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新しい武器

「え? 何これ? 銃じゃ無いじゃん」



 ケンが取り出したのは、銃では無く、イカつい籠手だった。

 肘くらいまで伸びた籠手は、甲の部分から筒が二本飛び出しており手首から肘までが異様に太い。



「今の涼介なら、この籠手の重さを気にする事なく使えるよ!」


「なんかもっとカッコいい銃とか期待してたのになー」


「攻守と取り回しを考えて作られた小グループ戦最強の武器だよ! 絶対使いやすいから!」


「まあそうだよな。防具を兼ねた武器で両手が塞がらないし、弾も多そうだ」


「片方三十発の計六十発だよ!」


「いきなり十倍以上かよ! 最高だな」


「そうでしょ? 威力も少し上がってるよ!」


「マジか!」


「まあ、話していてもしょうがないし着けてみなよ」


「おう」



 イカつい籠手をケンから受け取る。着けてみると、太い部分は外側に大きく膨らんでいるだけで、内側は薄くなっている。動きの邪魔にはならない。

 これは確かに銃より良さそうだ。



「試射して良い?」


「オーケー! じゃあ、訓練場へ行こうか」



 ケンに連れられ訓練場へ向かう。施設内は改装され射撃場の様になっていた。



「うお! すげーな! 昨日まではだだっ広い空間だったのに」


「涼介のためなら朝飯前さ!」


「そう言えばまだ朝飯食って無いな」


「起きてすぐ来ちゃったもんね」


「まあいいや、一汗かいてから飯にしよう!」


「じゃあ、早速撃ってみよう! あそこの的を狙ってね」


「よし」



 ケンに言われた通り鉄の壁に浮かび上がった的をめがけて発射する。


 シュシュ!


 恐ろしく静かな発射音と、反動の無さに驚く。

 本当に撃ったのか不安になるくらいだった。

 そして、不思議なことは続く。着弾音が聞こえないのだ。

 実は誤射で空砲を撃ったのかとも思ったが、鉄の壁が当たった事を主張していた。

 綺麗な円状に真っ赤になっている。



「……ケン。なにこれ、ヤバくない?」


「激ヤバさ!」


「でも、これって本当に威力上がってんの? なんか見た目がそんなでも無いからイマイチぴんと来ないな」


「弾は小型軽量化されて、反動、初速、飛距離、連射速度、発砲音、着弾音が改善されたよ! そして、威力は熱量が倍になったね!」


「熱量が倍に? どうやったらそんな事できんだ?」


「化学反応で熱量を増やしたんだ。着弾と同時に飛散して、次弾で着火さ!」


「じゃあ、俺の腕って爆弾積んでるようなもんなのか?」


「そうだね! 世の中で一番硬くて熱にも強い物資だから大丈夫さ!」


「えー。なんかめっちゃ怖いんですけど」


「籠手が壊れる前に涼介の体が壊れるくらいには丈夫だよ!」


「……まあ、爆発するような衝撃を受けたとしたら生身が持たないって事ね」


「涼介はちゃんと鍛えてるから大丈夫さ!」


「うー」



 理論的には問題無いけど、なんとも腑に落ちない。



「それじゃあ、十体のアンドロイド達と手合わせと行こうか!」


「ああ。そうだったな。じゃあゴム弾補充してくれ」


「ふっふっふ。今日は実弾訓練をしようと思います。生温い判定による勝敗はもう意味ないからね! 当たっても行動停止まで襲ってくるから気をつけてね」



 アンドロイドを破壊する事が出来るようになったとは言え、抵抗が無いわけじゃない。

 実戦で躊躇い無く行動するためには、実弾による訓練は必要だろう。



「……確かにな。わかった。やろう!」


「そう来なくっちゃ! 今回は勝たせて貰うよ! じゃあ勝敗は涼介側の負けは両腕欠損、戦闘不能、ゴム弾が急所に当たるまで。アンドロイド側は全員の機能停止って事で!」


「マジか! いきなりハード過ぎない?」


「イヤイヤ、これからどんどん増やしていくよ!」


「えぇ……」



 つまんないって言っちゃったばかりに、いきなりのベリーハードモード突入です。

 これからの訓練では部位欠損が当たり前になるらしい。

 退屈の代償は思いのほか大きかった。

 だけど、鍛えまくって超人的な強化人間になったせいか、好奇心が恐怖を上回ってしまっている。

 僕は今、到底共感できないであろう人物の気持ちを理解してしまったようだ。



「なんだかな……ワクワクがとまらねぇよ!」


「金髪にでもなるつもりかい?」


「ケン、それは誰かの死亡フラグだ」


「おっと、そうみたいだね! じゃあ、そろそろ始めようか」


「おう! いつでもいいぞ!」



 射撃用の壁が床に吸い込まれていく。

 そして、その裏に待機していた九体のアンドロイドが顔を見せた。

 皆何かしらの武器を持っており、近接武器持ちが三体、中距離、遠距離武器持ちが六体のバランスのいい采配だ。



「涼介、いくよ!」


「来い! ケン」



 ダダダダダダダ!


