちらはいつものように凄く近い。すぐに漂うこのフローラルな香りは何なんだろうっていつも思う。ダウニー? の何?


「それ。私にもちょうだい」


「やだね。あと四つしかねーもん」


「よこせ」


「やらねー」


 そして始まるじゃれ合いのような姉妹喧嘩。仲良くないと喧嘩も出来ないと私は思うからこれはこれでいいんだけど、私を間に挟んでするのはいかがなものか。あまちゃんが腕を伸ばす度に私に当たるし明日香は私を盾にしようとするしではっきり言って凄く疲れるから早めに止める。


「明日香。あまちゃんに二つあげて」


「ああ? ちっ、わかったよ。ほら」


「ふふふ」


 不服そうな明日香と勝ち誇るあまちゃん。そして私はバランサー。裁定者でもある。



「そろそろ帰ろうぜ。腹減った」


「燃費。アメ車じゃん」


「大食い」


「細けぇことはいいんだよ。ほら、行くぞ」


「はいはい。あまちゃん、行くよ」


「うん」


 こんなふうに、アレよと言う間に始まった最終学年。今日のところはこうしていつも通りに過ごせるけど、大学に専門と、目指すところが違う私たちの時間は少しずつズレてしまうから、こうした機会は段々と減って今までようにはいかなくなるの。やな感じ。


 私は先に進みたくなくなって立ち止まった。私が止まれば時の流れが止まるかもなんてことを期待して。あり得ないことだとわかっていても、どうしてもやらずにはいられなかったから。


「どうした?」

「椎名?」


「ううん。なんでもないよ」


 すぐに、不思議そうに、訝しげに、私を見る明日香とあまちゃん。

 止まらないなら進むしかない。私は微かに首を横に振って嫌な気持ちを振り払う。それから少し先で私を待つ二人に小走りに近づいて、勢いよく両の腕に腕を絡め、そのまま引っ張るように歩き出した。


「行こ」


「なっ。歩き辛えよ」

「ちょっ、椎名っ」


 歩き辛いのは当たり前。だって私はこちらを向いていた二人の腕に腕を絡めたんだから。つまり二人は今、後ろ向きに歩いているんだから笑っちゃう。


「いいからいいから、ぐわっ」






 新年度ということは当然クラス替えがあって、先の一年で構築した友人関係はリセットされた。幸いにも文系であり日本史を選択した割とマジョリティな私が新たなクラスで孤独を味わうことはなかった。みっちーがいるしその繋がりもあるし去年仲良くなった明日香とあまちゃんと同じ班だった子も何人かいたから。

 ただ、なぜか肝心の二人はこのクラスに居ないという不思議。せめて最後くらい明日香とあまちゃんと同じクラスになりたかったのに。



「いってらー」


「うん」


 そして完全に落ち着いた四月の半ばのお昼休み、私はこれまでと同じように体育館裏へ向かうためにお弁当とペットボトルのお茶と参考書を持って教室を出た。


「椎名」


「おーす」


 廊下に溜まる見知った顔と挨拶を交わしたり、すれ違う下の学年の男の子たちの男子特有の視線を感じたりしながらそこに辿り着き、いつもの階段に腰掛けて耳にイヤホンを差し込んでプレイリストを再生する。続けて脇にお弁当を広げ膝の上で参考書を開く。それから片手でサクサク食べられる優れものの憎いやつ、ながら勉強するには持って来いのサンドイッチを手に取って齧った。これで私の世界は完成だ。暫くは。



 やがてガシャガシャと音が聞こえてきて、顔を上げると明日香がフェンスを乗り越えていた。手には何やら見なれないお店の袋が握られている。

 やることはがさつでも黙って動かずにいれば清楚な感じに見えなくもない、見た目はすっかり綺麗な女の子になった明日香がよって手を上げながら近づいて来る。私も手を振り返し、音を消して参考書を閉じた。



「今日はなに? また中華まんシリーズ?」


「ちげーよ。ほら」


 私のすぐ隣、寄りかかるくらいの距離にどかっと座り、bonbonとロゴの入った袋の口を私に向けて開き、中身を見せつつ焼きそばパンとナポリタンサンドとカレーパンとあんぱん牛乳。あとカヌレ二個な、すげぇだろって言っているけど私はやっぱり近くなったよなぁと、明日香の説明とは違うことを考えていた。


