はじまりの話、寂しがり屋の神様
これから、私がお話しするのは、
自分達の何気ない選択で、
まったく違う路を歩んでしまった物語へ、
足を進めるずっと前の……はじまりの部分。
退屈かとは思いますが、
是非、聞いて行ってくださいね。
むかし、むかしあるところに。
真っ暗な場所から動けずに居た、
寂しがり屋な神様がおりました。
その神様は、本当に長いこと動けずに居たので、
とうとう痺れを切らして大きな大きな世界を創りました。
けれど、出来上がった世界は真っ白な空間しか無かったので、
神様はまた寂しくなりました。
落ち込んだ神様が、
当てもなく真っ白な世界を歩いていると、
遠くの方から一本の大きな光の柱のようなものが見えた気がしたので、
急いでその場所へ走り出しました。
ぜえぜえと息を吐きながら、
光の柱の元へ辿り着いた神様は、
目の前にあるものに驚きを隠せませんでした。
光の柱の中にあったもの、
それは……神様によく似た生物のようでした。
神様がじーっと柱の中を見つめていると、
銀色の髪が眼に映りました。
いつの間にかその美しい銀髪を、
神様は長い間またじーっと眺めておりました。
ハッと気が付いた神様は、
ゆっくりと光の柱に近づいていきました。
神様が光の柱に手を触れようとしたその時、
その生物は静かに口を開いて神様に言いました。
.おはよう、神よ。
私はキミに近いもの。
だが……キミのように可憐では無いし、美しくもないが、
私たちは似たもの同士だ。
そう、銀色の髪をした生物が言い終えたとき、
神様は眼に涙をためて、
銀色の髪の生物をじっと見ていたのです。
神様は嬉しかったのです。
話す相手が存在するという事が。
独りでは無いと言うその心地良さが。
その姿を見た銀色の髪をした生物は、
ゆっくりと柔らかな笑みを浮かべて神様に言いました。
.キミの潤んだ瞳を止めてあげたいのはやまやまなのだが……
今の私に、この柱の中から出る術は在りはしないのだ。
そこでキミの力を貸してほしい。
キミが、この光の柱に口づけをしてくれるのなら……
この柱の拘束は解けるだろうから。と
銀髪の髪をした生物の話を聞いた神様は、
すこし驚いたように眼を見開いた後、
恥ずかしそうに、顔を俯きましたが、
言われた通りに光の柱に口づけをすることにしました。
神様の身体が隅の隅まで、
恥ずかしさで熱くなっていきました。
柔らかな唇が柱の表面に少し押し返されながらも、
口づけはなんとか成功することが出来ました。
そして唇を柱から離した刹那、
それまでびくともしなかった光の柱が、
塵のように砕けて、銀色の髪の生物に触れる事が出来るようになったのでした。
銀色の髪の生物の身体は白く、痩せていて、
その身体の回りには水浴びをしたかのように、
たくさんの汗で濡れていたのです。
銀色の髪の生物は、
ゆっくりと瞼を開いて神様にこう言いました。
.改めて……おはよう、
可愛らしい神よ。
久しぶりの目覚めは心地がいいね。
自らの名を名乗るのも久しぶりだが、名乗っておくとしよう。
私の名前は――――だ。
神様に向けられた言葉は、
神様にとってすごく嬉しい物でした。
銀色の髪の生物の言葉に対して、
神様は胸が熱くなりながらも、
ゆっくりと言葉を紡ぎます。
.私の名前は――です。
すごく長い時間ひとりぼっちだったの……
あなたは、貴方は私と一緒に居てくれますか……?
言葉を紡ぎ終えた神様は、
いつの間にか眼から涙をぽろぽろと流していて。
すると、唐突に。
神様の身体を……暖かい何かが包み込みました。
.大丈夫だよ――。
私とキミは今この時をもって、新しい家族だ。
これから先、何があろうとキミを独りにはさせない。
暖かい何かとは、
銀色の髪の彼が、
神様を抱きしめてくれていた事によるものでした。
.神様は無意識に抱き返し、
大きな声で泣き続けました。
そんな神様を、
銀髪の彼は泣き止むまで、
柔らかな笑みを浮かべながら頭を撫で続けておりました。
しばらくして、
眼を真っ赤にした神様は、
恥ずかしそうに顔を上げ、
ごめんなさいと呟きましたが、
銀髪の彼は不満を言うでもなく、ただゆっくりと。
.改めて、これから宜しく頼む。
私の新しい大事な家族よ。
と、穏やかな顔をして神様に言いました。
神様の胸の中から、
寂しさは無くなりました。
新たに増えた気持ちは、
これからあるであろうへの楽しみと、
穏やかな気持ち。
こうして寂しがり屋な神様は居なくなり、
神様と銀髪の彼は、手を握り、
新しい世界へと旅立って行ったのでした。
【めでたしめでたし】
読んでいただきありがとうございまーす。
今回のあとがきはいつも以上に長いですので注意が必要です。
先ず、26日に私、誕生日を迎えまして、
作者の始まりと誰かさんの始まりを掛けるということでかなーり前々、
といいますか……再登録する前から作ってはいたこの重要な作品を、
自動投稿を使って投稿してみました。
設定するときちょっと緊張したのは秘密ですよー
この作品についてお話をするとするならば、
この作品において鍵なのは【始まったのは一人だけじゃないよ】
ということです。
二人だろwwwというツッコミが来そうですが、
それも50点くらいですね(笑)
銀髪の生き物は私が作る全ての作品において、
路を辿って行けば必ずと言って良いほどに一回は何かに関与・関連していて出会える生物じゃないのかなと思います。
まあ、其れが何なのか解ったとしても、
把握できるのは一部の内容だけなんです。
と言っておきますね(・3・)
全ての物語の背景というか全体図は、
いつかきっと誰かが語ってくれるでしょう。(予告)
本当はこの話も最後の最後にアップしたかったんですが、
其れを待っていたらきっとこの話は蔵に入っていたと思います。
此処だけの話ですが、予定に無い作品のいくつかを除いて、
作品の大体の全体図は数年前に完成してるので、
指の動くままに作品を書いていたりします。
更新や執筆速度は日によって差があるのが難しいですねえ、
私が後、6人くらい居たら、来年で全部書き上げそうですが、
メモを残しているのはほんの一部で、
他は頭の中から焼きついて離れない感じの物なので、
多分作品の全体図については私以外が手を出す事は無いと思います。
っということでかなり長くなってしまいましたが、
あとがきを終えたいと思います。
ここまで読んでいただきありがとうございました!(R*・3・*)