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 においの酷い、とても「食べ物」とは思えないものだった。

「ぐぇっ……」

 ゴドフリーが吐き出しそうになるのを必死で堪えて食べていた。唯一、平然としていたのはアーベル将軍くらいだろう。

 だが、それは「食べれる」という意味合いであって、それ以外のなにものでもなかったのだ。

「なん……だ。……これ……は」

「『何だ』って……これ、俺たちが食べてるものですけど? 一応(、、)ご馳走なんですけどね」

 ヴィクが唇を歪ませていた。

「トーマス兄ちゃんだって食べてるよ! トーマス兄ちゃんのおかげでここまで食べれるようになったんだ!」

 また子供たちが口々に叫んでいた。

「これがここの実態なんですよ。帝都から派遣されてる来る兵士はやる気がない。その穴を埋めてるのがこの土地の人間ですよ。

 知ってました? ここって十三歳になると徴兵されるんです。『特例』だって帝都からきた司令官様が仰ってましたね。何せここは一応(、、)主要要塞らしいですからね。

 それでも足りないってんで、トーマスさんがヴェルツレン家に掛け合って兵を派遣してくれてるからこそ、この土地は何とかなってるんですよ。どうせ皇族は元々ここが取られたって平気なんでしょうね。

 何せ、自分たちで取ったわけじゃないし、何かあったら研究施設ごと爆破すればいいって思ってんでしょ? 結果だけ帝都に行けばいいみたいに思ってるんだ。

 やせ細った大地で何が栽培できるっていうんですか。特産品がない領地は丸無視の皇族に俺たちは期待しませんから」

「すまぬ」

 アーベル将軍が頭を下げた。

「ヴェルツレン公爵家より、軍に話は来ていた。公爵閣下と共に上層部に掛け合っても無理だった。

 それを言い訳にするつもりはない」

「その話は、トーマスさんから聞いてますよ。アーベル将軍の独断で動かせるはずの兵が有ったはずだったって。それを取り上げて皇太子殿下の近衛隊にしたんでしたっけ?」

「その、通りだ」

「ついでに言うと、この食材を融通してくれたのもアーベル将軍ですよね。確か故郷で飢饉から逃げるためだけに植えられた植物」

「……うむ」

「だから、あなたにはそこまで何も言うつもりないんですよ。

 あの酔狂なトーマスさんが身内以外で認めてる方ですから」

 それは褒めているのだろうか。トーマスが「認める」ということ自体、帝都では「変わり者」のレッテルを貼られるに等しいのだ。

「分かった。まずはここの状況を陛下に陳情する」

「だから、それが無理だって言ってんのが分かんないの?」

 ゴドフリーの言葉に呆れたようにヴィクがはき捨てた。

「それで陳情を無視された場合、陛下には何も言わず、独断で話を進める。

 まずは徴兵を二十歳に戻す。そして、その上で傭兵を国内から集める」

「!!」

 アーベル将軍の言葉に全員が言葉を失った。

「閣下、そのあたりは小生にお任せいただければと思っております。閣下とアットウェル家ですぐやるべきことは、土壌の改良と雇用促進にございます」

「分かった、私もそうさせてもらう」


 だが、視察自体はすぐ止めることなく、続けた。


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