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桃と言うそうです

『キー貸せ。』

駐車場、杏の愛車 フォルクスワーゲン脇に立つ二人。

無言でキーを差し出す杏。


『ハタチでワーゲンか。いい時代になった。』


運転席で男が零した。


『そのセリフ、まんまジジイ。』


杏はムクれている。色々なことがありすぎた。


『名前くらい教えて下さい。』

不機嫌さを隠そうともせず杏は言った。


『桃。』


『え?』


『だから、(もも)。』


『なにそれ、桃井さんとか桃山さんとかってこと?』

杏は笑いを堪えている。


『ちげーよ、下。名前が桃。』

心なしか男は不機嫌そうだ。


『かぁわいーーー!』

杏はけたたましく笑った。

完全に人を小馬鹿にしたような笑いだ。


『なに桃から生まれたの?』

『殺すぞガキ』



車はイバラキからサイタマ方面へ向かっている。


高速に乗る。

ETCゲートが開く。



『ねえ、桃さんの職場って何処なの?』

杏は眠たげに尋ねた。


『サイタマだ。チチブは、この時代はまだあるか?』


『聞いたことなーい。』


『県の北西だ。』


『なら焼けちゃったんだねー、戦争の時。でもチチブなんて聞いたことないなー。』


『俺も正直今の時代のことはよくわからん。』


しばし沈黙。


『ねえ、400歳って言ったのは、、、ジョーク?』

杏は真顔で尋ねた。


『、、、ある意味本当。』

桃は曖昧に答えた。


『何ある意味って?』


『、、、言ってもわからんと思うぞ?』



バカにしちゃって、と杏はひとりごちてシートを倒す。

脳が眠りを欲していた。


と、同時に桃は車を一気に加速させた。


『ちょっと!?オービス引っかかるでしょ!?』

杏は体を起こす。


『後ろ』

桃は一言。


杏はバックミラーを覗く。


バンパーに十字架マークの車両、この時代の“警察”、“王朝軍”のマークの付いた漆黒のセダン車がぴったりと後ろをつけていた。

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