「いつのまにかパン屋ができたみてーなんだよ」


 あっちの方に。そう言って明日香はよくわからない方向を指差した。私がそれに釣られる間もなくその指はすぐに引っ込んで、うまそうだろーって獲物を見せて満足したのか袋をガサガサとやり始める。


「へぇ。遠いの?」


「いんや」


「なら私も行ってみたい」


「お。なら明日行くか」


「いいけど、いいの?」


ふぁ()? ふぁんふぁ(なにが)?」


 明日香は既にパンに齧り付いていた。私は明日もパンになっちゃうよって伝えたつもりだったけど明日香はそういう人だった。そしてそれは私もだ。


「うまうま」


 美味しそうに獲物を頬張る明日香はなんだかとても眩しく見える。本当に綺麗になったなぁって思う。




「ういー。食った食った」


「相変わらずおっさんぽいね」


 これひとつやるよと明日香がくれたカヌレを食べながら、ぽんぽんお腹を叩いている明日香そう伝える。そんな姿を見れば大抵の男の子は引くだろうけど私は好ましく思えるから問題なし。大体、男子は女子に幻想を抱き過ぎ。女子だってナニもするしナニもするしナニだってする。なんならナニだってしちゃう時もあるんだから。ただね。


「べつにいいだろ」


「そうだね」


 無関心を装いつつも人にあげたカヌレに視線を固定したままなのはどうかと思うし笑っちゃうからやめてほしいなと思う。


「ぷ」


「ん?」


 このままだと堪えきれずに吹き出してしまう。私は残ったカヌレを半分にちぎって口に入れ、もう半分を明日香に渡した。明日香はそれを、それはそれは嬉しそうに受け取った。

 明日香がそれを口の中へ放り込んで、三回噛んでそこから消えた。わー、モサモサしてるのにすごいねーという私の呆れが混じった羨望の眼差しを明日香は軽くスルーする。


「そう言や水野は? ああ、この時間まで来ねぇんなら今日は来ねぇか」


「あまちゃんは風邪でお休み。熱出して寝てるってさっきメッセージ来た。暇ならアイスとオレジュ買ってお見舞いに来いって。ご丁寧に家までの地図も貼ってあるの。あまちゃんちって駅直結のタワマンなのに。絶対地図要らないよね?」


 私はスマホを取ってアプリを開いて渡すと明日香はそれに視線を落とした。


「熱で頭がどうにかなってんじゃねぇの? 四十度超えるとヤバいって言うからな」


「それは男の人の話じゃないの? タネができなくなるとかそういう感じの」


「まじ? そうなのかよ?」


「さぁ?」


 なぜか間が空く私たち。明日香話頭の上に疑問符を乗っけたままで私は首を傾げたままお互いにパチパチと瞬きを交えて見つめ合うこと約五秒。その沈黙を破ったのは明日香だった。


「ま、んなこたぁどうでもいいわな」


「だね。けど明日香」


「なんだよ」


「今の間はなんだったんだろう? 不思議」


「さぁな、ぷっ」


「変だよねあはは」


 そんなことでも笑える私たち。箸が転がったところで全然笑えないけど、なにがおかしかったかなんてその時その時で人それぞれなの。




「にしてもこの文面、水野のやつ、いつにも増して遠慮ねぇな。ウケるわ」


 笑いが収まったところで、渡したスマホを返しながら明日香が言った。


「ね」


 確かに文面の表面だけを読めば私たちを呼びつけているようにも取れるけどそうじゃない。この文面は単に、誰もいない家でちょっと心細くなっちゃったから私たちに来て欲しいと甘えてみただけの照れ隠し。初めてのことで素直になれなかっただけでツンの部分が異様に出ちゃっただけ。

 強がりで孤高を選んだあまちゃんはこういう時もたった独りで耐えてきた。だけど今はこうして弱った時に頼ろうと思える友だちが出来たという実はとてもめでたい話。

 明日香もそれに気付いているから、ウケるわはははと笑っているの。


「行くんだろ?」


 どうせ的に訊いてくるあたり、やっぱり明日香は気付いていた。ぱっと見どう思われていようとも、明日香は明日香。優しい人だ。


「うん。今日は予備校ないから行くつもり。明日香はどうする? て言うか明日香にもメールが来てると思うけど」


 そしてこのメッセージは、二年付き合って来てようやくのご招待メッセージ。これを逃すわけにはいかないし、行かないとあまちゃんが泣いて拗ねてしまう。あまちゃんが拗ねることは割とあるからどうでもいいけど私はあまちゃんを泣かしたくない。


