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兄が妹大好き小説を書いているのを知ってしまったら、妹としてどう反応すればいいんですか?

 

 小説投稿サイト?


 自分のパソコンの調子が今一でDVDが見れなかった……お気に入りのDVDで毎日癒される。それが私の生き甲斐なのだ。

 リビングではちょっと見れない内容……あ、エッチな奴ではないからね!


 私は仕方なく、兄ちゃんの部屋のノートパソコンをちょっと拝借しに来ていた。

 さっき「友達とご飯食べてくるから母さんに言っといて」とメッセージが入ったので兄ちゃんは暫く帰って来ない。


 兄ちゃんのパソコンは、たまに内緒で借りている。いつもならブックマークや履歴なんか何も残っていない……私が内緒で使っているのを知っているのか? それともお母さんが掃除で入ったりするからなのか?


 まあでも、兄ちゃんのそう言った趣味を知りたいわけではないし、逆に知っちゃうと、ちょっと気まずい……べ、別に……興味なんかないんだからね!


 でも……、今日は違った。

 いつも電源が落ちているけど、今日はスリープ状態……兄ちゃん昨日電源落とし忘れた? 

 そう思いながらスリープを解除すると、ブラウザーも起動したままだった。

 そしてその表示されているページは某小説投稿サイトのトップページだ。


「ふーーん兄ちゃん、こういうの読んでるんだ……」


 何気なく兄ちゃんってどんなの読んでいるんだろうとユーザーページを表示させるがブックマークの所に登録はない。


 しかし執筆中の小説という欄に1件登録がある…………えええええ!


「えええ? 兄ちゃんって……小説とか書くの?!」

 凄く興味があった、兄ちゃんって理系じゃなかったっけ?

 理系男子の兄ちゃんが小説??凄く不思議でタイトルを見ると。



『妹と付き合いたいんだが、どうすれば妹と付き合えるか俺には分からない』


「…………は?」


  えっと……なにこれ? 妹と付き合う?えええええええ?


  ブックマークとかじゃない、執筆中と表示されている、いやブックマークでも多分驚いただろう、それが執筆中となると……。


 私には訳が分からなかった。

 これはひょっとしたら私が一番見てはいけない物なんじゃ無いだろうか? ある意味エッチなサイトよりも。

 兄ちゃんがログアウトし忘れた物、触ってバレたら不味い物とそのままそのノートパソコンをそっと閉じた。


 気持ち悪いというよりも驚きの感情だった。


 私は慌てて自分の部屋に戻り、ベットに寝転ぶと、スマホを手にその投稿サイトを検索した。


 某有名小説サイト、そのトップページからさっき見たタイトルを入れ検索を掛けた。

「自分で入れるには、恥ずかしいタイトルよね~、えっと妹と付き合いたい……」


 すると1件ヒット、作者名は 里見 海月(さとみ くらげ)


 兄ちゃんのペンネームって……本名の月見里 海(やまなし かい)を微妙に入れ替えただけじゃん、安直過ぎる……


「えっと……どうしよう……とりあえず……見てみるか……」

 怖いもの見たさなのか、いや、ひょっとしたらタイトルだけで中身は違うとか?

