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秘密の作戦会議 〜逃げ出したい想い〜

 あの後、俺は自室に戻り、ケンにドアの見張りをさせて、一人にしてもらった。


「レノ」



 俺はレノを呼ぶ。この世界に知られていることを把握し、これからの方針を決める為だ。



「お呼びでしょうか? 涼介様」


「どこまで知ってる? どうすればいい?」



 都合の良い話だが、俺はレノに丸投げする。



「涼介様の身に起こった事全てを把握しております。

 ですが、今は情報を制限しているため、アマテラス以外には知られておりません。

 今後は、現状通り情報収集に当たります」


「なんで他のみんなに伝えないんだ?」


「アマテラスを凌駕する力があるという事実は、反乱を生む可能性があります」


「そんな事可能なのか?」


「アマテラスの監視を逃れることの出来る場所と、反乱の意志さえあれば可能です」


「シューゼか」


「はい。現状シューゼ法国に降り立ったとしても、人的影響はありません。

 そこになんらかの戦力を蓄える事が出来れば、アマテラスに対抗出来る可能性は大いにあるでしょう」


「でも、不穏な考えを持つ者をシューゼに行かせなきゃいいんだろ?」


「可能ですが、その対応をすれば、さらに反乱因子を増やす事になるでしょう」


「策士策に溺れるって事か。なら、どうすれば解決出来る?」


「解決の見通しは立たないでしょう」


「見通しが立たない? どういう事だ?」


「アムルタート 、そして、それをも凌駕する猫の存在がある限り、アマテラスは完全な解決が不可能と判断いたします」


「制御できない力がある限り、解決できないって事か」


「はい」


「力の源を解明することは出来ないか?」


「現段階では不可能です」


「精霊魔法とかいうやつはどうだ?」


「解明できていません」


「なら、そこからか」


「はい。ですが、どの程度時間を要するかは推定致しかねます」


「だろうな……」



 未知過ぎるのだろう。今まで計測したことの無い力が働いている。

 別世界の理だ。



「じゃあ、俺は何をすれば良いか教えてくれ」


「涼介様には、異世界者の仲を取り持ち、出来るだけ時間を稼いでいただきたいのです。

 異世界者が、独断行動を起こす前に解析が完了できれば最良の結果となります」


「解析には何をすればいい?」


「一番良い方法は、使っていただくことです」


「じゃあ……ヒルデは中島に教えてもらいたいようだったから、そういう手筈でいこうか?」


「はい。良い提案だと思います」


「俺の事は中島に話しても良いか?」


「涼介様にお任せいたします」


「おいおい! マジか! これ中島に話したらどうなるんだ?」


「わかりません。その人がどのような行動を取るかは予知できません」


「あれ? そうなの?」


「はい」


「じゃあ、今までのってどういうこと?」


「私達の行動原理は消去法です。悪い結果をどれだけ減らせるかで、判断いたします」


「そうなの? じゃあ……その考え方で行くと……中島が全てを知ったとして……敵に回る……ヒルデと討伐に向かってしまう……協力的じゃなくなる……絶望して無気力、あるいは逃避……逃避か……」


