第5話 成人の日
――ドンドン
扉を叩く音で、シキは目を覚ました。
(うるさいな…)
シキは玄関へと向かった。
「何だよ?」
「ブルだ。成人の日だぞ。早く起きてこいよ。」
「わかった。すぐに向かうから。」
ブルが起こしに来たようだった。
シキは違和感を感じた。
(イロは…?)
いつも、先に起きているはずのイロがいなかった。
シキはイロの部屋へと向かった。
「おーい。起きろー。」
返事がない。
「イロー?入るぞー?」
シキが部屋に入った。
イロは寝ているようだった。
「おーい、起きろー。おーい。」
目を覚ます様子は伺えない。
シキは夢を思い出し、不安を覚えた。
「イロ?起きろって!」
呼びかけても、揺さぶっても、イロは目を覚さない。
シキは、慌てて家を飛び出した。
「ブル!待ってくれブル!イロの様子がおかしい。
――医者…医者を連れて来てくれ…頼む。」
シキの慌てた様子に、驚いたブルだったが、急いで医者を呼びに向かった。
――
「眠っているようだな…」
医者はシキに向かって言った。
「眠ってるって…おかしいだろ!起きないんだぞ。」
「息もしているし、異常はない。目が覚めない原因がわからないんだ。」
「何言ってるんだ…起きないことが異常だろ!」
「だから、起きない原因がわからないんだ!」
「……」
医者は、ゆっくりと立ち上がり家を出た。
大勢の島民が、家の前に立っていた。
「イロさんは?どうしたの?」
「わからない…目を覚まさないんだ。」
医者の言葉に島民たちは、言葉が出なかった。
島民たちの後ろから、端正な顔立ちの男が現れた。
「今日は、成人の日でしょう?こんな所で何をしているのですか?」
男が言った。島の者ではないようで、綺麗な身なりをしている。
「3色持ちの少女が成人を迎えるということで、勧誘にきたのですが…」
「イロなら、家の中で眠っている。目を覚まさないんだ。」
医者が男に答えた。
男は、シキたちの家の中へ入っていった。
「失礼します。私は、ルフラという者ですが、3色の少女はどちらに?」
返事はない。ルフラは、部屋を見て回った。
ルフラがイロの部屋を見つけ、中に入るとシキが言った。
「誰だ…」
「私は、ルフラといいます。そこの少女が3色持ちですか?」
「そうだ…イロだ。」
「少女は、本当に3色持ちなのですか?」
「そうだ…だからどうしたんだ!今はそれどころじゃないんだ…」
「その少女は、私が預かります。」
「……何を言ってる?」
「その少女は、私が預かると言ったのです。」
「イロだ!預かるって何だよ?」
「本当に3色持ちなら、世界にただ1人です。なので、私が預かります。」
「意味がわからねぇよ!イロは目を覚まさないんだ!お前に預けてどうにかなるのかよ!」
「わかりません。けれど、君がそばにいても一緒でしょう?」
「俺が、どうにかするさ…知らねえ奴に預けれるか!」
「落ち着いてください、少年。よく考えるのです。私は王国騎士団団長です。」
「だから、何だよ!いい加減にしろ。お前に預けはしない。」
「私が預かった方が、少女のためです。」
「イロだって言ってんだろ!」
シキはルフラに殴りかかった。
訳が分からなかった。ただ、悲しみや不安を誰かにぶつけたかっただけかもしれない。
シキの拳は、ルフラの頬を捉えた。
ルフラは壁にぶつかり、大きな物音を立てた。
「落ち着いてください。その、少女――イロは世界にただ1人の、3色持ちです。私としても目を覚まして欲しい。だから、王国騎士団に――私に預けてくれませんか?」
ルフラは、シキに問いかけた。
「シキ!何があった?」
物音を聞いたブルが部屋に入って来た。
「イロが目を覚まさない…俺は、どうしたらいいかわからない…こいつが、イロを預かるって…」
シキの目から涙が溢れた――
――イロはルフラに抱えられ、港へと連れられていった。
島民はイロの状態を聞き、悲しんだが同時に安心していた。
王国で原因を探り、回復させるとルフラが伝えたからだ。
シキも港まで着いて行った。
シキはルフラの船を見て、再び思い出した。昨日の夢のことを…
「昨日、夢を見たんだ…夢の中でお前の船も見えた…」
ルフラは不思議に思ったが、シキの話に耳を傾けた。
「島が見えた…皆の姿も…イロのそばに立っていた。イロのそばにキャンバスが浮いていた…それが、イロから色を奪っていた…俺が、俺が助けてやれば…」
「夢は夢です。……君のせいではありません。」
ルフラは優しく、シキに伝えた――
次回は明日、
6月9日(水)21時です。
次回もお楽しみください♪




