ここは不思議な道具屋
売っているのは、とても使えそうにない欠陥マジックアイテムばかり。
でも・・・。
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ここは不思議な道具屋。
この店で扱う道具は、全てに強力な魔法がかかっているが、それゆえに何かしらの欠点を抱えているという。
「店主さん、この盾はどういったものですか?」
「あーはいはい、こちらはですね、どんな攻撃でも避けられる盾です。」
「どんな攻撃もですか?」
「はい、紛れもなくどんな攻撃も盾が勝手に動いて避けます。」
「勝手に動くんですか?」
「ええ、こうして盾をかざして攻撃を受け止めようとしたりすれば、盾はサッと動いて当たらないようによけるんです。」
「ちょっ、それって盾がよけちゃったら攻撃を防げませんよね、そのまま直撃ですよね。」
「それが、この盾の欠点です。」
「・・・この盾はやめておきます。」
「それがよろしいかもしれませんね。」
「それじゃあ、何か武器を見せてもらえますか?」
「はい、どういったものがよろしいですか?」
「そうだなあ、どうせならすごく強力な伝説の武器みたいなのはありませんか?」
「それでしたら、こちらの刀などぴったりかと。」
「ほう。」
「この刀をさやから引き抜くことができた者は、最強の力を得ることができると言われているんですよ。」
「見せてもらっても?」
「ええ、もちろん。」
「ほほお、これは・・・、木刀ですね。」
「ですね。」
「模造刀ですよね、抜けないですよね。」
「抜けないかもしれません、木刀ですから。」
「落語の『道具屋』か!」
「道具屋ですよ?」
今日も道具屋はこともなし。
-2-
ここは不思議な道具屋。
この店で扱う道具は、全てに強力な魔法がかかっているが、それゆえに何かしらの欠点を抱えているという。
「店主さん、こないだの盾と刀がなくなっていますね。」
「はい、あれから二つとも売れたんですよ。」
「どんな人が買っていったのですか?」
「盾を買われた方は、ドラゴンを退治しに行かれるとかで、辺り一帯を吹き飛ばすようなブレスから、あの盾につかまって逃げるのだそうです。」
「それはなんというか剛毅な人がいたものですね。」
「はい。その方は、あの刀も買っていかれたんですよ。」
「ほう、どうするつもりなんでしょうね。」
「ひとまわり大きな特別製のさやをつくらせて、そのさやに木刀をおさめておられました。」
「あーっ!」
「今頃は、ドラゴンを倒しているかもしれませんね。」
今日も道具屋はこともなし。
一見して使えないアイテムを、アイディア勝負で最強に。
なろうファンとして、一度は挑戦しなければですよね。
追伸
『みどりの竜』(連作ショートショートコメディー、各一話完結です)も見てくださいね。
あらすじ
この物語は、緑竜さんとの平凡な日常を淡々と描く物です。過度な期待はしないでください。