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脅威

 



「こんにちは、涼介君。さっきは酷いことしてごめんね。でも、僕もあんなにあっさり騙されてくれるとは思わなかったんだ。

 自宅を目にした途端脇目も振らず入ろうとするなんて思わないじゃないか。僕はとっても驚いたし、とっても面白かったよ! こんなにからかい甲斐のある相手はそうそういないからね!

 今思い出しても……くっ……ぷっ。あははははははは! あーごめんごめん! 実に……実に楽しかったよ!また、遊ぼうね! 涼介君……」



『……』


『……』


『……ここは、ベットか……』


 実に最悪な夢だった。コルチェが生々しくも愛らしい風体で、いたずら小僧のようなセリフを吐き散らす。そのいたずらの内容は、小僧の範疇を軽く飛び越えているのだが。

 寝起きの重い身体を起し、ぼーっと悪夢の余韻を散らす。頭を搔き、ベッドから降りた。


『風呂でもはいるか…』


 寝ぼけながら風呂に向かうと、辺りの変化に気付く。


『……ああ、そうか、レノと話してたら寝ちゃったんだ。ってことはここは……どこだ?』



「レノ! 居るか?」



 そう呼びかけると、纏っている蝶を取払い、レノが顕現する。



「お呼びでしょうか? 涼介樣」


「ああ、ここはどこだ?」


「ここは飛行船の船内です」


「そうか。風呂とかないかな?」


「お風呂はありませんが、シャワー室があります。ご案内いたしましょうか?」


「そうか、頼む。ついでに、着替えもよろしく」


「かしこまりました」



 なぜか今日はケンが居ない。レノに頼るしかないようだ。レノに案内され、シャワー室でシャワーを浴びる。どのくらい寝ていたのだろうか? この船はシューゼ法国に向かっているはずだ。そろそろ着いてもおかしくない時間だろう。

 シャワー室から出ると身体を拭き、レノが用意した服に着替える。この国の服は実に着心地が良く気に入っている。

 脱衣所から出たらレノを呼んだ。



「お呼びでしょうか? 涼介様」


「今どんな感じ?」


「現在アロー法国へ帰還中です。コルチェの調査がもう少しで完了いたします」


「あれ? 引き返してるんだ」


「はい。新たな脅威が確認されましたので、方針が変更になりました」


「そうか。ケンはなにしてるんだ?」


「ケンはコルチェ調査の作業員として従事しております。何かご用がありましたら、レノにご用命ください」


「そうか。じゃあ、さっきの騒動の詳細を教えてくれ。突然の事であんまり覚えてないし、頭ん中整理したい」


「かしこまりました。では、墜落した飛行機からご説明いたします」


「そうだな。よろしく!」


「はい。まず、飛行機の墜落の原因ですが、何者かに一部システムを乗っ取られたようです。安全装置はシステムと分離されておりますので、操縦不能となった瞬間、乗員脱出のシステムが作動しました」


「こんな安全な世の中で、そこまで想定した設計って必要なの?」


「はい。システムは冗長化が必須事項となっております。最低でも二個のシステム構成が基本となります。

 さらに、飛行機のような安全性が重要な物に関しては、基幹システムとは別で安全装置が作動するように設計いたします。

 また、万が一安全装置が作動しなくても、扉、シートベルト等は物理的にロックを解除できます」


「まあ、そりゃそうか。でも、なんでシステム二個あるのに乗っ取られたの?」


「システムは二個ありますが、全て繋がっております。故障には対応できますが、乗っ取られてしまった場合、全てのシステムを操作可能です。ですので、安全装置は基幹システムとは別の系統で設計いたします」


「安全装置が乗っ取られてれば危なかったな!」


「ご安心ください。安全装置のセキュリティレベルはアマテラスさえ侵入が困難な程高い水準で設計されております」


「そりゃ安心だ」


「はい。それからその侵入元ですが、システムの一部に未確認の植物が混入しておりました」


「植物?」


「はい。その植物が、システムを乗っ取ったと思われます」


「え? この世界の植物ってそんな事できるの?」


「いえ、そのような事はございません。調査の結果、この未確認植物は電気を生成する事ができるようです。その生成した電気を操り、飛行機システムに侵入。そして、墜落させたと思われます」