 色々な事を思いながら恐々とそのページを開いた……



 ▽▽▽▽



 妹


 『お兄ちゃん、お兄ちゃん』と呼ぶ妹、1つ年下の俺の妹、昔から可愛いと思っていた。

 そして妹が中学入学の時、俺の前で制服を見せてくれた……


 俺はその瞬間妹に魅せられてしまった。


 小学生迄は、ただ、ただ、可愛い妹、可愛いだけの妹だった。

 しかしあの時、制服を着て、俺の前でくるりと回った妹を見たその刹那……俺の中で衝撃が走った……。


 妹が俺の中でただの妹ではなくなった。

 可愛い妹から妹が抜け落ち、さらにはその可愛いも越えてしまった。

 俺はいとおしくなってしまったのだ。

 俺の物に……俺だけの物にしたくなってしまったのだった。



 △△△△




「え……、ええええええええええええええええええ!!」



「な、何? 何これ? え?」

 私は薄暗い部屋の中、スマホに向かって声を上げてしまう……だ、だってそりゃあげるでしょ?実の兄がこんな文章を書いていたら。


「っていうか……これ小説? ただの実話だよね? だってだって私……兄ちゃんの前でくるって回ったもん、覚えてるもん……」


 ドキドキと胸が高鳴る。

 汗が額に浮かび上がる。

 相変わらず気持ち悪いなんて感情は湧かない。

 ただただ驚いているだけ。


 私は興味津々に続きを読む。

 そこからは私……妹への思いが重いほど書かれていた。

 実の妹を好きになってしまった苦悩、そして諦めようと彼女を作ろうとしたが、どうしても妹と比べてしまい作れなかったと。


 そうこれはある意味妹への私への告白、そしてラブレター。


「そう言えば兄ちゃん、一度クラスの女の子を家に連れてきたけど……あれって……」

 そんな過去の行動、そして私ヘの、いや、今は架空の妹としておこう。

 そんな言葉が綴られていた。


 そしてそのまま読み進むと最近の事が書かれ始める。


 ▽▽▽


 妹が俺の後を追って同じ学校を受験したのだ。

 ひょっとして、妹も俺の事を好きだったりするのか?


 △△△



「っておい兄ちゃん! 近いからって言ったでしょ? ちょうど学力に合ってたし……」


 そう私は今春、中学を卒業し来週から兄ちゃんと同じ高校に通う予定だ。


「ちょっと待って、ちょっと待ってよ、これが本当の話しだとして、兄ちゃんは中学の時から私の事を好きだったって事? いや無いナイナイ、これは作り話しだ」

 だって、今までそんな素振り一つもなかった。


 少しホッとしてほんのほんのちょっとだけ残念な気持ちになりつつ 更に先を読むと、最近の私について書いていた。



 ▽▽▽


 妹の名前は春、春の様に穏やかな性格の妹だ、そして容姿、その長い艶やかな黒髪、パッチリとした澄んだ瞳、愛くるしい鼻、可愛いらしい唇、胸は小さめだが形の良さが際立つ、ウエストは折れそうな位に細く、お尻は小さく可愛らしい…………


 △△△


「兄ちゃん……妹のお尻って……どこ見てるのよ! そして名前……春って私の(はる)と漢字変えただけじゃん、読み方そのままじゃん!」


 胸小さくって悪かったな~~~これからなんだよ~~~まだ身長も伸びてるんだから~~~


 てかてかやっぱりこれって私の事?

 もうわけわかんない……。


 そして最後はこう書かれていた。



 ▽▽▽


 少しずつ、少しずつ、妹との距離を縮めている……3年かけて少しずつ……俺は妹にいつか告白したい、いやする……妹を他の男に取られる前に。



 △△△


「………………兄ちゃん」

 小説はここで終わっている……最後の更新は昨日……えっと、マジか兄ちゃん。


「いや無いって、作り話しだって、有り得ないって、こういう話しだと人気が出るからとか…………」


 そう思い小説情報をクリックした……

 さぞかし人気が……。


「ブクマ0件……兄ちゃん……」


 一体何の為にこんな小説を書いているんだろうか

 わけが全くわからない。

 今まで兄ちゃんから好きという思いを感じた事は無い。

 距離を縮められた覚えもない。


「これって、兄ちゃんの本心? 実話? 作り話し?」

 謎は益々深まるばかり。


 かといって、兄ちゃんに「私の事好きなの?」何て聞ける訳もない。

 ましてや「あの小説なに?」なんてもっと聞けない……


 どうするかなんて……考えても結論なんて出ない、出るわけない、


 私はとりあえず、これ以上考えるのを止めた。

 現実逃避という名の様子見をする事に決めたのだった。


「とりあえず、登録しておくか……えっとログインネーム? うーーん陽だから、太陽、太陽圏、うーーん可愛くない、えっと『太陽ちゃん』でいいや、登録して、ブックマーク……あと……一応可愛そうだから評価も入れておくか」


 正直に言うと兄ちゃんの小説に妹が好きって書かれて、私の中で戸惑いはあった。

 でもキモいって感じはいまだにしなかった。


 好かれて迷惑なんて思わない。

 まあ一応妹の情けだ! 満点にしておこう……


 兄ちゃんのブックマークの表示が1件に……


 私が兄ちゃんの小説の最初のブクマ登録者になった。



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