其の拾伍
翌日の早朝。
天地がひっくり返るような、けたたましい爆音に、わたしは叩き起されます。
「――なっ、なななんですか! 今の音は!」
「ああ、止水さま! 御心配には及びません! この小比奈めが命に代えても止水さまの操を御守り致します!」
「きゃー! どさくさに紛れてどこさわってるんですか! このお馬鹿っ!」
離れなさい、と、しがみつく小比奈をひっぺがします。
鎌之助の一件以来、私は小比奈のお部屋にお邪魔しているのでした――って、そんなこと言ってる場合ではありません。
今の音は?
大筒を放ったような凄まじい音、地も大きく揺れたように感じました。
取るものもとらず寝巻き姿のまま枕だけを抱え、わたしは外に飛び出します。
見ると、すでに道場の巫女たちが、わらわらと群がっていました。早朝もあってか寝間着姿が目立ちます。
「いったい何事でしか!?」
慌てふためき、盛大に噛んだわたしに見向きもせず、その場にいる巫女たちは皆揃ったように一方向を見ています。その顔はまた揃ったように、唖然と。
つられて、わたしも視線を向けます。
見えたのは山から濛濛と上がる黒煙。
火の粉を散らし、怒涛のように天高く噴き上る火柱――浅間山が、噴火していました。
「不吉な……」
そう、誰かがぽつりとこぼしました。
不吉。怪異。
流石のわたしも、なにか胸騒ぎを覚えずにはいられませんでした。