第17話 ハンプ山へ
――ハンプについたアカとシキが言い争っている。
「あれは俺の勝ちだった。」
「いーや、あたしの勝ちだね。」
「お前、投げられただろ?」
「最後の1回だけじゃん!それまで何回投げられたのさ!」
「最後の勝負で決めるって言っただろ!」
「だって、あんなとこに石があったから…」
「石があろうが滑ろうが、俺の勝ちだ!」
「……ふ〜ん。そんな、勝ち方でいいんだ。」
「――わかったよ。俺の負けでいいよ。」
どうやら、昨夜の組み手の勝敗で揉めていたようだ。
「じゃあ、シキが負けたから言うことひとつ聞いてね。」
「そんな話してなかっただろ!」
「えー、そうだっけー?」
「えーじゃねーよ!してな――」
――ドンッ
何かがシキにぶつかった。シキは少しバランスを崩した。
シキとぶつかったのは少年だった。尻餅をついている。
アカが声をかけた。
「大丈夫〜?そんなに慌ててどうしたの?」
「お前、周り見て歩けよ!危ないだろーが!」
シキはアカとの話もあり、機嫌が悪かった。
「シキ、そんなこと言わない。ぶつかったんだから謝りなさい。」
「何でだよ!ぶつかってきたのこいつだろ!」
「あなたの方がお兄さんなんだから。」
シキはまだ幼い少年を見て、落ち着きを取り戻した。
少年は何か、急いでいるようだった。アカは少年を心配に思って話を聞いた。
――知り合いが山から戻ってこないこと。
――山が危険な状態にあること。
――手助けをしてくれる人がいないこと。
――少年の名前はリンネルということ。
リンネルの話を聞き、2人は手助けをすることに決めた。
シキは泣いているリンネルに言った。
「とりあえず、山の方に行ってみるか。早い方がいいんだろ?」
「はい。お願いします。」
リンネルは涙を腕で拭って顔を上げた。
3人は急いで山の方へと向かった。山に入ろうとした時、警備の男たちが3人に声をかけた。
「おい!どこに行くつもりだ?今、ハンプ山には木人形が多く出ている。危険だから戻りなさい。」
「木人形?何だそれ?」
シキが警備の男に尋ねた。
「そんなことも知らないのか?木人形は人の形をした木の化け物だ。知性はないが、人を襲うことがある。それが多く発生してるから、入山はやめておけ。」
「なるほどな〜。そいつらがいるからリンネルは慌ててたわけだ。」
「わかったら、街に戻りなさい。」
「だってよ。リンネル、お前は街に戻ってろ。俺とアカで連れて帰ってくるからさ。」
「俺も行くよ!」
「ん〜…リンネル君。ここはお姉さん達に任せな。大丈夫!連れて帰ってくるからね!」
「でもっ…」
「でも、じゃねーよ。ガキを危ない目に合わせるわけにはいかねぇ。おじさんの名前は?」
「……ズック。」
「特徴は?」
「体格のいい、髭のもさっとしたおじさん……」
「わかった。大丈夫だ、任せとけ。」
「……」
リンネルは、自分が子どもであることを悔しく思った。
だが、シキとアカの言ってることを理解できないほど子どもでもなかった。だからこそ、待つことしかできない自分が情けなく思えた。
「じゃあ、行ってくる」
「リンネル君、街で待っててね。」
「……気をつけてね。」
リンネルは拳を握り締めながら2人を見送った。
「おいおい、だからやめとけって。君たちが誰かは知らないが危険だ――」
警備の男たちがシキの肩を掴んだ。
シキは立ち止まって言った。
「じゃあ、あんた達が助けに行くのかよ?」
「そう言う話じゃない!危険だから止めてるんだ。」
「でも、誰かは行かなくちゃ行けないだろ?」
「だから、少し待って捜索隊を――」
「待ってたら、手遅れかもしれねーだろ?」
「…だが、だからといって君たちを危険に晒すわけには行かない。」
「俺たちなら大丈夫だから。」
「話にならん。私達は警備として通すわけにはいかんのだ。」
そう言って、警備の男達は2人を取り押さえようとした。
シキとアカは男達の手を振り解き、ハンプ山へと走った。
「シキー。後で捕まっちゃうかもよ?」
「仕方ないだろ。後のことは助けてから考えよう。」
「ほんと、行き当たりばったり…」
2人は警備の男達を置き去りにハンプ山へと入っていった――
次回は
7月2日(金)21時
投稿です。
ぜひ、お楽しみください♪




