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5

 ゴドフリーを一瞬だけにらみつけたヴィクを見たクリストファーは、思わずため息をついた。兄であるトーマスがわざと言ったのだとすぐに気がついたのだ。

 クリストファーたちは「皇家には忠誠を誓うこと」という当たり前のことを、幼少時から叩き込まれている。だが、トーマスはあまり皇家に対していい印象を持っていない。

「紹介に預かりました、ヴィクです。とりあえず歩きで案内しますんで、その靴から替えてもらっていいですかね」

「? 歩きの視察なら今までずっとやっていたけど?」

 ゴドフリーも不思議そうに返していた。

「軍から支給されている靴に替えろって言ってるんです。二刻半ほど歩きっぱなしで視察組みましたんで」

 たった数分でそこまで組むとは。……さすがにクリストファーも驚いた。

「軍の靴ならそれがしは履いているが?」

「単刀直入に言いますとね、この地域が国から支給されてる靴を履けってことですよ」

 アーベル将軍の言葉にすら、ヴィクはイライラしたように返してきた。


 数分後、それ(、、)を履いたメンバーは動き出した。そして、一歩いちぶもしないうちに、根をあげた。

「わかりましたか? それが帝国謹製の軍用靴です。で、こちらがトーマスさんが開発した軍用靴です」

 それは、本来軍で支給されているはずの靴だった。

「どういうことだい?」

 ゴドフリーがまた不思議そうに訊ねていたが、ヴィクは何も答えなかった。

「この靴の開発に、トーマス兄上が関わっていたんです。長兄が一時期軍に徴兵された時に、一般兵の軍用靴に疑問を呈しまして」

 既に「天才」としてヴェルツレン家内では有名だったトーマスが、勉学の合間に作った靴だ。そして、それが今では軍の基本仕様となっている。

 しかも、一般の靴にまで合うようにトーマスは変えて、世間に公表している。それ故、その特許で毎年トーマスにはかなりの金が振り込まれているのだ。

 勿論、特許はヴェルツレン家で取っているので、家を通じて支払われている。

「……そうであったか」

「まあ、皇族に何言っても無駄でしょ」

 冷たくヴィクが呟き、また動き出した。


「ここが俺の家がある地域です」

 そうやって案内された場所に、トーマスたちは絶句した。

 全ての壁に銃弾の跡があり、窓にはガラスどころか、カーテンすらないのだ。

「トーマスさんの意見でね。ガラスは銃撃や爆撃の時に危険。カーテンは敵方に、居場所を知られるので危険、そういうことです」

「普段、は?」

「普通に家にいますよ。……まぁ、警報が鳴ったら別ですけど。

 ここは結構気候が温暖なので、窓一枚無くても夜は過ごしやすいですからね」

 そんなことを言っていたら、こちらに石が投げつけられた。

「貴族様は出てけ!」

「なっ!?」

「今度は何を取りに来た!?」

「お父ちゃんを返せ!!」

「連れてった母さんを返せ!」

 皆が口々に罵り始めた。

「お前ら、いい加減にしろ。トーマスさんのお客さんで、今案内中」

「トーマス兄ちゃんの?」

「そ。ま、一番偉い人は皇族らしいけどな。トーマスさんが『殿下』って呼んでたから」

「ふーん。トーマス兄ちゃんもやっぱり貴族様なんだね」

 暗い瞳をした子供たちが、口々に言っていた。

「俺の好きなように案内(、、)させる時点で、違うだろ? トーマスさんはとりあえず一番醜い現状をこの人たちに見せたいんだよ」

「へ~~。じゃあ、僕たちが食べてるもの、やろうよ」

 その言葉に、そこにいた大人たちも同意していた。


 そして、それはクリストファーたちを硬直させる原因になった。


訂正です。時間概念あるのに、五時間って書いてました。正確には二刻半です。

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