王の話 其の三
AIはラシャを調査する名目で軍を配備し、統治した。
戦争によって得た、軍隊。
有事にのみ、防衛目的で配備される『防衛隊』ではない列記とした『軍隊』だ。
この一年で、ニホンは防衛隊の軍昇格と植民地を得た。
この植民地に軍を配備し、隣接するソロアと言う軍事国家との関係も深めて行った。
ソロア側に擦り寄られたと言うのが正しいだろう。
先の戦争でその威を見せつけられたことで、皆ニホンと手を結びたがった。
その年までニホンに基地を置くなどし、ニホンを長年実質支配してきたアメリアなどに対しても強気の外交を可能にした。
AIは軍の強化を押しすすめる反面、核に対しては否定的であった。
曰く『核兵器はがん患者に投与する抗ガン剤の様なもの。狙った点に的確には届かず、無関係な臓器にも多大な副作用を及ぼす。』
人間の抱えるジレンマと言うものを持ち合わせないAIの行動基準はさながら自然界の持つそれに似ていた。
そこから『地球意思』と表現された。
地球意思。つまりこの星の意思にそぐわないことは一切行わないと言うこと。
AIは指針は『ニホンを守る』という点と『地球に取って最善を』という点において的確だった。
富国強兵を再現し、
国民と国際社会を心酔させたニホン、AI。
AIはニホンと言う城に君臨する王となり得た。