「それ、ヤバくない?」


「はい、非常に危険な状況であると推察されます。ですので、一旦アロー法国に戻り、対策をいたします」


「そうだな」


「それから、涼介様を襲ったコルチェに関してですが、コルチェも植物によって操作されていたようです」


「まじか! って事は……その植物って意思があるって事?」


「可能性は否定できません」


「ますますヤバイじゃない! レノもケンも大丈夫なのか? だれか乗ってられてないか?」


「数体のビットに、植物の反応がありました。ですが、除去可能でしたので問題はないと思います」


「マジかよ……そいつらどこから、どうやって侵入したんだ?」


「それについては現在調査中ですが、現状判明している範囲で回答いたします。

 電波障害区間は、おそらく未確認植物の花粉のような物で電波が阻害されているようです。今回のような発芽し、成長する要因は解明できておりません」


「えー!! マジですか! 俺、いっぱい空気吸っちゃったぞ! 大丈夫なのかよ!」


「現在調査中です。今のところ生物を標的にした被害は出ておりません」


「うわぁ。怖っ。これからかよ。じゃあ、当面対策に追われる訳か」


「はい。アロー法国にて迅速に原因の解明を急がせます」


「これじゃ、バイオテロだな。被害もでかいし原因も不明と来たんじゃもうどうしようもないな」


「申し訳ありません」


「いや、レノのせいじゃないよ。俺の意識とか乗っ取られる前に、対応策ができることを祈ってるよ」


「全人類の総力をかけてご対応いたします」


「はは……よろしく」



 シューぜ法国の現状は、非常に困難な状況のようだ。そして僕も爆弾を抱えてしまった。

 バイオテロってものが、こんなにも恐怖と不安を煽るものだったとは。生物化学兵器が爆弾や銃より弾劾される理由がわかった気がする。

 約束された死の恐怖が何日も続けば、人として理性を保っていることなど不可能だろう。僕の場合はまだ死ぬと決まったわけじゃないが、乗っ取られるぐらいなら死んだ方がマシかもしれない。



「やあ!」



 聞いた事のある掛け声に驚き、激しく心臓が鼓動する。声のする方を見ると、猫が立っていた。コルチェだ。僕は即座に身構える。



「そんなに怖がらないでよ! もう大丈夫だよ! 乗っ取られていただけだからさ」


「……レノ。大丈夫なのか?」


「はい。プログラムチェックも完了しております」


「わかった。コルチェ、お前はあの時の記憶はあるのか?」


「データに残っていたよ! ごめんね、乗っ取られていた時に随分酷いことをしたみたいだね。もう手の方も完治したんだね。良かった」


「あ……。そういえば。治ってる……」


「涼介様が寝ている時に治療は済んでおります」


「そっそうか。ありがとう」



 あまりに自然過ぎて、怪我をしていた事すら忘れてしまっていた。



「涼介はそんなに気にしてないみたいだから安心したよ!」


「なんか釈然としないけど……まあいいか。コルチェも乗っ取られてたんだもんな。しょうがない」


「ははは。ありがとう。これからはあんな事しないから、宜しくね!」


「ああ、宜しくな」



 害が無いと分かれば可愛い猫でしかない。って言うか、めっちゃ飼いたい。



「そういえばケンは? 」


「ケンは現在チューニングをしております」


「なんかあったのか?」


「いえ、特に被害はありません。ですが、行動決定プログラムに変更を施しております」


「おいおい。それ大丈夫か? 性格変わっちゃってケンじゃなくなっちゃうんじゃないか?」


「なにか問題がありますか?」


「えっ?」



 唐突に実施されたケンのプログラム変更。性格が変わることに問題があるかと言われれば、返す言葉は人間の感情からくるわがまましかないかもしれない。世界的な危機のこの状況で、僕がわがままを言っても良いのだろうか? 僕がお願いをすれば、レノは聞いてくれるだろう。だがそれは、この世界を平和に保って来たアマテラスの決定に背く行為になるんじゃないだろうか? 

 アンドロイドに感情は無い。僕と過ごした記憶も、ただのデータでしかない。外野から見ればどうでも良いのかもしれないが、僕の心の中はレノの言葉に動揺を隠せないでいた。






十二月ですね。クッソ忙しいこの時期は、早く過ぎ去って欲しいです。

お正月を満喫したいです。

クリスマス?いえ、お正月が楽しみです。

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