↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27:00、社畜は宿を予約する(福島県磐梯、群馬県草津)  作者: オツタロ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
1/7

第1話 社畜、旅行を決意する

「旅」をテーマに書き始めたら社畜の日常を書いてしまいました。

 これは私が20代だった頃のこと、ブラック企業で働いていた時の話。

定時帰り?何それ?都市伝説かなという感じで毎日を過ごしていた、昼休憩はランチなしランチミーティングの業務打ち合わせで潰れ空腹と胃痛を紛らわすために胃薬を齧りながら業務に邁進する日々をすごしていた。

 胃薬ってメーカーごとで味違うんだ、今度はどのメーカーにしようかな考えながら返信メールを書いては送り、相手に電話してメール見てくださいと言い、すぐさま新しいメールに返信する。

 なんでメール送ったら見てくださいって言わないといけない社内ルールがあるのか、それでメールを見落としたら電話しなかった方が悪いと言う判例ができてしまったのか、そんな不思議な会社に勤めていたころの話である。


 後ろの通路では何やら明日からの休日の予定の話が聞こえてきた。

女子社員と初老の男性社員との楽しい会話だ。

私のデスクの周りの空気との違いに一緒の部署なのかな?って感じである。

会話を思い出すと腹が立ってくるので要約するとどうやら世間では明日から3連休らしい。

 それで旅行に行くとか、家でのんびり過ごすとか、家族サービスで休みの日はつらいとか話している。

なんて楽しい会話だろうか。

 明日が3連休であることはスケジュール管理上知っていたような気がするがどうやって過ごすのかなんて考えたこともなかった。

 休日の過ごし方など自宅で業務目標シートに記載させられた資格を取るために勉強か、翌週会社で作成する資料を自宅で作ってより早く、完成度の高い資料作りだろうと思っていた。


