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手紙

 これから関わる全ての人へ


 お許しください。私たちは止められませんでした。


 ですからせめてもの償いとして、方舟を数艘創ります。


 大きな戦いになったら、これで逃げてください。


 船の指導者は全て決めてあります。その方に従って乗船してください。


 宇宙へ逃げてください。


 それしか助かる方法はないのです。


 間もなくこの惑星で大きな戦争が起きるでしょう。おそらく核も使われ、我々が住める状態ではなくなるかもしれません。


 これは、私たちの罪です。あの方をお止め出来なかった。


 私たちはこの戦いの最期まで見る義務があります。ですが、皆さんにそんな義務はありません。


 ですから、生き延びるためにこの惑星を棄ててください。





                         トーマス=ヴェルツレン

                      クリストファー=ヴェルツレン

                         セグレス=アットウェル

                        ジェイムズ=アットウェル










 百年以上前に書かれた手紙。それに思わず目を通した現ヴェルツレン侯爵、トーマスからため息がもれた。


 あの方、とは五代前のバークス公国国主だろう。その昔、シャン・グリロ帝国のバークス公爵領を賜った人物だ。

 当時、バークス公爵領はシャン・グリロ帝国において最重要な土地であった。


 何せ、敵対するカーン帝国の喉元に突きつけるように位置する、飛び地領だったからだ。


 だが、野心に忠実な公爵はカーン帝国から唆されるがまま、独立を宣言、世界大戦の火蓋を切ることになる。


 始まりの手紙と、贖罪の言葉。そして現在では仲違いしているはずのアットウェル侯爵家との連名である。

「サシャ、これの写しをアットウェル家に差し上げて」

「かしこまりました」

 現在、国際情勢はかなり危ない。いくらシャン・グリロ帝国よりのアットウェル家と、カーン帝国よりのヴェルツレン家といえど、情報は交換しておかなくてはならない。

「この状況でさ、この手紙を見つけさせる(、、、、、、)ってわざとでしょ?」

 誰もいない執務室でトーマスは呟いた。

――何のことじゃ?――

――心外だわ。勝手にあなたが見つけたのでしょう? トーマス――

 どこからとも無く響く声。共有できるのはトーマスとサシャのみ。


 アットウェル家が何度も家を改築しているのに対し、ヴェルツレン家が全く改築していないのは、この声に由来する。


 初代ヴェルツレン侯爵の兄、トーマス=ヴェルツレンが自分の脳を提供し作り出した「機械」なのだ。

 世界大戦が終わったあとはおそらく、歴史が改竄されるであろう、そこを危惧した当時のヴェルツレン家が科学を集結させ創りだした「家」であり、「護衛艦」であり「最期の方舟」なのだ。

 世界大戦より後の全ての記録が、ヴェルツレン家に正確に(、、、)記録されている。

「……この写し、セシル陛下とダレル准将にも教えたほうがいいかなぁ……」

 その前にベティに教えないとまずいかな? そんな暢気なことをトーマスは思った。


 ダレル准将の実家、アッカー家にも何かしら情報があるかもしれない、そんなことまでトーマスは思った。


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