3−1視察か作法か
「先程は大変申し訳ございませんでした!!
どうか……どうか不敬にだけは〜」
頭を地面に擦り付けて
誠心誠意謝罪する
貴族小説あるある……王子に意見した
メイドは不敬の罰で次々に辞めさせられる
とか……
私は辺境の地で田舎暮らしを
させられるに違いない
プライド? 私にそんなものはございません
自分のためならいくらでも地面に頭を
付けましょう
「何をしている!
そんなことをする必要はない……頭を上げろ」
「ほら、アルトもそう言ってることだし
女の子がいつまでも地面に頭を
付けるのは良くないよ……せっかくの洋装が
汚れてしまっては勿体ないじゃん?」
それで……その笑顔で数えきれないほどの
女性を落としてきたと言うのか!!
くっ……危うく落とされるとこだった
あ、そういえば私
借り物のドレスを着てるままだった
流石に持ち主に申し訳なさすぎて立ち上がる
またマーク王子に誘導されるがまま
隣の席に着席した
「ここ最近のことだ……聖女だと名乗る
偽物が村で出没しているとの情報が
いくつも上がっている
だからと言って…………これは言い訳に
しかならないのだが、君の装いで
聖女の偽物だと判断してしまった」
改めて深々と頭を下げる王子
牢屋にぶち込まれたことは許さんが
冷酷王子……というのは修正しよう
過ちに気づいて下々にも直ぐに頭を
下げられる…………いい王子様だ
「いやいや、私もさっき
かなり言いたいことを言ってしまったので
…………この話はトイレに流しましょう」
「プッ」
ん? なんだ?
誰だよ私が寛大な心で水に流そうと
していると言うのに笑うやつは
「えっと…………第二王子……さま?」
すぐ隣を見ればなぜか必死に口とお腹を押さえて
笑いを堪えている第二王子
え? なんで?
「あ、あははっ……ごめん
君の行動がいちいち……奇行で……くくっ」
誰が奇行種だ
「君みたいな子は初めてだよ」
「それはそれは、おありがたいお言葉で〜
おほほほ〜」
お上品に口に手を当て笑ったら
また第二王子のツボに入ったらしい
私は小説に出てくる貴族令嬢の真似をした
だけなのだが
「愛華の友人であることも聞いた……
衣食住に困っているのであれば……遠分は
この城で過ごすといい」
おぉ、ものわかりがいい王子様なことで
さすが一国の王子
私にとってありがたい提案をするアーノルド王子
「えぇ〜、困ってるんだったら
俺の王国に来ればいいんじゃない?」
頬杖をついて怪しげな笑みで私を下から
見上げる
あぁ………だめだ!! 破壊力半端ない!!
さすが小説の中のイケメン第二王子様
「いや、お言葉だけ
ありがたく受け取っておきます……ほほ」
やんわりとマーク第二王子の誘いを断る
ここから離れたらせっかくのラブイベントを
間近で見るチャンスを見逃してしまう
ここに来たなら絶対一度は帰る前に見たい
「可愛がってあげるのに……ざ〜んねん」
あざとく残念がる第二王子……
まじか……誘いに乗ってたら
危うく可愛がられるとこだったのか
「まだ話は終わっていない」
マーク第二王子に困り果てた
ようにため息を付き、話を続ける
あ、まだ話終わってなかったのか
「城では自由に過ごしてもらって構わない
ただし………………」
ただし? 私は緊張でつばを飲む
「ただし……愛華のサポートに当たること……
それが条件だ」
愛華ちゃんの? サポート?