王の話 其の七
最初に気づいたのは戦地から帰還した不死の兵たちだった。
三カ月ほど続いた戦争。
兵たちはその地から、一人残らず無論無傷で生還した。
ある兵士は自宅へ戻り、シャワーを浴びるため全裸になり、洗面台の前に立った。
綺麗な、傷一つない体。
しかし、一点に疑問を抱いた。
白髪だ。
白髪が増えていた。
最初はただの思い違いかと思った。
出兵する前に毎日白髪のチェックをしていたわけではない。
そうだ、ただの見間違いだ。
しかし1年後、顔の皺が増えたのに気づいた。
そこでやっとこの兵士は怯えた。
『老いてる?』
兵士は政府に抗議した。
話が違う、と。
しかし返答はこうだった。
『不死とは外部衝撃によってもたらされる死を回避するという意味だ。老いに抗うと言うことは計算上予測不可能だった。だから【不死】と言う単語を使った。【不老不死】と聞き間違えたとしたらお前の落ち度だ。』
無理やり諭された兵士は落胆した。
そして波紋は広がった。
皆、このナノマシンを体から除去してほしいと政府に詰め寄った。
が、回答は同じ。
また『ナノマシンを除去すると言う概念』は存在しないとも言った。
『それは輸血をしたあとに、その血を抜いてくれと言うようなもの。ナノマシンと言うのは投与された人間の細胞に自らをコピーし増殖する。最早オリジナルの細胞と見分けなどつかない』
この一言に兵たちは、あるいは落胆、あるいは怒り、そしてあるいは冷淡な反応を装い決意した。
この国最大のクーデターを。