職質 其の一
『ほらー!軍警察隊きちゃったじゃないよ!』
杏は助手席で喚く。
『いや、あの車は今さっきインターからのってきた。ネズミ捕りじゃない。』
桃はペダルをべた踏みしているが、軍の車は離れない。
どころか、車線を変え、並んだ。
二車線の道路を暫く並走した。
あちらは国産だがアッパークラスのセダン。
エンジンの大きさは比ではない。
回り込まれる。
パワーの違いを見せつけられ、追い抜きを諦める。
此方の減速を伺い、軍のセダンはあろう事か車線2つをせき止める形で横向きに停車した。
セダンから男が降りる。
王朝軍警察。
俗称“ぐんけい”
黒い詰襟に合わせの部分に金のトライバル。
旨のポケットには楕円に十字架のバッジ。
オールバックの男だ。
『乗ってろ。ロックして。』
言い残し、桃は車を降りた。
『わりい、飛ばしすぎた。』
桃は口だけで笑い、オールバックの男に言った。
男はフッと笑う。
と、おもむろにホルスターから銃を抜き、
桃へ向けた。
『オイオイ、たかが道交法違反だろ?』
両手をあげ、桃は尚も笑ってみせる。
『、、、証明しろ。』
オールバックの男は言い、
直後
ドン
と言う鈍い銃声がワーゲンの内側にいる杏にも届いた。