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王の話 其の六
不死になる。
言うは易し、行うも易し。
そんな時代に到達した。
入隊したものに対して行なわれる実験は、やはり主にナノマシンを用いた。
ナノマシンを投与し、そのナノマシンが投与された人間の細胞に自らを似せていく。
そして無限に分裂を繰り返し、自ら培養し、傷つけば即座に他の細胞が保護にまわる。
ある男の腕を切り落とした(勿論麻酔で眠らせたが)。
胴体部からは触手のようなものが伸び、失った部位を探す。
その触手に切れた腕を当てがった。
列車同士がジョイントを組むかのごとく即座に結合した。
懸念されていた再生のスピードも問題なかった。
スピードに問題があるようではただの治癒の域を出ない。
再生速度が遅いようでは、その再生中に死ぬ。
そこをクリアした。
次に脳梗塞の人間と事故により脳を損傷したものに投与した。
それらは麻痺や言語障害、果ては高次脳機能障害といった認知機能と言った障害をも解消した。
完璧に思えた。はやり王の与え給うた奇跡に間違いなどないと。
しかし、
一つだけ欠点があった。
それが老いへの耐性だった。