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作者: 浅倉 涼雨

初投稿の処女作となります。

短くはありますが、お楽しみ下さいませ。


 深く、暗く、冷たい、光さえ届くことのない海の底。


 危険に満ちた生き物たちが生きるそこに、一つの泡が誕生した。


 泡はまず、体を上に運び続けて、冷たい海の底から抜け出すことを考えた。


 途中で顔の半分を口が埋める魚に出会い、とても大きな魚達が争っている場面にも遭遇した。


 ふわふわと漂う、変な柔らかい生き物にも出会った。


 真っ暗で何も見えないと思っていても、色々な生き物たちがいることを泡は学んでいった。





 いつしか海の底は遥か遠くになり、周りが少しだけ明るくなったように感じた。


 顔の怖い生き物たちも見かけなくなった。


 第一の目標を達成した泡はしばらくの間、とりとめもなくぷかぷかと漂い続ける。


 相変わらず大きな生き物はいるものの、小さな生き物が群れになって泳いでいたりもする。


 一度だけ泡は好奇心でその群れに突っ込み、しばらくの間何も考えることが出来なくなるほどに目を回した。





 だんだんと周りが明るくなっていき、今までより遠くまで見渡すこともできるようになった頃。


 泡は、いつしか海の天井を目指すようになっていた。





 体が固く、背中にカクカクした模様がある生き物に乗せてもらい、かなりの距離を移動した。


 期待と夢をその体に詰め込み、その生き物と多くの会話を交わした泡は、衝撃の事実を知ってしまう。


 泡は、というか水に生きる生き物のほぼ全ては、天井を越えると生きることができないらしい。


 本当なのか何度も確認した。でも、乗せてくれた生き物たち全員がそう言った。


 なんということだろうか。つまり泡は、目標や夢に向かって上に向かっていたつもりが、本当はその寿命を縮めていただけだったのだ。


 これには泡も慌てて下を目指そうとしたが、何が変わるわけでもなく、上へ上へと体が運ばれていってしまう。


 たまに親切な生き物たちが、体に乗せてくれて下に向かってくれることもあった。


 だが、途中で体が引き剥がされて上を目指してしまうのだ。


 同じことを何十回も繰り返して抵抗を続けたが、いつの間にか泡は運命を受け入れるようになっていた。





 ぷかぷかと浮かぶこの体が生まれて、色々なことを経験した。


 怖い思いも、楽しい思いも、泡の命にしては多くを経験した。


 今まで出会った生き物や光景を、一つ一つ大切に思い返す。





 やがて、海の天井が近づいてきた。


 ゆらゆらと差し込む光に目を奪われ、穏やかな気持ちが泡を満たす。


 近くを泳いでいた生き物と最後に戯れて、泡は海の天井にたどり着いた。





 水で埋めつくされた世界とは違う、別の何かで埋め尽くされた世界。


 知っている青色とは違う、けれどとても美しい青色が、ずっと遠くにあった。


 あぁ、なんて綺麗なのだろう。 

 叶うのなら、次はこの世界を見てまわりたい……。


 そんな願いとともに、泡は穏やかな海風に吹かれて命を終えた。




最後までお付き合い頂きありがとうございます。

よろしければ感想、星、いいねなどを頂けたら幸いです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 一生をかけた壮大な冒険ですね。短かったけれど、その生涯が充実したものでよかったなと思いました。
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