4 白の花
――逃げて
そういって君は微笑んだ。
君はどんどん離れていく。
君が、僕の手の届かないところに行ってしまう。
待って――
君に手を伸ばした――。
は、と目が覚めた。
目に映ったのは見慣れた白い天井。
――夢、か……。
ジンは静かに起きあがった。
額に手を当てると、少し湿っている。汗をかいていたようだ。
このまま寝付けそうにないので、水を飲みに行こうとベットから降りた。
外に出ると、ぬるい風が吹いていた。
それが妙に心地いい。
「あら」
ジンが水飲み場につくと、先客がいた。
「ジンくんじゃない。寝付けないの?」
『銀の救世主』リリーナだった。
「ええ、まあ」
ジンは水飲み場の水をすくって飲んだ。
水飲み場近くの石に腰かけていたリリーナは、左によってジンが座れるスペースを作った。
「座る?」
「あ、はい」
それを無下にすることもできず、ジンはリリーナの隣に腰かけた。
「……リリーナさ……隊長は、どうしてここに?」
「リリーナでいいよ。うーん、なんだかあまり眠れなくて」
「そうなんですか」
「君はどうしてここに?」
「俺は――」
どうしようか、夢のことを言おうか。
でも、言ったところでなんなのだ。
「――俺も、寝付けなくて」
「あら、そうなの」
そう言ってリリーナは空を見上げた。
しばらく二人を沈黙が包み込んだ。
「……あの」
「ん?」
ジンは沈黙に耐え切れなくなり声を上げた。
「俺、部屋に戻ります」
「あ、おやすみなさい」
「おやすみなさい」
そういってジンは部屋へ戻った。