偽不死 其の一
『えー。ここ、“ユリガワラ宇宙微生物発電所”我々が完全に占拠した。職員の皆さん。どうぞ慌てないで、我々の指示に従ってほしい。原則危害は加える気はない。これは王政府への報復であり聖なる戦いである。不本意な実験のマウスにされた我々の復讐である。我々は誓って民間人に危害を加えたい訳ではない。理解してほしい。』
フロア中央に立つ男が拡声器を使って言い放った。
つまりはテロじゃないか、持って回った言い方しやがって。
と、市川 杏は内心毒づいた。
杏はこの発電所で所長秘書として勤めて一年。
20歳。まだ職を失ったとしても路頭に迷うような年齢ではない。
(そもそも政府に怨みあるなら直にそっちに乗り込めよなー。まあ王に勝てるわけないけど)
『えー、この中で役職についていたものはいるか?』
テロリストの問いに、皆沈黙で答えた。
『おいそこのハゲ頭!』
私の隣の男が指さされた。
改めて見ると本当だ、ハゲている以外あまり特徴のない優しがな男だ。
『お前が答えろ。この中に、役職を持つ人間または所長に近い、秘書などはいるか?』
(出て欲しくないワードが出た。秘書、、、)
杏は第三秘書だったが見渡してもこの中に秘書は杏だけだった。
ここはやり過ごさなくては。
杏は俯いた。
だが次の瞬間、信じられない事にハゲ頭は此方をチラ見したのだ。
(ばかやろーーーー!)
『女、立て』
杏は手を後ろに回され、歩かされた。
『動力室へ案内しろ』