 戦いのゴングはアンドロイドの一斉射撃の音で始まった。

 僕は後退しながら八の字を描くように右へ左へ跳躍する。

 一斉射撃と同時にケンが率いる近接部隊が突っ込んでくる。


 シュシュ


 距離を取りながら射撃にて応戦する。

 だが、そう簡単には当たらない。彼らも相当に性能が良い。

 このまま距離を取っていれば当たることは無いだろう。

 ある程度射撃部隊と距離を取った所で、先程の威嚇射撃にてばらけた一体を狙い距離を詰める。


 シュシュ!


 相手のアンドロイドが仲間に合流しようと動く事は分かっていた、体の一部にヒット。


 シュシュ!


 当たった反動で動きが鈍る一瞬の隙を突きヘッドショットが決まる。一体撃破だ。

 ただ、先程から厄介なのが射撃部隊が動いていない事だ。

 乱戦であれば射撃部隊も隙をつけるのだが……。



「涼介なかなかやるじゃないか! なら、これはどうかな!」



 二体のアンドロイドが僕目掛けて加速。

 同時に後方の射撃部隊が一斉の援護射撃を始めた。



「おわ! おい! こんなにめちゃくちゃに撃ったら味方に当たるぞ!」


「想定内さ!」



 向こうはアンドロイド。捨身の作戦も容易に出来る。こんな戦い方もありなのだ。

 そうは言っても、アンドロイドの動きは射線上には無い。弾は常に僕を狙っている。僕は二体のアンドロイドから距離を取りつつ、射撃部隊の方へ大きく回り込む。


 シュシュ! シュシュ! シュシュ!


 止まって射撃している一体に向かって三発の範囲射撃をする。一発であれば避けられたかもしれないが、三発も撃てば停止してい状態では避けられない。

 回避行動を取るも左肩にヒット。


 シュシュ!


 前回同様にヘッドショットで決める。残り八体だ。

 射撃部隊を相手にしている間に近接部隊に距離を詰められてしまった。

 ブロードソードの様な剣を振り襲いかかってくる。


 ガイン! シュシュ!


 籠手でガードすると同時に小手先を相手の頭に向けゼロ距離射撃。


 ガン! バキ!


 ヘッドショットが決まったアンドロイドを盾にもう一人の攻撃をガード。

 盾にしたアンドロイドごと蹴り飛ばす。


 シュシュ! シュシュ! シュシュ!


 体制を崩した所に三発入れる。全弾ヒット。当たりどころが良かったようで機能停止しているようだ。

 残りはケンと五体のアンドロイドだ。



「ケン! どうした、こんなもんか?」


「無駄口叩いてると危ないよ?」



 つい調子に乗ってしまった隙を突かれたようで、いつのまにか射撃部隊が移動していた。

 一、二、三……辺りを確認してもケンと三体のアンドロイドしか見つからない。


 ダダダダダダダダ!


 慌てて後退するも射撃部隊の攻撃の方が早かった。



「おわ! どこだ⁉︎」



 弾が飛んできた方を見ると二体のアンドロイドは空中でホバリングしたよに止まって射撃している。



「んーにゃろ!」



 シュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュ!


 両腕で狙いを定め飛行しているアンドロイドに弾を散らす。止まっている標的に当てるのはそう難しくなかった。

 当たった事に少し安堵する。



「ザーンネン!」



 ケンが目の前まで来ていた。

 慌てて左腕を伸ばしたが遅かった。自分では撃ったつもりだったが、それよりも先に左腕は切り離されてしまっていた。

 腕の行方を確認する前に、無意識に右腕がケンを狙う。腕が無くなったのはもう二回目、ショックよりも先に体が反応していた。


 シュシュシュシュシュシュ! バン!


 三発の銃弾が頭、肩、胸を貫く。同時に繰り出した蹴りでケンが地面を転がるように激しく飛んでいった。

 受け身を取るような事は無く、壊れたオモチャが転がっているようだった。

 静かに燃え盛る熱が、貫いた部位を赤く染め上げ、ケンの終わりを主張する。







気付いたら一ヶ月更新していなかったようで、時間が経つのって早いなーと思いました!

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