第12話 セキ
――シキは女と食事をしていた。
赤髪の女に助けられ、そのまま店へと連れて行かれていた。
「あの〜…ありがとうございました。」
「ん?あぁ、いいってことよ。ご飯奢ってくれてるし!」
「…え?ここ、俺持ち?」
「助けたんだから、当然だろ〜」
「……。ところで、お名前は?」
「あたしか?あたしはセキ。」
「そーですか。セキですか……ってセキ⁉︎」
「そーだよ?何だよ、あたしのファンか?」
「いや、違う。ルフラって奴にお前を尋ねろって言われたんだ。」
「ん〜…ルフラ?知らないな〜。」
「ルフラが言ったんだ。セキが戦うための技術を教えてくれるって――」
「あ〜…じゃあ、それはおじいちゃんのことかな〜」
「は?いや、そーじゃなくてセキってお前だろ?」
「うん。今のセキはあたしだね。」
「どーゆーことだよ?」
「うちは道場やってて、師範がセキって名乗る決まりなんだ。」
「……それで?」
「おじいちゃんは前の師範、今はあたしが師範ってこと。」
「……それで、ルフラの言ってたセキは?」
「道場にいるけど〜」
「会わせてくれ。頼む!」
「いいけど…」
シキは立ち上がって大声で叫んだ。
「お勘定、置いときます!」
「何もそんなに急がなくても…」
シキはセキの手を取り、店を出た。
「その道場ってどっちだ?」
「はぁ……ご飯まだ残ってたのに…。」
「早く連れていってくれ!」
「わかったわかった。君、わりと強引なんだね。」
セキは名残惜しそうに店を見ながら、歩きだした。
「そういえば、君の名前は?」
「俺は、シキだ。」
「どこから来たの?」
「フナバ島から。」
「何しに来たの?」
「探し物だ。」
「何で強くなりたいの?」
「一人旅だからな。身の安全を守るためだ。」
「じゃあ、好きな食べ物は?」
「もう、いいだろ。お前は質問が多いな。」
「着くまで暇かな?と思ったからだよ〜」
「大丈夫だ、別に話すような事はない。急いでくれ。」
「はいはい。」
――セキが立ち止まった。
セキ流護身術道場と書いた看板のある、大きな家の前だった。
「ここが、家――」
セキがシキに話しかけた時、
塀の上から声と共に、老人が落ちて来た。
「うぉぉおお。じーちゃん待っとったぞう!」
「た、ただいま。おじいちゃん。」
「おかえり!おかえりじゃあ。怪我はないか?」
「大丈夫だって!あたしだってもういい歳なんだからっ」
「むう…だが、ワシにとっては変わらず孫じゃ」
「ごめんね〜シキ君。おじいちゃんのゼンタです。」
セキがバツが悪そうにシキ紹介した。
「はじめまして、ゼンタさん。俺はシキって言います。」
「お主は孫の何なのだ。」
「いや、さっき会ったばかりで…」
「さっき会ったばかりなのに、実家まで挨拶に来たのか?」
「いや、そうではなく…」
「まだ、孫はやらんぞ!」
「いえ、俺はセキという人に会いに…」
「ワシの孫はやらん!」
「ちょっと、おじいちゃん!シキ君はおじいちゃんに会いに来たんだよ!」
セキがシキとゼンタの間に入り、説明をした。
「ふむ…ルフラが…」
「はい。セキという人に会えば、戦うための技術を教えてくれると。」
「シキ君、君はなぜ強さを求めるのだ?」
「自分の身を守り、大切な人を救うためです。」
「そうか……大切な人って孫じゃなかろうな。」
「…違います。共に育った、イロという女の子です。」
「まぁ、良いじゃろう。このセキが基礎だけでも叩き込んでやろう。」
「……ん?セキはお孫さんの方――」
「あ〜シキ君、とりあえず中に入ろっか!」
セキが話を遮り、シキを自宅へと連れていった。
ゼンタが後ろからついてくる中、セキは小声でシキに伝えた。
「まだ、おじいちゃんには認めてもらってないから。私が勝手にセキって名乗ってるだけ…。だから、話し合わせといて。」
「なんで、そんなこと……」
「いつまでも、認めてくれないんだから仕方ないだろ。」
「はぁ…わかったよ。お前、嘘ついてたんだな〜」
「嘘じゃないよ!実力はあるんだから!」
「はいはい。」
話しているうちに道場に到着した。
「シキ君。しばらく、この道場に通いなさい。」
「わかりました。よろしくお願いします。」
「ちなみに、どこに宿をとっておる?」
「…とってないです。」
「え、金はあるのか?」
「……あまり」
「稽古をつけると言っても、無料じゃないぞ?」
「……」
「どうするつもりなんじゃ。」
「…とりあえず、働きながら通います。」
「どこでじゃ?」
「……」
「…ふぅ。――甘いのお。」
「どうにか、お願いします。」
「出直してくるのだ。」
ゼンタがその場を立ち去ろうとした。
シキはセキに近づき、ゼンタに向けていった。
「お孫さんは、綺麗ですね。」
ゼンタが立ち止まった。
シキはセキに小声でいった。
「セキって名乗った件は黙っとくから。話を合わせてくれ――」
「先程、お孫さんと食事をしました。2人で。」
「会話も弾み、また2人で食事に行く約束もしました。」
「正直、少し惹かれています。」
ゼンタは黙って聞いている。
セキはおどおどとしながら、小声でシキに言った。
「やめときな、シキ君。おじいちゃん怒るから…」
シキはやめなかった。
「また、食事に行って。次は2人で出かけて…」
「気づけば、お互いに惹かれ合うこともあるかもしれません。」
「その時はどうか、よろしくお願いしますね。おじいちゃん!」
「だーれが、お前のおじいちゃんか!お前のような馬の骨に孫はやらん!」
ゼンタが口を開き、大声で怒鳴りながらシキにつめよった。
「では、ここにおいてください。ここなら、ゼンタさん。監視できますよね。」
「ふざけるな。一つ屋根の下に、おらせるものか!」
「じゃあ、外で会うだけです。」
「そもそも、アカにそんな気持ちはないじゃろ!」
ゼンタがセキ――アカの方を振り向いた。
「そうじゃろ!アカ!」
「……いや、そのおじいちゃん。」
シキはすかさず、アカに言い放った。
「アカ!2人で仲睦まじく、暮らしていこう!」
「あぁ……うん……」
ゼンタは目の前が真っ暗になった――
「お前…ここで生活しろ…ワシの目の届く所で…」
弱々しい声が、道場に響いた――
次回は
6月21日(月)21時
投稿です。
ぜひ、お楽しみください♪