 私の所属するチームに定時帰りという文字はない、私の場合は業務量の多さから一心不乱で仕事をしないと終電までに帰れない始末である。

 同じ部署であっても業務量には大きな違いがあった。

 原因は単純な業務量の多さだけではないのだが。

 暢気に会話している彼らは「俺ら同じ仲間じゃーん」って言うこともあるが私が彼等の仕事のフォローはしても彼らが私を助けたことなど今まで一度もあったことはない。

 助けたくて助けているわけでもないので私も善人ではない。

単にチームの長である課長が勝手に他チームの応援を買って出るのだ。

そして本人は何もしない。まさにお約束のようなあかん上司なのだ。

 なので私や他のメンバーは自分の仕事をしつつ自分の評価にならない他チームの応援もこなすという毎日を送っていた。

 一心不乱で仕事に取り組んでいるとか言いつつ、後ろで楽しそうに会話する彼らの声に耳を傾けている。

 メールの返信ですら無意識レベルで書けるし、メール送付後の確認依頼電話もロボットが話すみたいに心と言葉が乖離した状態でも難なくやってのける。

 仕事が嫌なのに毎日終電で帰れるか帰れないかというぎりぎりのラインを攻めて戦っていた。


 彼ら彼女らの楽しそうな会話を1人残ったオフィスで思い出していた。

気が付くとチームメンバーはおろか事務室には私だけになっていた。

いつも残っている残業5人メンバーは私を置いてみんな帰ってしまったようだ。

彼等が1人また1人と帰るときに挨拶をした気がするがどうも記憶が曖昧である。

挨拶も無意識レベルで返してしまっていたようだ。


時刻は24:30。

終電は終わってしまっている。今日もタクシーで帰るかと思った。

そんなときにふと頭の中に疑問が思い浮かんだ。

明日から3連休はどうやって過ごそうか。

恋人?友達?そんなのいるわけない。

休みの日は資格の勉強と週明けにすぐに資料作りができるように自宅で資料を作って予行練習をしておくことだ。


 会社の資料を持ち出すのは当然セキュリティ違反なのでやってはいけない。

そんなことをしなくても頭の中には仕事で使う資料の内容が入っている。

瞼を閉じれば勝手に浮かび上がってくる。

その記憶力を活かし自宅で資料を作り、自分でレビューと言う名の確認を行う。

そうやって作り上げた資料は会社に持ってきて・・・なんてことはできるわけはない。

 自宅で作った資料と同じものをまた会社で作るのだ。

これが意外な効果があり同じ資料を2回作るので当然作るペースは速い。

さらに自宅で作るよりもより完成度の高い資料が作れるのである。


 その結果、課長は驚き、さらに仕事を振り分けてくると言う悪循環が生まれていた。

今では休日は資格勉強と資料作りに追われている。

そうしないと平日の9:00-24:00、昼飯無し、水分休憩なしでは到底仕事は終わらない領域に入っていた。

 22時を越えたくらいから今日はどこで切り上げようかと思って仕事をしている。

そうやってキリの良いところを探っていると日付を越えていた。

 時刻は24:30。まだ仕事は残っているが明日は土曜日でしかも3連休。

どうにかなるだろうという希望を抱いて私はオフィスを後にした。

 タクシーに乗り込み運転手さんにいつもの行き先を伝える。料金は4500円。深夜料金なので割増である、もちろん自腹である。


 着いた場所は自宅の最寄り駅。ここには24時間営業のスーパーがある。私はここで半額となったカツ丼弁当を買って帰るのが日常になっていた。

 どれくらいここのカツどん弁当を食べただろうか。食べ飽きるということが経験上ないので私の今の晩飯はこのかつ丼弁当である。


 25:00帰宅。帰宅してすぐにコップ一杯の水を飲んだ。

 染みわたる爽快感。そりゃそうだ、今日最後に水分を摂ったのは朝8:00の朝食のオレンジジュース単品が最後だった。

 そんなことも家に帰るまで思い出せないほど私の脳内は仕事で埋め尽くされていた。


 仕事かばんにはマイボトルがありそれには水が入っている、それを自宅で初めて飲むのも私の日課である。

どうして会社で飲まないのかって?

それはね、朝出勤すると課長にマイボトルを没収されているからだ。

「水なんて飲んでいたらトイレに行ってしまうだろう。そんなの損失だよ。仕事で椅子から立っていいのは打ち合わせの時だけだよ。」

そういって課長は私からマイボトルを取り上げるのだ。

そして定時をちょっとすぎたあたり課長が帰るときにマイボトルが返ってくる。

「お帰り、マイボトル君。」

そう心で呟くがもうその頃には一心不乱に仕事をしているのでブレーキは止まることなく体力が尽きるまで走り続けてしまっている。


 よくそんなので倒れないよねって言われたことがあるがチームメンバーの一人は仕事中に泡吹いて倒れて救急車で運ばれそのまま退職したことがある。

 きちんと犠牲者は出ているのだ。

 

 それでも上長の誰も処罰されないし、改善などないのである。

むしろ「そんなことあったんだ?」って同じ部屋で働いている他チームの人が驚くほどである。

本当に同じ空間で仕事をしているのか疑問に感じるばかりである。

 そんな環境なので自然と職場では固形物はおろか水分補給すらしない歪な成長を遂げてしまった私である。


 帰宅してシャワーを浴び終わったら25:30になっていた。

 カツ丼弁当を食べて後は寝るだけと思いながら口を動かしていると一瞬頭の中に何かが浮かび上がる。

これはなんだと思い、もう一口カツを口に入れる。咀嚼しているとまた何かが浮かんできた。

それは今日、正しくは昨日のオフィスで彼らがしていた会話を思い出した。

「3連休何して過ごす~?」「彼氏とデートかな。」「へぇいいじゃん、旅行とか?3連休なんだから旅行とか行けばいいじゃん。」

・・・旅行・・・行くか・・・。

私はノートPCの電源ボタンを押した。

おなじみのロゴが表示されすぐさまデスクトップ画面が出てくる。

私はブラウザを立ち上げて旅行の計画をぶち上げた。時刻は25:15。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。