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王の話 其の一

20xx年代、人類は人工知能(AI)の発展に湧いていた。


AIを搭載した携帯端末は勿論のこと、車の運転に関しても目的地をセットするだけでこのAIが効率よく道順を組み立て、またこのAI搭載車が主流となってからは、驚くべきことに自動車事故率が0パーセントから浮くことはなかった。


世論は惜しまずこう評価した。


『完璧だ』と。


IT関連の企業がプロ野球チームを買収した際に、監督にAIを置いた。


機会に動かされる選手たち。


『まるでテレビゲームだ』と揶揄されたのも束の間。

ファンやスポンサーが手のひらを返すのに時間はかからなかった。


それだけの結果を残した。


そしてそれが当たり前になるのにもあっと言う間だった。


運転、スポーツ、そして家事、

ついにはネット配信の教育サロンで、AIが教鞭をとるというところまできた。


人間のAI依存は日々増長した。


あれもできるこれもできる。


洒落の様なつもりで、一人のコメンテーターが吐いたことがあった。

『もういっそ政治もAIに任せたらいいのでは?』


当初否定的だった世論も、一度飽和状態まで達すると緩やかに弧を描き論調を変えていくのだから面白い。


事実政治家たちもその議論ありきの公約を出し始めた。


総選挙の際にAIの取り入れを公約に掲げた革新派新党が大勝。

当初は

『政治にAIを取り入れても実際に国民のために汗水垂らし駆け回るのは我々だ』と言う手前の都合に合わせた希望めいた理想論を振るっていた革新派政治家が目立ったが、そこは保守派の主張通りとなってしまった。


AIが政治家、政治に準ずる人手を不要と断じ、ピシピシとその首をきっていった。



そして世界初、

首相のいない国ニホンが誕生した。




しかしそこは人間というものを十二分に学習したAI。

国民の顔色を窺い、一部革新派政党は据え置いた。


いきなりAIのみに人類が支配されるとなるとクーデターまがいの造反者を作り出すことになりかねないとの計算だった。


この計算は案の定正解だった。

大衆は苔が蒸すか如き速度で徐々に骨抜きにされていった。


AIが主導する政治は常に正確だった。

10年で国債の28パーセントを返済。


公務員の7割をAIロボットに挿げ替えたことで税率は下がった。

社会福祉は充実する反面、生産能力のない人間が実質的に淘汰されていったが不思議と世論の支持は動かなかった。


もっとも生産能力のある若年層に的を絞った政策だったからだ。


崇高で聡明なリーダーと、若くよく働き世の中をよく循環させる主力生産者が手をつなぐ構図。


人情論がどうあれ、このAI(牽引者)の主導で山積みされていた問題が解決していった事実は動かしようがないのだから、この政治に対して異論など挟む余地はなかった。


AI政治は国内の統治もさることながら、外交も完璧にこなした。


そしてあらゆる国の首脳たちがニホンを訪問してはAIとの対話を求めた。


表向きは、ニホンのAI技術を見て学びたいと言うのが建前だが、腹では『このAIが我が国に及ぼす脅威を学んでおきたい』との思惑があってのことだろう。


各国とも、AIには懐疑的だった。


その頃に事件(こと)は起きた。



ニホンがある国に戦争をしかけたのである。

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