1−4
「…………
どうしてこうなった……」
二人の王子と遭遇して
急にバス酔いしたみたいに
気持ち悪くなって…………
目が覚めたら
漫画でよく見かける悪女を投獄するのに
定番な地下の牢らしき冷たく硬いコンクリの
上でした
え?私なにかした?
バナナの皮を捨てたから?
ほんとに申し訳無いと思ってるよ!!
でもね?………私は地下牢に投獄
されるほどの重たい罪わを犯したのだろうか?
何度考えても行き着く先がない
なぜなら私は何の罪も犯してはいない…………
なら心配することないので…………と思うが
しかしカバンを取り上げられて
しまった私にはやることも為す術もない
上を見上げれば小さな窓から
月明かりが差し込んでるのが見えた
あぁ、なんてキレイ肉まんだろうか………
先程私に与えられた晩ごはんは
それはそれはひどいもので
石のようにカッチカチのパンと
ハエが水泳しているクラムチャウダー
らしきなにかだった
これは流石にひどすぎる
漫画でよくある投獄された悪役令嬢
でもさすがに同情するよ
監視役は耳が遠いご老人なのか
私の無罪演説を完全スルー
かと思いきや脱獄宣言をしたら
ギロリと睨まれた
その時はお前の命はない……と言われているような
仕方なく抵抗を諦めコンクリで
大の字になり寝転がる
私が風邪でも引いて無罪だとわかったら
慰謝料を請求してやるからな
覚えてろよクソ王子共め!!
「はっ!?」
私の目端が何か、カサカサと動く
黒い物体を捉えた
も、もしや……………
「ぎいぃぃぃぃやあぁぁぁぁぁっ!!!?」
私はすぐさま飛び起きて鉄格子にしがみつく
やだやだ! こんな狭い牢屋じゃ
逃げ場がない……八方塞がりじゃないか!!
「おぉ!お願い!!助けて警備さん!!
今絶体絶命のピンチだから!!!! 命にかかわる
問題だから!! 約束する! 絶対に脱獄
したりしないから!!
だから今だけ出してくださいお願いします!!!」
まったくもってピクリとも
反応しない警備……寝てるの?
立ったまま居眠りしてるの?
「元気ですかーー! 警備さーん!
居眠りしてたら王子様に告げ口
しちゃいますよー…………………はぁ…………はぁ」
駄目だ……私の喉が枯れただけだった
あれ人間か? 人形じゃないよね?
うぅ、こわいよぉ……
いつあのつややかな羽をはばたか
せるか考えただけでも恐ろしい
完全に諦めかけたその時、
私の耳に微かに聞こえたこちらに近づく足音
だ、だれ? 誰かがこちらに
向かって来てる?
一歩下がろうとしたが後ろにもヤツがいる
「ここに……女の子が投獄されているのですか?」
「はい、間違いありません」
透き通るほどキレイな声が
地下牢に響いた
キィっと重ただしい扉がゆっくりと開かれる
「えっ………………」
そこに姿を現したのは
この地下牢とは釣り合わなすぎるほど
美しく、とにかく美しすぎる
まるで女神様のような…………
そんな言葉が頭を過ぎった直後………
とある小説の文面を思い出した
"召喚された少女は誰もが目を奪われるほど
美しい女神ような存在だった”
行き着く先は「恋する聖女様」という小説の………
聖女ヒロイン!!??
つまりここはその小説の世界と言う事………
私が最初に会った王子様は
おそらく……ラーナ王国第一王子の
アーノルド・ウィント……聖女様と隣国の王子にのみ
アルト……と呼ばれている……んだったよね
でもなぜ私が転移?
手違い召喚とかじゃないよね?
私にも何か役目があると言う事で?
「うっ………まぶしぃ」
女神さま………いや聖女アイカ様………
こんなに美しいなら王子達が惚れてしまいのも
わかる……心もキレイだし
「せ、聖女様!!……このような所に
いったいなに用で…………」
衛兵は聖女様を見るや否や
さっきの私とは打って変わった態度で
ペコペコと、頭を下げる
その耳は飾りじゃなかったのか…………
衛兵にペコリと頭を下げて
私の方へ向かってくる
聖女様………もしや天国へ旅立つため
のお迎えに来てくださったのだろうか…………
「あなたが………柏木杏子さんね」
「は、はい! いかにも私が
柏木 杏子 です」
こんな美しい聖女様に声をかけられたら
ドギマギしてしまう
「もう安心して、私はあなたを助けに来たの!
その黒髪黒目………そしてその制服……あなたは……
あなたは私と同じ異世界……
日本から来たんでしょう?」
…………はい?