「その中では、逃避が一番可能性があると思います」


「だな。じゃあ、少し内容をオブラートに包むか……」


「その案は否定いたします」


「お? なんで?」


「涼介様に、嘘をつく才能はありません」


「……じゃあ、言えないって感じの方がいいか?」


「それならば問題ありません」



 レノにダメ出しを食らう。なんとも切なく、遣る瀬無いダメ出しだった。



「そうか……じゃあ……そうしようか。

 他に言っておいた方がいい人は居るか?」


「他の者には私から伝えるべき時に伝えます」


「わかった」



 作戦会議がひと段落したので、早速行動に移す事にした。

 この作戦の肝となる中島攻略からだ。



「じゃあ、レノ! 中島をここに呼んでくれないか?」


「承知いたしました」



 さて……どう切り出せば良いやら。

 そんなに悩む必要もないかもしれないが。



「涼介! 中島君を連れてきたよー」


「解散したばっかりでもう招集か?」


「悪りぃな、中島」


「他のみんなは?」


「お前だけだよ」


「ふーん……秘密の作戦会議か?」


「そんなとこかな。ケン、また頼む」


「オーケー! だれか来たら伝えるね!」


「頼んだ」



 ケンを見張りにやると、俺はすぐ中島に切り出す。



「えー中島君。これから話す内容は他言無用だ。優しい嘘に包まれた活動計画と、奇想天外な真実に基づく逃げ出したいほどの活動計画があるけど、どっちがいい?」


「え? それ、俺が決めんの?」


「どちらでもオーケーだ」


「じゃあ、真実の方で」


「即答かよ」


「え? 嘘聞いたって意味ないじゃん」


「えー、あー、まあ、そうだな、じゃあ……うん、あれだ、俺は倒れているあいだ、魔王に取り込まれていたんだ」


「……ん? 何?」


「だから、倒れている間、魔王に精神体とか言うやつを抜き取られて、取り込まれてたの!」


「マジ?」


「マジ」


「じゃあ、魔王が何やってたかってわかるのか?」


「うん」



 実際は俺がやっていたが、ここはレノと取り決めたように、言わない事にする。



「グレースさんは……どうなった?」


「俺が見てた間は生きてたよ」


「そうか……じゃあ、助けに行かなきゃな!」


「そうなんだけど、まず勝ち目はないからな」


「俺だってそれなりに強いんだぞ? それでも勝ち目はないか?」


「うん。って言うか絶対に敵対したくない」


「そんなに強いのか?」


「ああ。グレースの精霊魔法を掻き消してた。あれは、爆炎流だったな」


「アレを掻き消した⁉︎ どうやって?」


「なんか一本締め見たいな感じに、いよー、パン! ってやったら跡形もなかった」


「あ? なんだそれ? 本当か?」


「ああ。俺の言葉は信用してくれていい。嘘が下手くそだとレノさんのお墨付きだ」


「そうだな。お前は嘘ついてもバレバレだしな」



 中島にもお墨付きをいただけたようだ。



「……まあいい。とにかく、あの時は魔法だったけど、なんでも消せると思っておいた方がいいな」


「それだけか?」


「あー、なんか輪廻転生って言って大木操って、燃え尽きないくらい枝を次から次へと繰り出して、サラマンダーなんちゃらフレアを防いだな」


「なんだそれ?」


「俺も分からん!」


「それも消せば良かったのに」


「まあ、お芝居だったからな。見せ所とか気にしたんだろう」


「お芝居?」


「うん、お芝居。ちなみに、グレースは魔王に自らの意思で隷属してる。操られてなんかいないんだ。そんで、グレースと魔王は、シューゼの街で魔王討伐って即興劇をしたんだ」


「……」


「聞いてる?」


「……なんかだんだん面倒になってきたな。奇想天外も程々にしろよ」


「だから優しい嘘もあるって言ったろ?」


「……まあいいや。グレースさんはなんで隷属してるんだ?」


「んー、言い負かされて、優しくされたからかな?」


「恋バナかよ!」


「そんな感じだけど、そんな安易ではないって感じかなぁ。ちなみに、ヒルデとラッツを追い返したのはグレースだ」


「マジかよ!」


「うん。だから、グレースを救出なんて無理だと思うよ」


「……じゃあ、どうすんの?」


「んーどうしようもないかな。グレースが自分の意思で隷属してる限り無理でしょ?」


「そんでもって、魔王は倒せない……」


「そうだねぇ」


「……逃げ出したいほどの活動計画ってのは?」


「とりあえず、先は見えないし、アマテラスさんにお前らが使っている魔法の解析をしてもらう。

 その間、シューゼの情報収集をして対策を練る。以上」


「逃げ出してぇ……」


「だろ?」


「いっそ、あの扉の先に行くか!」


「ちなみに、あの扉は魔王が居るところに意図せず出来てしまう副産物らしい」


「……逃げ出せねぇ! 八方塞がりもいいところじゃねぇか!」


「そうなんだよねぇ」


「じゃあ、お前の考えは、この世界のAI任せで対策練ろうって感じか?」


「そうなるかな!」


 言われてみると情けないが、これが最善だろう。

 後は、時間と共に集まってくる情報次第だ。その情報を考察するのもまた、AI任せなのだが……。






皐月賞は2-5-7の三連単ボックスに賭ける!

俺の大事な600円を!

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