「かもな。ちょい待ち。おお、来てるな。えーっと、椎名を連れてお見舞いに来いっだってよ」


「やっぱり来て、じゃないんだね」


「来い、だな。水野らしいわ」


「だね」


 私たちは笑った。馬鹿にするでも呆れるでもなく嬉しくて。いかにもあまちゃんらしいけどその実が私たちにはバレていることが、あまちゃんもそれに気づいているくせに素直になれないところがなんともあまちゃんらしくて微笑ましくて可笑しくて。


「しゃーねーな。水野のお望み通り椎名を連れて行くか」


「私はアイスを買って行かなきゃ」


「ったく。手間がかかるやつだよな」


「まぁまぁ。一番下の妹みたいなもんだもん。そりゃあ手間もかかるよ。そんなこと言って、明日香だっていつもあまちゃんのこと気にしてるよね? それって放って置けないからでしょ?」


「かもな」


 素っ気ない返事をしたと思ったら明日香は不自然にそっぽを向いた。これはアレだなと思って、私は回り込むようにしてその顔を覗き込む。


「やっぱりな。照れてる」


「うるせー」


「明日香ってなんだかんだ優しいんだよね」


「う、うるさいよ」




 そして放課後、少し混んでいる電車の中、座席を見つけて並んで座る私と明日香は片方ずつの耳にイヤホンをつけて音楽を聴いていた。さっきのトレイシーさんのヤツちょっと聴かせてくれよと言ってくれたから。コードが短いせいで明日香がピッタリ私にフィットしていて何よりです。堪らなくくすぐったくなるような三分半。


「どう? よくない?」


「悪くねぇな」


「ぶー。素直に良いって言いなよ」


「ははは」


 そこから二駅分はお喋りタイム。くだらないこと、真面目なこと、過去のこと、今のこと、未来のこと。色々話したいけど二駅分では到底話し切ることは出来ない。一晩中だって無理。だから私はこれから起こるだろうことを予告しておくだけにしておく。


「たぶんね、あまちゃん実は大したことないんだよ」


「そうか?」


「そんでね、私たちが着いたらね、嬉しいくせに、おっそとか、早くアイスをよこせとかって憎まれ口を叩くの」


「あー。そりゃ想像できるわ。てかあれだな、そっちの方がしっくりくるな」


「でしょ。まぁ、たぶんそんな感じだよ」


「あ、この駅じゃねえの? 降りるぞ」


「うん」




 そのあとちゃんとお高いアイスを買って、迷子になる方が難しいタワマン着いた。やっぱり地図は要らなかった。あまちゃんには是非とも突っ込みを入れてあげようと思う。


「高ぇ」


「ね」


「しっかしよぉ、コンシェルジュってなんなんだよな」


「本当にいるんだね。びっくりだよ」


「椎名様と黒田様ですね。水野様から承っております、だってよー」


「あはは。似てる」


「ではこちらのエレベーターからお上がり下さい。失礼致します、だぞ?」


「いいね。明日香、そっち方面向いてるんじゃないの」


「やだよ」


「だよね」


 その、十階より上はこちらからと言われたエレベーターを降りて二人でそんなことを話しながらあまちゃんの家の前、インターホンを押す、と、殆ど同時に扉が開き、至って普通のあまちゃんが顔を出した。


「遅い。で、アイスは?」


「ね。元気でしょ? それに見てよこの顔。凄く嬉しそうでしょ? ふふふ」


「あ?」


「ヤベぇ。すげぇな椎名。お前トラダムスかよ。まじウケるわ。わはははは」


「ぷっ。ちょっ、明日香っ。トラダムスって、なんでそこで切るの? 切るならダムスでいいでしょ。あっはっはっ」


「ダムス?」



 駄目。お腹痛い。






お疲れ様でございました。ありがとうございまっす。


一応端折らずプロット通りに進めていくことにしました。中々話が進まなくてごめんなさいです。


ところでどなたか、らーらーらー、ららー、らーらーらー、らーららららー、ベイベーなんたらかんたらー、という海の向こうの曲をご存知ありませんでしょうか? って、分かる筈ないですね、すいません。三日ほどモヤモヤしていまして…くっ。


読んでくれてありがとうございます。

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