俺とBの不毛な議論
しょうもない話ですが、最後までお付き合いいただけたら幸いですm(__)m
高校の帰り道、俺は同じサッカー部である友人のB(仮称)と共に歩いていた。
「いや〜、今日も疲れたなぁBよ」
「そうだなぁ、A」
いつものように他愛もない会話をしながら歩く二人。
そのときだった。
「あ、流れ星だ」
Bが言った。それにつられて、俺も夜空を見上げる。
「マジか、見逃した」
そう、流れ星なんてほんの一瞬しか姿を見せないもので、俺が見ようとしたときにはもうすでに見えなかった。
「B、なんかお願いしたか?」
「いや、まぁ…したけど三回は無理だな…」
ふむ、こいつの願いといえばクラスのアイドルのCさんと付き合えるようにとか、そうじゃなければ志望校に無事受かれるようにとか、そのあたりだろう。
「なぁAよ」
「ん?」
「流れ星が出てる間に三回願い事を言うと願いが叶う、なんて誰が言い出したんだろうな?」
「知るか、てか叶ったやついんのかな?」
「いないんだったらこんな話は存在しないだろ?」
「なるほど…」
うむ、Bの言うことはもっともだ…
だが、もしそうだとしたら、もっと驚くべきことが明らかになる。
それは、そいつは流れ星が流れてる間に三回願い事を唱えることができたということだ!
―――かくして、その驚愕の事実に気づいた俺とBは、不毛な議論を展開することになる―――
第一回 流れ星が流れている間に願い事を三回唱える方法会議 議論編
「なにかいい方法はないかな? Bよ」
「う〜ん…難しいな…願い事をできるだけ短い文章にまとめるとかは?」
ふむ…なるほど。
では例として、「大金が欲しい」というありふれた願いをもとに検証してみよう。
大金が欲しい→金欲しい→金くれ
まぁ大体最短でこんな感じだろう。四文字。これならいけるかもしれん。
しかし問題は、「大金が欲しい」とは言っていないので、道端で百円くらい拾ったとか、そのていどのラッキーで願い事が清算されてしまう可能性があることと、もっと複雑な願い事だと文章を短縮するのが困難になるということである。
例えば、Bの願いであろう「志望校に合格したい」という願いを、暫定的ではあるが、基準点である四文字まで縮められるか?
志望校に合格したい→志望校受かりたい→受かりたい
このように五文字までなら短縮することができたが、内容が非常に不鮮明なものとなってしまった。間違って漢検とかに受かっちまったらどうすんだ。
「ダメだな」
「ダメか…」
だが、文章を短くまとめるという観点はなかなかいい線を行っていることは間違いないだろう。これを踏まえて、再び新たなプランを考案してみよう。
「ていうか、流れ星っていつ来るか分からないじゃん。そこをどうにかしないとダメだろ」
「たしかに…不意打ちみたいに来るから『あっ、流れ星』とかって言ってるうちに消えるからな…」
クソ、新たな問題が浮上してしまった。たしかにこれが一番重大な問題と言えるかもしれない。
だが、この問題の解決はかなり困難を極める。何故なら、「流れ星がいつ現れるか」という情報を入手する術がないからである。まぁNASAとかだったら分かるかもしれないのだが、我々一般人にはそんなところから情報を入手する術もない。
だがしかし、この問題が解決すれば全体の8割は解決したようなもの。さぁ、みんなで考えよう。
…
……
………
五分間、俺とBは考え込んだ。
その結果、俺は一つの画期的なアイディアを考案した!
それは
「常に連呼しているというのはどうだろう?」
「は?」
「だから、今日みたいに晴れた夜、流れ星が流れそうな環境下にいるとき、常に願い事を連呼しているってのはどうだ?」
そう、このアイディアなら流れ星が現れてから願い事を発言するまでのタイムラグを限りなく0にすることが可能なのだ!
「実に実用的なアイディアだと思わないか? なぁそうだろB!?」
「あ、まぁ…そうだな」
よし、そうと決まれば早速実践あるのみである。
―――実践編
「大金欲しい大金欲しい大金欲しい大金欲しい大金欲しい大金欲しい大金欲しい大金欲しい……」
「受験受かれ受験受かれ受験受かれ受験受かれ受験受かれ受験受かれ受験受かれ受験受かれ受験受かれ……」
ひたすら夜空を仰ぎながら願い事を連呼しつつ街を闊歩する俺達。
若干周囲からの視線が気になるが、そんなの関係ねぇ。今の俺達には「1、この作戦は本当に有効なのか?」「2、もし有効だったとして、本当に願いは叶うのか?」という命題があり、その解を得るために全神経を集中しなければならんのだからな。
「大金欲しい大金欲しい大金欲しい大金欲しい大金欲しい大金欲しい大金欲しい大金欲しい……」
「受験受かれ受験受かれ受験受かれ受験受かれ受験受かれ受験受かれ受験受かれ受験受かれ受験受かれ……」
そのときだった。
夜空を滑る様に、一筋の光が疾る。
そう、今回のターゲットの流れ星到来である。
俺は内心で忍び笑いを漏らした。
今回は前回のようなタイムラグは全くの0! しかも文章も意味が判別できるレベルで短縮している。
抜かりは一切ない。この勝負、もらったぞ!
『ガシッ』
「ちょっと君達、交番で話いいかな? 茶くらい出すから」
「たいき……は、はい」
「……やっぱこうなったか」
結論:願い事三回の詠唱はいけそうだが、街中では控えよう