誰も居ないと思ったら。
昔、本で読んだんだったか、人に聞いたのかは思い出せないが、欲求不満な時には、それが夢に出て来るらしい。
――ここまで壮大な夢になるって、どんだけ現実嫌いなんだろう。
思わず遠い目になっている間も、子供は進んでゆく。
なだらかな斜面を駆け下り――どうやら丘の上だったようだ――、煉瓦造りの瀟洒な建物が建ち並ぶ方向に向かう。
――こういうのってアミューズメントパークでもないと日本じゃ見られないよなあ。耐震性がどうのこうので。
――というか、“遅刻する”って言ってた割には、静かすぎないか?
物音が全然聞こえてこない。
人の気配もしない。なんてカッコつけて言っても、気配察知なんて出来ないのだが。
違和感を覚える此方には頓着せず――夢なので仕方ない――、子供は門へと駆ける。
「ギリギリセーフ、かな?」
――いや何処がだよ。誰も居ないじゃん。
と突っ込みを入れ。
そして、子供が門を潜り――。
途端、溢れ出す喧噪と賑やかな活気。
文字通り一変した世界にカケラも反応しない子供に、“これが此処の普通なのだろう”と理解する。
――いや、どうなってんの!?
ショックを受けている間にも、子供が動く。
スイスイと、上手く人にぶつからない様に進んで行く。
また、切り替わる感覚。
子供がさっき見えていた建物内に入ったようだ。
が、何か様子がおかしい。
「うーん、どっちに行くんだろう?」
――まさかの迷子!?
そこも自分と被っていることに驚愕する。
――夢の中でも迷子になるなよ、自分。
何でだろう、がっくり感がヤバイ。
夢でまでなんで迷ってるんだ!と誰かに怒られた気がした。