7 恋のお話
はじめて好きになった人。
小さいころ一緒にいたあの少年は、今どこにいるのかさえもわからない――。
「……リリーナ?」
は、と意識をあわてて現実に戻す。
目の前にいるセリアは不思議そうにリリーナを見ていた。
「失礼しました、セリア様」
「いいのよ。でね、そのときジン様がね、私を守ってくださったの!」
今リリーナはセリアの部屋でセリアの話を聞いていた。
もっぱら恋の話だが。
よくこうしてリリーナはセリアの話し相手になっていた。
セリアはリリーナが属する『ナイティア騎士団』を擁するアルフィー王国の第三王女である。
そして今年17歳で、周りに年の近い同性があまりいないため、リリーナはよき友達でもあるのだ。
「で、リリーナ。あなたはまだ結婚しないの?」
突如として浴びせかけられた質問に、リリーナは微笑みを湛えながら答えた。
「そう……ですね……。まだ、そのような男性とは出会っていませんね」
「じゃあ好きな人はいないの?」
好きな人……か……。
あの少年のことを、話してみようかしら。
「好きな人は、います」
そう答えるとセリアは身を乗り出して聞いてきた。
「誰!?」
そんなセリアの反応にリリーナは苦笑し、
「セリア様は知らない人ですよ。 私もだいぶ昔に会ったきり会っていないですし……」
「うん、どんな人、どんな人?」
「そうですね……」
セリアはうきうきした顔でリリーナを見つめる。
「……笑顔が素敵な人です」
「そうなんだー。見てみたいなー、リリーナの思い人」
セリアの言葉に苦笑する。
『思い人』と言われれば照れてしまう。
「……セリア様、お勉強のお時間です」
セリア付きのメイドが告げる。
その言葉にセリアは顔をしかめた。
「あーあ、もうこんな時間か。じゃ、話聞いてくれてありがとう、リリーナ」
そう言ってセリアは笑った。
リリーナは立ち上がり、お辞儀をした。
「いいえ、セリア様」
リリーナはセリアの部屋を出た。